香港ノワールが大流行したのは1980〜90年代が中心でしたが、まさに香港映画界が量的にも質的にも最盛期を迎え、日本でも多くのファンを魅了した時代でした。今度はその時代に数々のヒット作に出演し、人気を誇った代表的なアクターたちをクローズアップ。アジアでブレイクした後、世界に羽ばたいた顔ぶれを見ても、この時代の香港映画界の充実ぶりが納得できるでしょう。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
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成龍/ジャッキー・チェン

香港映画の黄金時代を牽引した代表格といえば、もちろんこの人。香港ノワールが登場する以前から、神業的なカンフー・アクションを繰り広げ、そのユーモア精神やファンを大事にするフレンドリーな姿勢も含め、多くのファンから支持された。『プロジェクトA』『香港国際警察/ポリス・ストーリー』などでは主演だけでなく監督としても一流の腕を発揮。香港映画全体のグレードをアップさせた功労者とも言えそう。現在も大活躍中で、ハリウッド進出も成功し、アカデミー賞特別賞も受賞とレジェンド級の存在に。

周潤發/チョウ・ユンファ

香港ノワール・ブームの発火点となった『男たちの挽歌』の主演で一躍香港映画界のトップスターに躍り出た。亜洲影帝の異名を持つ。ジョン・ウー監督とコンビを組んだ『狼たちの絆』『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』や「ゴッド・ギャンブラー」シリーズなどで香港ノワールを世に知らしめた立役者となり、その後ハリウッドにも進出。一時は香港映画にほとんど出演せず、海外に軸を置いた活躍が目立つ時期もあったほど。近年は『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』などに主演し、変らぬ魅力を見せている。

洪金寶/サモ・ハン・キンポー

売れない脇役時代からのジャッキー・チェンの先輩にあたり、いわば香港映画界のアニキ的存在。弟分のジャッキー、ユン・ピョウと『プロジェクトA』他で共演して人気者に。さらに演技だけでなくアクション監督、製作者としても多数の映画で手腕を見せる。ハリウッド進出も果たし、後に『SPL/狼よ静かに死ね』ではドニー・イェンと共演。風格も備えたベテラン・アクション俳優として再び重宝されるようになった。近年は『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城塞』で黒社会の大ボスを演じ、ファンを増やしている。

張國榮/レスリー・チャン

歌手として人気があったが、俳優業にも進出し、チョウ・ユンファと共に『男たちの挽歌』で知られるようになったレスリー。次いで『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』でも人気を博したが、『男たちの挽歌Ⅱ』『狼たちの絆』など香港ノワールにも出演を続けた。ただ彼の才能は『さらば、わが愛/覇王別姫』のような人間ドラマで本領発揮し、トニー・レオンと共演の『ブエノスアイレス』などでも名演を披露。ロマンスやコメディにも出演したが残念ながら2003年自ら命を絶った。しかし今も彼を愛するファンは多い。

梁朝偉/トニー・レオン

台湾映画『悲情城市』や、『ブエノスアイレス』などウォン・カーワイ監督とのコンビ作、チャン・イーモウ監督と組んだ『HERO』などで国際的な名優として知られるトニー。そんな彼の新人時代はジョン・ウー監督の『ワイルド・ブリット』や『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』など香港ノワールものに多く出演。さらにアンディ・ラウと共演した『インファナル・アフェア』のような作品でもダークな魅力を発揮し、香港を代表する実力派俳優に。2023年にはベネチア国際映画祭で名誉金獅子賞を受賞している。

劉徳華/アンディ・ラウ 

TVBの俳優養成所出身で映画はアン・ホイ監督の『望郷』でデビュー。『愛と復讐の挽歌』や『ゴッド・ギャンブラー』などで人気俳優となるが、さらに歌手でもあるアンディはジャッキー・チュン、アーロン・クォック、レオン・ライと共に「四大天王」と呼ばれ、ヒット曲を連発、いくつもの賞を受賞している。映画はノワールだけでなく様々なジャンルに出演。『いますぐ抱きしめたい』『上海グランド』『インファナル・アフェア』『墨攻』など100本を超える出演作品があり、現代にいたるまでトップスターとして活躍する。

李連杰/ジェット・リー

中国出身で、同国の武術大会で何度も優勝。中国=香港合作の『少林寺』で映画デビューし、一躍人気者に。当時はリー・リンチェイという名で、日本でもスターになった。その後、香港映画界に招かれるが、当時ノワールが台頭し、武術アクションが下火になっていた。だがツイ・ハーク監督が彼を主演に起用して作った『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』が大ヒット。90年代には『リーサル・ウェポン4』でハリウッド進出も果たし、国際的に活躍を始めたが、現在は映画出演を抑え気味にしている様子。

甄子丹/ドニー・イェン 

中国出身で2歳のとき香港に渡り、11歳で渡米した。だが16歳で中国に戻りジェット・リーと同じ北京の体育学校で武術を学ぶ。80年代に香港映画界で俳優デビューを果たし『タイガー刑事』など出演だけでなくアクション監督としても活躍。90年代に『ドラゴン危機一発’97』ほかで知られるようになり、ジェット・リー共演の『HERO』などでその武術の高いスキルが注目される。その後「イップ・マン」シリーズが成功。ハリウッドでも超大作に次々起用されながら、香港でも『プロセキューター』など主演作を連発している。

周星馳/チャウ・シンチー

日本で広く知られるようになったのは2001年の監督兼主演作『少林サッカー』の大ヒット以降だが、それ以前から香港の喜劇王的な存在だった。初期には「ゴッド・ギャンブラー」シリーズなどにも出演し、その後『0061北京より愛をこめて!?』『食神』『008皇帝ミッション』などで監督と主演を務め、絶大な人気を誇るように。日本にも熱心なファンを獲得した。『少林サッカー』以後も『カンフーハッスル』『ミラクル7号』がヒット。近年は俳優業は控えているが、『人魚姫』『新喜劇王』など監督や製作で活躍している。

郭富城/アーロン・クォック

ダンサー、歌手として最初は台湾で有名になり、香港でも人気シンガーとなって、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、レオン・ライと共に「四大天王」と呼ばれた。80年代後半から映画にも進出し、90年代以降『風よさらば』『風雲 ストームライダーズ』『アンナ・マデリーナ』『SPY N』など出演作が相次いだ。演技力も着実にアップし、『ディバージェンス 運命の交差点』他で金像奨主演男優賞を受賞。近年も出演映画は多く、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城塞』にもチャン・ジム役で出演している。

黎明/レオン・ライ

香港四大天王の一人として人気を博したシンガー兼俳優。中国出身で幼少期に香港に移住。10代の頃は英国で暮らしていたが、80年代半ばに香港に戻り、歌手&俳優デビュー。『新・愛と復讐の挽歌』『妖獣都市』などを経て、ウォン・カーワイ監督の『天使の涙』やピーター・チャン監督の『ラヴソング』といったヒット作で日本でも人気を呼ぶ。その後も『ヒーロー・ネバー・ダイ 真心英雄』『インファナル・アフェアⅢ 終極無間』など様々な作品で活躍。最近は家庭優先で俳優の方は休業状態だが歌手活動は続けている様子。

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