今回、プロモーションのために来日したレン・ワイズマン監督の単独インタビューが実現。撮影秘話やアナ、ノーマン・リーダスとのエピソードなどを語ってくれた。
「俳優に求めているのは“観客がのめり込むほどの演技”
そのためにアナは何ヶ月も前からトレーニングをしていました」
ーー本作は『ジョン・ウィック』の世界に新たな次元を拡張した“最新作”となっています。本作を製作する上で一番大事にしたポイントを教えて頂けますか。
「まず、ジョン・ウィックの世界はそのままに、本作の主人公・イヴの物語を描かなければいけなかったので、何パーセント新しいものを取り入れて、ジョン・ウィックの世界を何パーセント残して…とやっていたらキリがないと思いました(笑)。そこで考えたのが、『ジョン・ウィック』シリーズと同じトーンで作ること。このシリーズはアクションや美術などすべてにおいて独特なトーンを持っていますよね。なのでトーンさえしっかりと統一できていれば、きっと『ジョン・ウィック』ファンにも受け入れられ、観客に新たな体験を提供できると、そう思ったんです。なのでトーンはすごく大事にしていましたね」

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ーー『ジョン・ウィック』といえばアクションシーンの武器がバラエティに富んでいることで有名ですが、本作では銃やナイフに加えて手榴弾、火炎放射器、アイススケートの靴などが登場しました。どういったことをヒントに武器を考えられたのでしょうか?
「たとえば、スケートリンクでスケートをしている最中に滑って転ぶことってありますよね。その時に、多くの人はこう思うはずです。“今誰かがピュっと自分の手の上を滑っていったら指が切れちゃうよな…”って(笑)」
ーー思ったことあります(笑)
「ですよね(笑)。これまでたくさんのアクションシーン、いわゆる銃撃戦みたいなのを撮ってきましたが、今回は何か新しいものを取り入れたくて、“そういえば昔、自分の家のガレージでスケート靴のようなものを作って血糊をつけたりしたことあったな…”と思い出したんです」
ーーなんと! スケート靴を手作りで(笑)
「昔、小道具をやっていたことがあるので、自分でデザインして作るのが得意だし、基本的にそうやって準備をしていくタイプなんです。ただ、作った当時はスケート靴を武器にするなんてちょっと馬鹿げているかなと思っていました。それから時が経ち、本作の武器を考えていたところ、“イヴのように危険な状況に陥り、ふと周りを見てスケート靴があったらすごくおもしろいんじゃないか”と思いついたんです。そこからは楽しみながらあのシーンを作っていきました」

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ーーあらゆる武器で戦うイヴの姿がとてもかっこよかったです。主演のアナ・デ・アルマスさんのお芝居で印象に残っていることを教えていただけますか。
「アクションを完璧にこなしながら演技をするのは、簡単そうに見えて実はものすごく高いスキルが必要なんです。僕らが俳優に求めているのは“観客がのめり込むほどの演技”ですから。そのためにアナは何ヶ月も前からトレーニングをしていました。ただ、実際に現場に入ってセットやロケーションを見ていると、“この場所のここをアクションに活かしたらおもしろいな”とか“この小道具使えそうだな”と、どんどんインスピレーションが湧いてくるんです。そのあと休憩中やランチ中のアナのところに行ってアイデアを伝えて、新たに加わったシーンや変更になったシーンを練習してもらうのですが、彼女はそれを毎回『これ、リハーサルしてないけどおもしろいからやりましょう!』と喜んで受け入れてくれました」
ーーかっこいいですね。
「アナは覚えるのが早いので、短い時間で一生懸命に練習をして、それをすぐにお芝居で実践してくれていましたね」

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ーー本作にはノーマン・リーダスさんがダニエル・パインという役柄で出演しています。個人的に『ウォーキング・デッド』のダリル(ノーマンが演じている役)が大好きで、このドラマではいつもタンクトップに革ジャン、デニムなどカジュアルな…というかボロボロの格好が多いのですが(笑)、本作ではジャケットにパンツ姿で登場するので、小綺麗なノーマンさんの姿が見られて嬉しかったです!
「ダニエルもタンクトップを着ていますよ(笑)。色は黒ですけどね。ダリルは世界的人気キャラですし、おそらくあなたのようなダリルファンの方も本作をご覧になると思うので、わざとダリルっぽいタンクトップを衣装に取り入れてみたんです。ちょっとした遊びをぜひ楽しんでください(笑)」
ーーなるほど! それはダリルファン必見ですね!
「ぜひ観ていただきたいです。ノーマンとは15年ぐらい前にパイロット版(公開日に先んじて上映される映画作品やテレビドラマのこと)を作ったことがあって、その時に彼は悪役を演じてくれたんです。それ以来ずっと友達だし、僕は彼のスタイルやエネルギーが大好きなんです。それで、本作を作ることが決まった時に、ノーマンなら『ジョン・ウィック』の世界に絶対にハマるはずだと思い、オファーしました」

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ーーダニエルのアクションシーンもかっこよかったです。
「『ウォーキング・デッド』のダリルのアクションのスタイルって、少しもっさりしているんですよね。もちろんシュッとした動きを見せることもあるけれど。でも『ジョン・ウィック』の世界では敵がプロの殺し屋なので、失敗は許されない。アクションにも正確さが求められる世界なんです。それを見事にノーマンはこなしてくれましたし、彼との撮影はとっても楽しかったのでまた一緒に仕事がしたいと思いました。きっとノーマンのファンが本作のダニエルを見たら、シリアスなシーンにも関わらず自然と笑顔になると思いますよ。僕がそうでしたから(笑)」

撮影=久保田司
ーー本作のアクションシーンも見応えたっぷりでしたが、一方で、これまでのシリーズには登場しなかったガブリエル・バーンさん演じる主宰が率いる暗殺教団の信者たちが暮らす村も興味深かったです。
「彼らが暮らす村は、主にオーストリアの世界遺産であるハルシュタットで撮影したのですが、今は“『バレリーナ:The World of John Wick』の聖地巡礼ツアー”みたいな感じで盛り上がっていると聞きました」
ーーとっても美しい村だったので、いつか行ってみたいです!
「その道中で二人殺す必要があるかもしれません…気を付けて(笑)」
ーーえ!! 物騒すぎますね(笑)。今のは監督の冗談ですが、劇中に登場するあの村では教団の信者たちが殺しの訓練を受けていて、イヴが現れた途端に死闘が繰り広げられます。
「これまで『ジョン・ウィック』シリーズでは様々な“暗殺者集団”が登場しましたが、主宰が率いるカルト教団のような暗殺者集団は初めてだと思うんです。普通、暗殺者や殺し屋といえば割と孤独な人生を送っていることが多いですよね。でもこの村では恋愛も結婚も子供を持つことも許されている。ただし、とっても大事なルールがあるので、それが守れない場合は命を狙われることになるんですよね」

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ーー自分の子供を暗殺者として育てるというルールですね。
「そうです。そんな変わった教団ですから、“ステレオタイプのヴィラン”に見えてしまうような主宰にはしたくないと考えていました。そしたらガブリエルが非常に説得力のある芝居をしてくれたので安心しましたし、嬉しかったです。もしもあなたが主宰と対面して話をしたら、“この人の言っていること…正しいかも!?”と、すぐに洗脳されてしまうと思いますよ(笑)」

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ーーちょっと怖いですけど、インタビューしてみたい気もします(笑)。では最後に、監督が大きな影響を受けた映画を1本ご紹介いただけますか。
「たくさんありますが、『ターミネーター2』からは大きな影響を受けています。今観てもとんでもないアクション映画だと思いますし、キャラクターのセリフやストーリー展開だけに頼らず、しっかりと映像で見せていく手法は本当に素晴らしいなと。ジェームズ・キャメロン監督は本当にすごい映画を作った方だと思います」
SCREEN10月号では監督にキアヌ・リーブスさんとのエピソードなども伺っているので、ぜひそちらもチェックしてみてください!

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撮影=久保田司
インタビュアー・文/奥村百恵
『バレリーナ:The World of John Wick』
8月22日(金)より全国公開
監督:レン・ワイズマン(『ダイ・ハード4.0』)
出演:アナ・デ・アルマス、アンジェリカ・ヒューストン、ガブリエル・バーン、ノーマン・リーダス、イアン・マクシェーン、キアヌ・リーブスほか
配給:キノフィルムズ
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