カバー画像:『インセプション』より ©2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
2000年代〜現在「デジタル時代と多様化するSF」
多様な価値観を反映しジャンルの境界を超える21世紀のSF映画
2000年代は、2001年の9.11事件を背景にヒーローが待望され、サム・ライミ監督『スパイダーマン』(02)三部作、『アイアンマン』(08)の大ヒットに続いて、スーパーヒーロー映画が大流行。似た要素のあるSF映画はあまり製作されなくなる。
とはいえ、スティーヴン・スピルバーグ監督がフィリップ・K・ディック原作の『マイノリティ・リポート』(02)、H・G・ウェルズの古典SF原作の『宇宙戦争』(05)を監督。ディック原作では、リチャード・リンクレイター監督のアニメ『スキャナー・ダークリー』(06)も登場。移民問題をエイリアンに擬して描くニール・ブロムカンプ『第9地区』(09)も話題を集めた。
この時期、ファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(01〜03)のゴラムによって、俳優の演技をCGキャラに取り込むモーションキャプチャーが飛躍的に進化。この技術に最先端3D技術を掛け合わせたのが、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(09)。実社会での環境問題への関心の高まりを反映し、未知の惑星の生態系や文化が丸ごと描かれた。
2010年代には、IMAX方式の上映が普及し、クリストファー・ノーランがこの方式で思索的文系SF『インセプション』(10)、『インターステラー』(14)、『TENET テネット』(20)を送り出す。
一方で、人気の古典SFが再始動。J・J・エイブラムス『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)で続三部作が始まり、名作の続編となるドゥニ・ヴィルヌーヴ『ブレードランナー2049』(17)も生まれた。
またサブスクの配信作品も増加。「スター・ウォーズ」のスピンオフ「マンダロリアン」(19〜)では、CG背景の前で俳優が演技し、そのまま撮影できる新技術、バーチャルプロダクションが本格的に導入され、SF映画で使われていく。
2020年代には、名作大河SF小説が原作のドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)が生まれ、シリーズ第三弾が現在進行中。マルチバースSF『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)がアカデミー賞で作品賞、監督賞を含む計7賞に輝いたのも快挙。この秋には『トロン』『トロン:レガシー』の続編、AIがモチーフの『トロン:アレス』が登場。SF映画は時代の変化、技術の発展を背景に、これからも進化し続けていく。
『A.I.』(2001)

スタンリー・キューブリックの構想をスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化。人間の愛情を求める少年型ロボットの旅を通して、「人工知能と人間の境界」への問いを投げかけた。
当時の関連トピック:人間型ロボット「ASIMO」発表(2000)
『A.I.』 デジタル配信中
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『マイノリティ・リポート』(2002)
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犯罪が起きる前に犯人を逮捕する「予知システム」を描く、トム・クルーズ主演のSFサスペンス。網膜認証など近未来的描写の数々が後に現実となり、“未来を予知した映画”とも。
当時の関連トピック:監視社会化の加速(2000年代初頭)
『アバター』(2009)

『アバター』ディズニープラスのスターで配信中
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世界歴代興行収入1位に君臨する、ジェームズ・キャメロン監督の超大作。未知の惑星パンドラでの冒険を3Dを駆使した革新的映像で描き、3D映画ブームの火付け役に。
当時の関連トピック:3Dブーム(2010年前後)
最新ニュース
「アバター」シリーズの第3弾となる『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が今年の年末、12月19日(金)より日米同時公開。これを記念して、1作目の『アバター』が9月26日(金)より、2作目の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が10月3日(金)より、各作1週間限定で3Dスクリーンにて劇場上映されることが決定。シリーズ最新章に備え、壮大な「アバター」の世界を改めて体感できる絶好の機会になりそうだ。
『インセプション』(2010)

クリストファー・ノーラン監督によるSFサスペンス大作。人の潜在意識(夢の世界)を舞台に描き、都市が“折りたたまれる”斬新な映像表現や謎を残す結末で今も語り継がれる。
当時の関連トピック:VRなど個人の「仮想空間体験」が拡大(2010年以降)
『インセプション』 デジタル配信中
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
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『ゼロ・グラビティ』(2013)

宇宙空間に取り残された飛行士の極限サバイバルをリアルに描写したSFサスペンス。無重力を体感させる長回しなどの“擬似宇宙体験映像”が高く評価され、アカデミー賞7部門を制覇。
当時の関連トピック:民間企業の宇宙船開発が活発化(2010年以降)
『ゼロ・グラビティ』 デジタル配信中
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『インターステラー』(2014)

人類存続の危機に直面した近未来を舞台に壮大な宇宙探査を描くSF叙事詩。専門家監修に基づく緻密な宇宙描写と親子の愛の物語を融合させ、現代SF映画の新たな頂点とされた。
当時の関連トピック:ブラックホール研究の進展(2010年代)
『インターステラー』 デジタル配信中
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
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『オデッセイ』(2015)

『オデッセイ』ディズニープラスのスターで配信中
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火星に一人取り残された宇宙飛行士が科学知識で生還を目指すSFアドベンチャー。NASA協力の科学的考証の正確さも評価され、近年の“宇宙サバイバル”ジャンルの代表作に。
当時の関連トピック:スペースXが火星移住構想を公開(2016)
『メッセージ』(2016)

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による哲学的SF。異星人からのメッセージの解読に言語学者が挑む。従来の侵略型宇宙人映画と一線を画し、“時間認識”をテーマに深い感動を呼んだ。
当時の関連トピック:AIによる言語解析の進化(2010年代)
『メッセージ』デジタル配信中
ブルーレイ発売中 2,619円(税込)
権利元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
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『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)

名作SF小説をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化。砂漠の惑星をめぐる権力闘争を壮大に描く。政治的陰謀や環境問題など多層的なテーマを持ち、2024年には続編も公開。
当時の関連トピック:気候変動や資源問題への関心の拡大(2020年代)
『DUNE/デューン 砂の惑星』 デジタル配信中
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)

平凡な女性がマルチバースを渡り歩く中で自分の可能性や家族との関係に向き合う異色SF。多彩なジャンル要素や普遍的テーマが融合し、アカデミー賞作品賞を含む主要部門を制覇。
当時の関連トピック:マルチバース映画・作品の増加(2020年代)
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
Blu-ray:8,360円(税込)/DVD:7,260円(税込)
発売・販売元:ギャガ
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この時代のキーパーソン:クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
21世紀SF映画の最重要人物の一人が名匠クリストファー・ノーラン。2010年の『インセプション』では人の潜在意識に潜り込むという独創的なアイデアを映像化。続く『インターステラー』(2014)は現代SF映画の頂点と称され、『TENET テネット』(2020)ではSFアクションの可能性を押し広げた。映像的スペクタクルにとどまらず、「時間」「記憶」といった哲学的テーマを描き出すノーランのSF作品は観客に映画体験を超える挑戦を突きつけてくる。
Photo by Bobby Bank/WireImage