第 78 回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞したイランの巨匠ジャファール・パナヒ監督の最新作『IT WAS JUST AN ACCIDENT(英題)』が第83回ゴールデングローブ賞4部門にノミネートとなり、2026年日本公開決定の運びとなった。

ユーモアと緊迫感が交差する、社会派スリラーの最高峰

2010 年から反政権を理由に禁錮6年の有罪判決を受けていたパナヒ監督。映画制作や海外渡航が20 年間禁⽌されていたが、2023 年に海外渡航禁⽌が解かれ、本作品でカンヌ国際映画祭に正式参加し、イラン映画としては28 年ぶりに最⾼賞を受賞。『チャドルと⽣きる』(2000)でベネチア国際映画祭⾦獅⼦賞、『⼈⽣タクシー』(2015)でベルリン国際映画祭の⾦熊賞を受賞、そして本作のパルム・ドール受賞により、世界三⼤映画祭すべての最⾼賞を受賞するという快挙も成し遂げ、世界中で⼤きな話題となった。
さらに各国の映画祭で受賞・ノミネートが相次ぐ中、⽶アカデミー賞の国際⻑編映画賞部⾨は映画が製作された国から選出されなければ出品できない規定だったが、フランスとの共同製作により、第98 回アカデミー賞国際⻑編映画賞のフランス代表にも選出。 今回のゴールデングローブ賞ノミネートによって、アカデミー賞への勢いを⼀層加速させる形となった。

本作は、不当に刑務所に投獄された⼈々が、復讐を果たそうと試みる姿をスリリングに、ユーモアたっぷりに描いた復讐劇。パナヒ監督⾃⾝が、⼆度に渡って投獄された経験と同房で出会った⼈々のリアルな声から着想を得て、物語へ織り込み、類い希なる映画へと昇華。冒頭からノンストップに渦巻く連鎖の中へと引き込まれ、最後まで⽬も⽿もスクリーンに釘付けになる、魂を揺さぶる強烈な、スリラーの最⾼峰が誕⽣した。

2025 年12 ⽉、アメリカで本作のプロモーション活動中だったパナヒ監督は、明確な容疑が開⽰されないまま、イスラム⾰命裁判所から突如判決を受けた。内容は<反体制プロパガンダ活動を⾏った>とする⽋席裁判での懲役1 年に加え、2 年間の渡航禁⽌、さらに政治・社会団体および派閥への参加禁⽌という厳しい措置である。ゴールデングローブ賞の授賞式は現地時間2026年1 ⽉11 ⽇。パナヒ監督の魂の叫びが詰まった本作が、どんな評価を受けるか注目だ。

監督・脚本︓ジャファル・パナヒ『⼈⽣タクシー』『チャドルと⽣きる』
出演︓ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤ
2025年/フランス・イラン・ルクセンブルグ/ペルシャ語/103分
配給︓セテラ・インターナショナル/協⼒︓ユニフランス
©LesFilmsPelleas

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