
今回ピックアップした3作品は、これまで「遠い存在」だったかもしれない人々が、日常の延長線上にいる隣人として感じられるようになる作品群。手話でのコミュニケーションとともに、家族との関係、仕事や恋愛の悩みなど、普遍的な日常や感情が描かれることで、違いよりも多くの共通点が浮かび上がる。物語を通じて多様な価値観が可視化されることで、「障害」という枠組みを超え、一人の人間としての等身大の姿に触れることができるはずだ。
2026/5/1公開 映画『幸せの、忘れもの。』予告編
www.youtube.com1作目は、聴こえない世界に生きるアンヘラの身に起きた“幸せな出来事”が、日常を静かに揺るがしていく『幸せの、忘れもの。』(2026年5月1日(金)より全国公開)。
主演のミリアム・ガルロはろう者の俳優であり、監督の実の妹でもある。本作には監督と妹自身の長年の実体験が色濃く反映され、研ぎ澄まされたリアリティが宿っている。ろう者と聴者の間に生まれる僅かなすれ違いや、それぞれが抱える孤独感。母として、子として、あるいは夫婦として、誰もが感じるふとした切なさや疎外感、そして必死にもがいた先にある小さな幸せを、繊細かつ絶妙な演出で映し出した一作だ。
映画『私たちの話し方』予告編|2026年3月27日(金)公開
www.youtube.com2作目は、2025年上半期に香港映画No.1ヒットを記録した『私たちの話し方』(3月27日(金)より全国公開中)。異なる環境で育った20代の3人のろう者が、ありのままの自分で生きようと模索する姿を描く青春群像劇だ。
香港の俊英アダム・ウォン監督が、ろう者のアイデンティティというテーマを瑞々しい青春ドラマに昇華させた。香港のアカデミー賞にあたる第43回香港電影金像奨では作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞を含む計7部門ノミネートの快挙を果たし、第61回金馬奨(台湾)ではジョン・シュッインが最優秀主演女優賞を受賞。香港映画界の新たな才能たちが魅せる珠玉の青春映画となっている。
映画『ぼくの名前はラワン』予告編 2026年1月9日公開
www.youtube.com3作目は、難民としてイギリスに渡ったろう者の少年の成長を描く感動のドキュメンタリー『ぼくの名前はラワン』(2026年1月9日(金)より公開中)。
これまでSXSWやBFIロンドン映画祭などで高い評価を受けてきたイギリス人監督のエドワード・ラブレースが2019年に少年ラワンと出会い、殻を破ろうとする彼に心動かされ、クルド人やろう者のプロデューサーらと撮影チームを組み、実に4年もの年月をかけてラワンの成長をカメラに収めていった。心に傷を負ったろう者の少年が、新天地での出会いと学びによって自分らしさを獲得していく過程を、ダイナミックで抒情的な映像と音楽で描写。そこに宿る圧倒的な没入感と心揺さぶる物語は世界中で絶賛された。
「障害」という言葉の先にある、彼らのありのままの人生。今回紹介した3作品は、それぞれ異なるアプローチでその豊かさを鮮やかに描き出している。世界各国で高く評価されたこれらの珠玉の物語を、スクリーンで体験してみてはいかがだろうか。



