世界の優れた芸術家に贈られる「第36回高松宮殿下記念世界文化賞」(公益財団法人 日本美術協会主催)の受賞者5名が2025年10月21日、受賞記念記者会見を都内で行った。(写真左から、受賞者のピーター・ドイグ、マリーナ・アブラモヴィッチ、エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル、アンドラーシュ・シフ)

 今回の受賞者は、絵画部門がピーター・ドイグ、彫刻部門がマリーナ・アブラモヴィッチ、建築部門がエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ、音楽部門がアンドラーシュ・シフ、演劇・映像部門がアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルという面々。
 受賞者スピーチでは、現代美術の「新しい具象(ニュー・フィギュラティブ・ペインティング)」の第1人者として知られるドイグが、自らの作品に小津安二郎監督の『東京物語』など日本文化から光やスペースの使い方などの影響を受けたことを語ったのを始め、アーティスト自身が自らの身体を使って表現し、時に観客も作品の一部となるパフォーマンスアートの先駆者であるアブラモヴィッチは、あるアイディアが思い浮かんだ時、失敗するかもと思うかもしれないが、失敗することこそ最も重要で、それがなければ繰り返すだけで発展がなくなってしまうと自らの作品に対する異色のアプローチについて語った。
 モダン建築と自然を融合させた建築を次々生み出したポルトガル建築家、デ・モウラは、建築の場合、どんなに私的なケースでも多くのことを考えなくてはならない。ビジネスや環境変化など今ではまずます困難な状況になっている、と建築業界にも押し寄せる現代世界の問題を発言。世界で最も注目される音楽家でピアニストのシフは、日本には数え切れないほどの訪問回数があり、いつもその美や礼節、優れた趣味などに影響を受け、特に年配者が敬われている点などを称賛する言葉を発した。そしてコンテンポラリーダンス界を牽引する存在で、自らのカンパニー「ローザス」の芸術監督として知られるケースマイケルは、ダンスは過渡的なものと思われがちだが、実は時を超えて喜びや祝祭、服喪、慰めなど多くの時を超えた、もっともユニークな芸術だと主張。また、暴力的で複雑な世界を調和する力を持っていると確信しているとも語った。
 さらに日本、世界文化賞への感謝と、自らの芸術に対する情熱を述べた5名は、翌22日に明治記念館で開催された授賞式典に臨んだ。
(取材/米崎明宏)

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