ヨアキム・トリアーの現在地へとつながる記憶に棲みつく、愛と孤独の“オスロ三部作”
上映作品のうち 『リプライズ』『オスロ、8月31日』の2作品は、日本初の劇場ロードショー公開。ついに日本で劇場体験できる貴重な機会となる。さらに、同監督の最新作『センチメンタル・バリュー』が2026年2月20日(金)より全国公開。本年度アカデミー賞最有力との呼び声も高い新作公開を目前に、 トリアー監督の“オスロ三部作”をスクリーンで体験できる特別な上映となる。

『リプライズ』 © Spillefilmkompaniet 4 1/2
このたび解禁された特集予告編は、ヨアキム・トリアーの映画世界を一本の流れとして体感させると同時に、“オスロ三部作”の原点に立ち返る構成となった。使用されている映像は、三部作の出発点となった『リプライズ』と『オスロ、8月31日』という初期二作品から厳選されたもの。トリアーがデビュー以来描いてきた感情と問いの源流に焦点を当てることで、三部作全体、さらには最新作へと連なる視線を浮かび上がらせている。予告編の前半を担うのは『リプライズ』。若者特有の衝動や焦燥、未来への過剰な期待が、スピード感あふれる編集とともに立ち上がり、デビュー作ならではの疾走感が鮮烈に刻まれる。一方、後半では『オスロ、8月31日』の映像へと移り、テンポは次第に落ち着き、内省的で静かな時間が流れ始める。人生の選択や取り返しのつかなさを前に立ち止まる人物の姿が、深い余韻を残す。この前半と後半の明確なコントラストは、若さのエネルギーと、その先に待つ沈黙や思索という、トリアー作品に一貫する二つの極を端的に示している。対照的でありながら、いずれも同じ実存的な問いへと収束していく。その感情の流れが、短い予告編の中に凝縮されている。

『オスロ、8月31日』 © Motlys AS / Norway
また本予告編中『オスロ、8月31日』の映像のなかには、最新作『センチメンタル・バリュー』の主演を務めるレナーテ・レインスヴェが、さりげなく姿を見せる瞬間も。ほんの一瞬の登場ではあるが、それはトリアーの映画世界が過去から現在、そして新作へと確かにつながっていることを示す静かなサインでもある。ぜひ見逃さずに注目してほしい。
「ヨアキム・トリアー オスロ三部作」特集上映【予告編】『リプライズ』『オスロ、8月31日』『わたしは最悪。』
youtu.beヨアキム・トリアーは1974年生まれ。長編デビュー作『リプライズ』(06)で、ノルウェーのアカデミー賞と称されるアマンダ賞の最優秀作品賞・監督賞・脚本賞を受賞し、鮮烈な登場を果たした。その後『オスロ、8月31日』(11)が第64回カンヌ国際映画祭〈ある視点〉部門に出品され、孤独や喪失といった感情を静かにすくい取る作家として国際的評価を確立する。『母の残像』(15)、『テルマ』(17)を経て、「オスロ三部作」最終作『わたしは最悪。』(21)では主演のレナーテ・レインスヴェがカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。作品はアカデミー賞2部門にノミネートされ、日本でも大きな支持を集めた。そして最新作『センチメンタル・バリュー』はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、本年度アカデミー賞最有力とも目されている。最新作『センチメンタル・バリュー』公開を目前に控えたいま、“オスロ三部作”を一挙上映する今回の特集。その入口として解禁されるこの予告編は、トリアーという映画作家の原点と、その先に連なる時間を見渡すための、示唆に富んだ映像となった。

『わたしは最悪。』© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST - SNOWGLOBE - B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA
『リプライズ』
2006年/ノルウェー/106分/R15+
監督:ヨアキム・トリアー/製作:カーリン・ユルスル/脚本:エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー/撮影:ヤコブ・イーレ/音楽:オーラ・フロッタム/出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、エスペン・クロウマン=ホイネル、ヴィクトリア・ヴィンゲ、オッド=マグヌス・ウィリアムソン
提供:JAIHO/配給:グッチーズ・フリースクール
作家を志す二人の青年エリックとフィリップ。成功と失敗、友情とすれ違い、希望と絶望。人生の“リプライズ=反復/再演”を複層的な語りで描き出した、ヨアキム・トリアーの長編デビュー作にして、後の作風がすでに結晶した青春映画。のちにトリアーが「オスロ三部作」全作品や最新作『センチメンタル・バリュー』までタッグを組み続け、オリヴィエ・アサイヤスやミカエル・アース、ミア・ハンセン=ラブといった監督の作品に出演する名優アンデルシュ・ダニエルセン・リー初の本格的な映画出演作。
『オスロ、8月31日』
2011年/ノルウェー、スウェーデン、デンマーク/94分/PG12
監督:ヨアキム・トリアー/製作:ハンス=ヨルゲン・オスネス、ジグべ・エンドレセン/脚本:エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー/撮影:ヤコブ・イーレ/音楽:オーラ・フロッタム/出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハンス・オラフ・ブレンネル、マリン・クレピン、イングリッド・オラワ、ヨハンナ・ヒェルヴィック・レダン、レナーテ・レインスヴェ
提供:JAIHO/配給:グッチーズ・フリースクール
薬物依存症からの回復施設にいるアンデシュは、面接のために一日だけ街へ戻る許可を得る。過去の友人や恋人と再会しながら、自らの人生の空白と向き合う彼は、“取り返しのつかない決定的な一日”を静かに過ごすことになる。ドリュ・ラ・ロシェル『ゆらめく炎』の精神を現代に移した傑作。その後トリアーの『わたしは最悪。』『センチメンタル・バリュー』の主演で圧倒的な輝きを見せることとなるレナーテ・レインスヴェが映画デビューを果たす。
『わたしは最悪。』
2021年/ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク/128分/R15+
監督:ヨアキム・トリアー/製作:トマス・ロブサム、アンドレア・ベレントセン・オットマール/脚本:エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー/撮影:キャスパー・トゥクセン/音楽:オーラ・フロッタム/出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー
配給:ギャガ
30歳を目前に、恋愛・キャリア・自己像に揺れるユリヤ。人生の岐路での選択と後悔、関係の終わりと始まり――オスロの街を舞台に、“いまを生きること”の痛みと愛しさを鮮烈に描き、世界中で絶賛された現代映画のマスターピースにして「オスロ三部作」最終章。主演のレナーテ・レインスヴェが第74回カンヌ国際映画祭で女優賞受賞の快挙を果たし、アカデミー賞で脚本賞と国際長編映画賞にノミネートされ、2021年のベスト映画として多くの人が名を挙げた1本。


