カジノを舞台に“PTAらしさ”が炸裂する長編デビュー作『ハードエイト』

『ハードエイト』
初老の賭博師シドニーは、母親の葬儀代を稼ごうとしてカジノで大負けし途方に暮れていたジョンに、勝ち方を指南。シドニーを慕うようになり、身なりも真似るようになったジョンだが、あるトラブルに巻き込まれ、再びシドニーの助けを必要とすることに…。シドニーとジョンの間に生まれる擬似親子的な絆を軸にクライムサスペンスの要素を交えながら描かれるのは、過去を持つシドニーの贖罪のドラマ。見知らぬ男の親切な申し出を警戒するジョンとシドニーのやりとりなど、プロローグから会話の面白さで楽しませるあたりにも、既にPTAらしいセンスが炸裂。贖罪や“家族”といった題材も、カジノという主人公の職場を丹念に描写するあたりもまさにPTA印。
製作年:1996
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:フィリップ・ベイカー・ホール、ジョン・C・ライリー、グウィネス・パルトロー、サミュエル・L・ジャクソン

『ハードエイト』
DVD:1,572円 (税込)
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©1996 RYSHER ENTERTAINMENT, INC. AND GREEN PARROT. ALL RIGHTS RESERVED.
ポルノ映画業界の繫栄と衰退を味わい深く描く群像劇『ブギーナイツ』

『ブギーナイツ』
PTAが生まれ育ったサン・フェルナンド・バレーを舞台に、1970年代末〜80年代のポルノ映画業界の興隆と衰退を描く群像劇。ポルノ映画の巨匠にスカウトされた17歳のエディは、“ダーク・ディグラー”の芸名でポルノ男優としてデビューし、一躍スターとなるが、ドラッグに溺れていく。エディの成功と転落、再生を、オーバーラップやスプリットスクリーンなど効果的に使った映像と、’70年代ディスコサウンドで彩り、音楽センスもPTAの武器であることを印象付けた。当初はレオナルド・ディカプリオが予定されていたエディ役だが、結果的にマーク・ウォールバーグの男臭いルックスと甘い囁きボイスが、役にも作品にもリアルな魅力を与えて大成功。
製作年:1997
監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:マーク・ウォールバーグ、バート・レイノルズ、ジュリアン・ムーア、ウィリアム・H・メイシー

『ブギーナイツ』
デジタル配信中
DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
© 1997 New Line Productions, Inc. All rights reserved.
それぞれに問題を抱えた9人の男女に“ある出来事”が?『マグノリア』

余命宣告を受けたクイズ番組司会者、看護師、警官、元天才クイズ少年など、LAに暮らす9人の男女を見つめた群像劇。リレー歌唱される「Wise Up」をはじめ、登場人物の感情と重なる劇中歌がミュージカル並みに大きな役割を果たしている。それぞれに問題を抱える9人が、ある出来事に遭遇するクライマックスが圧巻。超常現象研究家チャールズ・フォートの著作から得たアイデアだが、旧約聖書「出エジプト記」8章2節に同じ現象があると知り、作中に「exodus8:2」や、82という数字などを忍ばせている。トム・クルーズは、『ブギーナイツ』を観てPTAに連絡してきた彼のために加えられた男性向け自己啓発セミナー主宰者を巧演。ベルリン映画祭金熊賞受賞作。
製作年:1999
監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:フィリップ・ベイカー・ホール、トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジョン・C・ライリー

『マグノリア』
デジタル配信中
DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
© 1999 New Line Productions, Inc. All Rights Reserved.
突然キレてしまう男を主人公にした風変わりなロマコメ『パンチドランク・ラブ』

『パンチドランク・ラブ』
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普段は内気なのに突然キレてしまう男が主人公のロマンチック・コメディ。ラバーカップの販売会社を営むバリーは、姉の同僚であるリナと惹かれ合う。しかし、利用したテレフォンセックス・サービスで見栄を張ったことから、トラブルが降りかかってくる…。
バリーの青いスーツとリナの赤いワンピースという色彩が印象的な世界で繰り広げられる物語は、癖ツヨなのにハートフル。アダム・サンドラーは、食品メーカーのキャンペーンの盲点をついて飛行機のマイレージを貯めようとする変わり者のバリーが、「キレる」という弱点をプラスに変える「愛の力」に覚醒する姿をキュートに演じて、さすが。
製作年:2002
監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、フィリップ・シーモア・ホフマン、ルイス・ガスマン
富と権力に取りつかれていく石油王を描く壮大なドラマ『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
Photo by Getty Images
自身によるオリジナル脚本を監督してきたPTAが、アプトン・シンクレアの「Oil!」を原作に手がけた大河ドラマ。20世紀初頭のカリフォルニア、一攫千金を狙っていたダニエル・プレインビューは、苦労の末に石油を掘り当てるが、富と権力に取り憑かれていく。
家族を求めながらも自分以外は誰も信じず、あらゆるものを利用して欲望のまま突き進むダニエルの孤独と狂気を体現し、2度目のアカデミー賞主演男優賞に輝いたデイ=ルイスはもちろんだが、ダニエルと対立する牧師イーライを演じるポール・ダノも信仰を武器にする男の胡散臭さを体現してお見事。それぞれの“神”のために二人が激突する洗礼シーンとラストが鬼気迫る。
製作年:2007
監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、キアラン・ハインズ