アジアの未来
長編3本目までのアジア(日本、中東含む)のフレッシュな作品を世界に先駆けて上映するアジア・コンペティション部門。今回はオープニングに日本を代表するアジア映画の権威であった映画評論家に取材したドキュメンタリー『佐藤忠男、映画の旅』を特別上映。そして日本から『みんな、おしゃべり!』『黄色い子』の2作が選出されており、どちらも、ろう者が関係する作品になっている。中国からはチベットから届いた『一つの夜と三つの夏』とハオ・レイ主演の『オペレーターNo.23』の2作が選出。さらに韓国から夢を追う若者の姿を描く2作『光輪』『明日のミンジェ』、イランから女性たちを主人公にした『遥か東の中心で』(オーストリア合作)『ノアの娘』の2作が選ばれている。他にトルコから様々な人々の人生が織りなす『最も美しい葬儀の歌』、シンガポールから妻を亡くした老人を描く『老人と車』の計10作が最優秀作品賞を競う。

『みんな、おしゃべり!』
©2025 映画『みんな、おしゃべり!』製作委員会

『一つの夜と三つの夏』
©TIBETAN ANTELOPE FILMS CO., Ltd.

『遥か東の中心で』
ワールド・フォーカス
現在の世界の映画界の潮流を示す作品を上映する部門で、カンヌ国際映画祭コンペ部門上映のケリー・ライカート監督作『マスターマインド』、ベルリン映画祭上映のヴィヴィアン・チュウ監督作『ガールズ・オン・ワイヤー』、ロカルノ映画祭上映のベン・リヴァース監督作『メアーズ・ネスト』はじめ、ラヴ・ディアス監督がガエル・ガルシア・ベルナル主演で贈る『マゼラン』、ビル・コンドン監督によるジェニファー・ロペス出演のミュージカル『蜘蛛女のキス』などを上映。また共催企画「ラテンビート映画祭」ではアレハンドロ・アメナーバル監督がセルバンテスを描く『囚われ人』、ミシェル・フランコ監督の『ドリームズ』などを上映する。さらに今年は外交樹立130周年記念の「ブラジル映画週間」(国立映画アーカイブで上映)、「台湾電影ルネッサンス2025」、「ワロン・ブリュッセル:ベルギーフランス語圏特集」など様々な特集上映も行う。

『マスターマインド』
© 2025 Mastermind Movie Inc All Rights Reserved

『マゼラン』

『蜘蛛女のキス』
日本映画関連
日本映画の新作を対象に、特に海外に紹介すべき邦画という観点から選考された作品を上映する「Nippon Cinema Now部門」では、ベネチア映画祭オリゾンティ部門審査員特別賞を受けた藤元明緒監督の『LOST LAND/ロストランド』はじめ、大塚信一監督の『POCA PON ポカポン』、坂本悠花里監督の『白の花実』、児山隆監督の『万事快調〈オール・グリーンズ〉』など計8作の最新作を上映。また「日本映画クラシックス部門」では「生誕120年 成瀬巳喜男特集」で『浮雲』『めし』など、「追悼 篠田正浩特集」では『乾いた花』などの4Kデジタルリマスター版を上映する。さらに「生誕100年 三島由紀夫特集」では日本未公開のままだったポール・シュレイダー監督の『MISHIMA』(85)が初上映となる。そして特別上映として名匠・小津安二郎に関する最新作『The Ozu Diaries』が紹介される。今年の黒澤明賞は李相日とクロエ・ジャオの両監督に決定。『羅生門』『夢』などの上映も行われる。

『LOST LAND/ロストランド』
© 2025 E.x.N K.K.

『POCA PON ポカポン』
©映画『POCA PON ポカポン』製作委員会

『MISHIMA』
© 1985 The M Film Company.
来場予定の海外ゲスト

クロエ・ジャオ
毎年映画祭のお楽しみの一つは、国際色豊かな多くのゲストの参加。今回10月初旬時点で決まっているのは、黒澤明賞の受賞者であるクロエ・ジャオ監督。彼女の最新作『ハムネット』もクロージング上映される。またコンペ部門の上映作では『母なる大地』の主演ファン・ビンビン、『私たちは森の果実』のリティ・パン監督が来場。ガラ・セレクション部門では『エディントンへようこそ』のアリ・アスター監督、『She Has No Name』のピーター・チャン監督、『Sirāt』のオリヴァー・ラクセ監督も舞台挨拶する予定。さらに特別上映作『イン・アイ・イン・モーション』のジュリエット・ビノシュも来場となっている。
他にもお楽しみがいっぱい!

ソイ・チェン監督
映画祭では他にもお楽しみの企画がずらり。〈交流ラウンジ〉では『TOKYOタクシー』の山田洋次監督と黒澤明賞受賞の『国宝』などの李相日監督が豪華対談。マスタークラスでは『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のソイ・チェン監督が自身の作品について語りつくす。昨年から新設された「ウィメンズ・エンパワーメント部門」では性的ハラスメントを扱ったスペイン映画『私はネヴェンカ』など新作上映の他、シンポジウムなども開催。「アニメーション部門」では日本の『ChaO』『ホウセンカ』やメキシコの『私はフランケルダ』など国内外の新作11本を上映する他、戦後80年を迎え、戦争末期に製作された『桃太郎 海の神兵』デジタル修復版を上映。そして今年から新設される「アジア学生映画コンファレンス部門」は、アジア各国の映画学校が推薦する実写・アニメ映画から選出された学生映画のコンペ部門。すでにカンヌなどの映画祭で受賞している作品も紹介される。
特別上映作品

『イン・アイ・イン・モーション』
© 2025 MIAO PRODUCTIONS.
各部門とは別に、映画祭で特別上映される注目作品も。『イン・アイ・イン・モーション』は名優ジュリエット・ビノシュが振付師アクラム・カーンと世界で公演を行った舞台の創作過程を追ったドキュメンタリーでビノシュの監督デビュー作。他にブリジット・リン主演の香港映画『愛殺』のレストア版、エドワード・ヤン監督『ヤンヤン 夏の想い出』4Kレストア版、日本映画の話題作『8番出口』『GENERATIONS:The Documentary』がラインナップ。
第38回東京国際映画祭
期間:2025年10月27日~11月5日(10日間)
会場:TOHOシネマズ日比谷、シャンテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネスイッチ銀座、角川シネマ有楽町、丸の内ピカデリー、ヒューリックホール東京ほか
タイムスケジュールなど詳細は公式サイトにて(チケットは発売中)