ニューヨーク、パリ、韓国などでも回顧上映が開催された
1970年代の自主映画ムーブメントのさなかに登場し、1980年代の日本映画を牽引、以後もキャリアを通じて多彩な作品を送り出した森田芳光(1950-2011)。近年では、ニューヨーク、パリ、韓国などで回顧上映が開催され、あらためて海外でも評価が高まっている。
本特集では、同時開催の展覧会とも連動しながら、監督作品だけでなく、脚本家としての仕事にもスポットを当て、31プログラム(38作品)によって、その業績を多面的に検証する。
見どころ
旺盛な実験精神に満ちた森田のキャリアをたどる特集上映
商業映画第1作『の・ようなもの』(1981)、社会現象を巻き起こした『家族ゲーム』(1983)、カルト的なファンをもつ異色のハードボイルド『ときめきに死す』(1984)、夏目漱石の文学世界を鮮烈に映像化した『それから』(1985)、インターネットを介したコミュニケーションの風景にいち早く着目した『(ハル)』(1996)など、旺盛な実験精神に満ちた森田のキャリアをたどる。また、森田が脚本を担当した『ウホッホ探検隊』(1986)、『キリコの風景』(1998)などの作品を上映し、脚本家・森田芳光の功績も再検証する。

『(ハル)』©光和インターナショナル
今回の特集のためにニュープリントを多数作成
本特集で上映する38作品のうち、15作品を新たに作製したニュープリントで上映。
薬師丸ひろ子主演のロードムービー『メイン・テーマ』(1984)、バブル期の浮遊感と虚無感を見事に映し出した『愛と平成の色男』(1989)、ウェルメイドな娯楽映画を追求した『おいしい結婚』(1991)、藤子・F・不二雄と組んだSFファンタジー『未来の想い出 Last Christmas』(1992)、渡辺淳一のベストセラーを独自に解釈して「新しいジャンルの日本映画」を企図した『失楽園』(1997)、貴志祐介原作のポップなホラー映画『黒い家』(1999)、森田ならではのコミュニケーション論を展開した『間宮兄弟』(2006)、遺作にして初期作品を彷彿とさせる瑞々しさに満ちあふれた『僕達急行 A列車で行こう』(2010)など、多彩な作品群が美麗なプリントでよみがええる。

『メイン・テーマ』©KADOKAWA 1984
森田映画の出発点 8㎜作品の特別上映
日本大学芸術学部放送学科入学後、8mmで自主映画制作を始めた森田芳光。『映画』(1970)をはじめ実験的な試みが目立つ1970年から1972年までの作品群、それらの集大成であると同時に新たな森田映画の出発点となった『水蒸気急行』(1976)、自主製作映画展(現・ぴあフィルムフェスティバル)に入選し、作家の片岡義男が絶賛した『ライブイン茅ヶ崎』(1978)など、当時若い世代を中心に支持を集めた森田の8mm作品を一挙上映する特別プログラムを編成した。森田の原点にして商業映画でのさまざまな試みへとつながる貴重な初期作品をスクリーンで楽しめる。
トークイベントも開催
森田の大学時代の友人で、8㎜作品の上映にも携わった河添博幸氏(広告プロデューサー)、夏目房之介氏(マンガ・コラムニスト)、公私にわたる森田のパートナーだった映画プロデューサーの三沢和子氏、『森田芳光全映画』(リトル・モア)の共著者でもあるライムスター宇多丸氏らがトークゲストとして登壇。ほかにも豪華ゲストを予定!
上映企画の会期中には、展覧会と連動してスタンプラリーを実施。展覧会および上映企画に訪れ、一定数以上のスタンプを集めた方には、プレゼントを進呈。
上映作品(31プログラム、計38作品)★はニュープリント上映
1.『の・ようなもの』(1981)
2.『シブがき隊 ボーイズ&ガールズ』(1982)★
3.『(本)噂のストリッパー』(1982) 『ピンクカット 太く愛して深く愛して』(1983)★
4.『家族ゲーム』(1983)
5.『ときめきに死す』(1984)
6.『メイン・テーマ』(1984)★
7.『それから』(1985)
8.『そろばんずく』(1986)
9.『悲しい色やねん』(1988)
10.『愛と平成の色男』(1989)★
11.『キッチン』(1989)
12.『おいしい結婚』(1991)★

『おいしい結婚』(C) 1991 TOHO CO.LTD.
13.『未来の想い出 Last Christmas』(1992)★
14.『(ハル)』(1996)
15.『失楽園』(1997)★
16.『39 刑事法三十九条』(1999)
17.『黒い家』(1999)★
18.『阿修羅のごとく』(2003)★
19.『海猫』(2004)★
20.『間宮兄弟』(2006)★
21.『サウスバウンド』(2007)★
22.『椿三十郎』(2007)
23.『わたし出すわ』(2009)★
24.『武士の家計簿』(2010)
25.『僕達急行 A列車で行こう』(2010)★

『未来の想い出 Last Christmas』
©光和インターナショナル/藤子・F・不二雄プロ
【脚本家・森田芳光】
26.『3年目の浮気』(1983、中原俊)
27.『ウホッホ探検隊』(1986、根岸吉太郎)
28.『免許がない!』(1994、明石知幸)★
29.『キリコの風景』(1998、明石知幸)
【特別上映】
30. 森田芳光初期8mm作品集①
『映画』(1970) 『天気予報』(1971) 『健康診断』(1972) 『工場地帯』(1972) 『遠近術』(1972)
31. 森田芳光初期8mm作品集②
『水蒸気急行』(1976) 『ライブイン茅ヶ崎』(1978) 『劇的ドキュメント レポート.'78~'79』(1979)
企画名:映画監督 森田芳光 (英題:Yoshimitsu Morita Retrospective)
会期:2025年10月14日(火)-26日(日)、11月4日(火)-23日(日)※月曜休館
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]
主催:国立映画アーカイブ
協力:ニューズ・コーポレイション(森田芳光事務所)
https://www.nfaj.go.jp/film-program/yoshimitsu-morita202510/
上映企画と連動して、展覧会「映画監督 森田芳光」を開催。
展覧会名:映画監督 森田芳光
会期:2025年8月12日(火)-11月30日(日)
※月曜日、8月26日(火)-9月5日(金)、10月7日(火)-10月12日(日)は休室
会場:国立映画アーカイブ 展示室[7階]
HP:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/morita2025/
主催:国立映画アーカイブ、ニューズ・コーポレイション(森田芳光事務所)
※詳細はHPをご確認ください。