河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』が、ハピネットファントム・スタジオ配給で、2026年2月6日よりテアトル新宿他にて公開する。“愛のかたち”と“命のつながり”をモチーフにして、日本の失踪者と心臓移植の現実を重ねて描く、珠玉の人間ドラマだ。この度、河瀨監督作品の常連である尾野真千子、永瀬正敏をはじめ、北村一輝、小島聖、岡本玲、松尾翠、早織、平原テツ、利重剛、中嶋朋子ら実力派キャストが本作に集結しており、全キャストが解禁となった。
画像1: 河瀨直美監督最新作『たしかにあった幻』尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏をはじめ集結した全キャストを解禁!

フランスから来日したコリーは、日本における臓器移植への理解と移植手術の普及に尽力するが、西欧とは異なる死生観や倫理観の壁は厚く、医療現場の体制の改善や意識改革は困難で無力感や所在のなさに苛まれる。また、プライベートにおいても屋久島で知り合った迅と同棲を始めるが、お互いが使う時間のズレからくるコミュニケーションの問題に心を痛めていた。そんな中、心臓疾患を抱えながら入院していた少女・瞳の病状が急変するが…。

「幻」とは実在しないものがあるかのように見えること、あるいは存在自体が疑わしいもの、の意に相当する。それを修飾する言葉として「たしかにあった」という表現は、論理的には成立しない。にもかかわらず、相反するワードを敢えて同義的に並べたタイトルは、二項対立を超えてゆく新しい思想を提案する本作の内容を知らしめている。また、この映画は、河瀨直美監督にとって6年ぶりとなる劇映画の最新作でもあり、オリジナル脚本としては8年ぶりである。物語を支えるテーマは二つ。一つは、先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療について。もう一つは年間約8万人にのぼる日本の行方不明者問題だ。河瀨監督は『あん』(15)で差別と偏見の果てに生きる歓びを人々に与えたハンセン病患者の生き様、『光』(17)で失われゆく視力に翻弄される人生の中で気づかされた新たな愛を獲得したカメラマンの人生、『朝が来る』(00)では特別養子縁組で救われた命の尊さと二人の母の絆など、旧来の常識や血縁とは異なる、他者との関係性の中に存在する「愛」を描いてきた。「死」が終わりではないという気づきの先に、移植医療が人の命を繋いでゆき、「生」の意味を問いかける本作は、第78回ロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア上映にて、河瀨監督のマスターピース(傑作)と評された。

主人公コリーを演じたのは、『ファントム・スレッド』(17)『蜘蛛の巣を払う女』(18)などで知られるルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープス。聡明な大人の女性であると同時に、時には少女のような無邪気さや脆さをうかがわせ、孤独と向き合う繊細な心の揺らぎとそれゆえの限りない優しさを全身全霊で演じ切る。コリーが屋久島で運命的に出会う謎めいた青年・迅には『爆弾』『そこにきみはいて』(25)など公開作が相次ぎ、連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK)にも出演中の寛一郎。河瀨作品には初参加ながら、ワイルドで自由な存在感とある日突然姿を消してしまうような危うさを両立させた。なお、東京国際映画祭コンペ部門にノミネートの『恒星の向こう側』(監督:中川龍太郎)では役者としての河瀨直美と共演も果たしている。
また、『萌の朱雀』(97)で河瀨監督に見出された尾野真千子が最愛の息子を失い、一周忌を迎えた今も罪悪感に苛まれるめぐみを、河瀨監督の短編『狛-Koma』(09)や『主人公は君だ!』に出演してきた北村一輝が元捜査一課の刑事であり、とある事件をきっかけに現在は弁当屋として過ごす亮二を、ドナーとなる少年の父親には近年の河瀨作品に欠かせない永瀬正敏、また母親に早織、心臓病を患う少年、久志の母親・由美に岡本玲、同じく小児病棟に入院中の少女、瞳の母親・裕子に松尾翠、人手不足が深刻な移植コーディネーターの浜野に小島聖、臓器移植医療を担当する小児科医・平坂に平原テツ、迅の父親・英三に利重剛、母親・幸江には中嶋朋子と、錚々たる実力派が顔を揃えた。そして、河瀨監督がオーディションで見出した子役二人、久志役の中村旺士郎、瞳役の中野翠咲の実力派俳優顔負けのリアリティある演技にも注目してほしい。

『たしかにあった幻』
2026年2月6日(金)テアトル新宿ほかロードショー

出演:ヴィッキー・クリープス 寛一郎 
尾野真千子 北村一輝 永瀬正敏
中野翠咲 中村旺士郎 土屋陽翔 吉年羽響
山村憲之介 亀田佳明 光祈 林泰文 中川龍太郎
岡本玲 松尾翠 早織
小島聖 平原テツ 利重剛 中嶋朋子

監督・脚本・編集:河瀨直美

配給: ハピネットファントム・スタジオ

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