「報知映画賞」とは?

和田誠デザインの報知映画賞ブロンズ像
報知映画賞は報知新聞社が単独開催する初の映画賞として1976年に創設された。
当時は映画人口の減少に歯止めがかからず日本の映画界は元気をなくしている時代。映画界をもう一度盛り上げたい、そんな思いからスタートした報知映画賞は今年50回目を迎える日本を代表する映画賞。
報知映画賞は観客の声やファンの意見を重視する点が特徴で、2008年からノミネート方式を導入し、一般読者や映画ファンからの投票を実施、ファン投票最上位の作品・俳優を含め報知映画賞事務局が各部門対象をノミネートする。
その後、11月にノミネート作品の中から選考委員会で作品賞はじめ監督賞・主演賞・助演賞・新人賞、年によっては特別賞など各賞が決定。表彰式パーティは12月中旬に都内のホテルで開催される。
毎年、年末から年明けにかけてブルーリボン賞はじめ様々な映画賞、映画祭が日本各地で開催されるが、報知映画賞はこうした各映画賞の先陣を切って発表されるため、その年の有力作品、俳優や流れを占う意味でも最も大きな注目を集めている映画賞である。
半世紀に及ぶ映画祭のメモリアルな出来事
昭和から令和へと映画界に寄り添い、歩んできた報知映画賞。
1976年の記念すべき第1回は『犬神家の一族』(市川崑監督)が作品賞に選ばれた。第2回は高倉健が『幸福の黄色いハンカチ』『八甲田山』で主演男優賞を受賞。第5回では、巨匠・黒澤明監督の『影武者』が作品賞に。第7回では深作欣二監督の『蒲田行進曲』が作品賞に選ばれた。86年の第11回では『コミック雑誌なんかいらない!』が作品賞に選ばれ、内田裕也が主演男優賞に輝いた。内田は表彰式でも警察官の衣装で登壇。自身初の映画賞に驚きながらも、胸を張り敬礼ポーズを決めた。
平成に入って、91年の第16回では『あの夏、いちばん静かな海。』で北野武が監督賞に。92年の第17回は周防正行監督の『シコふんじゃった。』が作品賞、本木雅弘が主演男優賞に輝いた。95年の第20回は『Love Letter』で岩井俊二が監督賞、中山美穂が主演女優賞、豊川悦司が助演男優賞の3冠を達成。96年の『Shall we ダンス?』、97年の『うなぎ』『失楽園』で役所広司が史上初の2年連続主演男優賞。98年は北野武監督の『HANA–BI』が作品、監督、助演男優賞(大杉漣)の3冠に。20世紀最後となる2000年の第25回は織田裕二が『ホワイトアウト』で主演男優賞に輝いた。
21世紀となり、2002年の第27回は、山田洋次監督が時代劇に初挑戦した『たそがれ清兵衛』が作品、監督、主演女優賞(宮沢りえ)に選ばれ、旋風を起こした。04年の第29回では『隠し剣 鬼の爪』の松たか子が主演女優賞、翌年の第30回で『蝉しぐれ』『阿修羅城の瞳』の市川染五郎(現・松本幸四郎)が主演男優賞に選ばれ、兄妹受賞となった。
11年の第36回は表彰式当日に『武士の家計簿』でメガホンを執った森田芳光監督の訃報が飛び込み、同作で主演男優賞受賞の堺雅人が壇上で涙をこらえてスピーチを。12年の第37回では『あなたへ』(降旗康男監督)の高倉健が主演男優賞、『北のカナリアたち』(阪本順治監督)の吉永小百合が主演女優賞に。日本映画界を代表する名優の揃い踏みとなった。
報知映画賞歴代作品賞受賞作一覧
第1回 犬神家の一族(1976)
第2回 幸福の黄色いハンカチ
第3回 サード
第4回 太陽を盗んだ男
第5回 影武者
第6回 遠雷
第7回 蒲田行進曲
第8回 家族ゲーム
第9回 お葬式
第10回 それから
第11回 コミック雑誌なんかいらない!
第12回 マルサの女
第13回 TOMORROW/明日
第14回 ウンタマギルー
第15回 櫻の園
第16回 息子
第17回 シコふんじゃった。
第18回 月はどっちに出ている
第19回 全身小説家
第20回 午後の遺言状
第21回 Shallweダンス?
第22回 ラヂオの時間
第23回 HANA-BI
第24回 金融腐蝕列島 呪縛
第25回 顔
第26回 GO
第27回 たそがれ清兵衛
第28回 刑務所の中
第29回 誰も知らない
第30回 ALWAYS 三丁目の夕日
第31回 フラガール
第32回 それでもボクはやってない
第33回 おくりびと
第34回 沈まぬ太陽
第35回 悪人
第36回 八日目の蝉
第37回 鍵泥棒のメソッド
第38回 舟を編む
第39回 0.5ミリ
第40回 ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判
第41回 湯を沸かすほどの熱い愛
第42回 あゝ、荒野
第43回 孤狼の血
第44回 蜜蜂と遠雷
第45回 罪の声
第46回 護られなかった者たちへ
第47回 ある男
第48回 月
第49回 正体
前回(2024年 第49回)の主な受賞結果

第49回表彰式の様子
主演男優賞は『正体』で脱獄し姿を変えながら逃走する死刑囚役を演じた横浜流星が受賞。前年に引き続き2年連続の主演男優賞受賞で22年の助演男優賞から3年連続の受賞は49回の歴史で初の快挙。『正体』は作品賞、助演女優賞(吉岡里帆)と合わせて3冠。主演女優賞は『ミッシング』で娘を失った母親役を体当たりで演じた石原さとみが受賞。03年報知映画賞新人賞を受賞して以来21年を経て主演女優賞を獲得した。また監督賞には『ラストマイル』の塚原あゆ子が選ばれている。
