行ったことがないのになぜか懐かしい、ある土地とそこに暮らす人々の物語
前作『ミューズ・アカデミー』から約10年ぶりの新作公開となるゲリン監督。まずは「前回の映画から長い時間が経ってしまったので、来てくださった若い方たちは私が何者かご存知ない人が多いかもしれません」とユーモアを交えて挨拶。バルセロナ現代美術館からの依頼により短編の撮影から始まった『よき谷の物語』。

「アスファルトのない道路、子供たちが川で泳ぐ姿は、自分が子供の頃の風景と同じものだった」ため、若い頃も用いていたモノクロのスーパー8で撮影しているうちに、もっとバルボナという地域を掘り下げたいと思い長編の企画が始まったのだという。「映画がテレビのニュースと違うところは、ある一つのとてもローカルな地域の一部分を描いても、普遍的な広がりを作りだすことができるところだと思っています。本作は撮影しながら編集し、スタッフは映画学校の生徒たちと、定年退職した友達たちに手伝ってもらいました」と映画に対する思いと独自の製作過程を語った。これから鑑賞する観客に向けては、「はじめのクレジットが“監督:ホセ・ルイス・ゲリン”ではなく、“ワーク・イン・プログレス:ホセ・ルイス・ゲリン”となっているところに注目してほしい。本作は変容し続けるものとしてとらえていただきたい。ご覧になった方ご自身の映画として、皆さんのなかで構築されることを願っています」とコメント。

現在リバイバル公開中の『シルビアのいる街で』について尋ねられると、「私は自分の映画を振り返ることはしません。つくるときに何百回も観てるからです。ただ、あえて振り返ると、その時一緒だったチームや、今は亡き人々のことを思い出してメランコリックな気持ちになります。『シルビアのいる街で』は日本の多くの皆さんに見ていただいた映画なので、ぜひ日本でリメイクしたいと考えています。ですが、東京は大きすぎてシルビアを見つけられないので、もう少し小さな街でシルビアを見つけたいと思います」と笑いを交えてコメント、「そういえば、広島の尾道は小津安二郎監督の『東京物語』の舞台にもなったところですし、『シルビアのいる街で』のリメイクの場所としてどうでしょうか」と逆に観客に意見を求めた。
そして「以前、北鎌倉に行ったとき、道を通る女性たちを眺めながら、どこかに原節子さんはいないかと探していました。私にとって原節子さんは私の娘であり母であり妻であると思っています。日本映画には、観ている者を家族の一員と思わせてくれるような作品がたくさんあります。原節子さんの存在感は小津監督の中では非常に大きなものだったと思います。もう原さんにお会いすることは叶いませんが、私が映画から受け取ったものを恩返ししたいと思っています」と小津作品、原節子に対する敬愛も述べた。
『よき谷の物語』
監督・脚本・編集:ホセ・ルイス・ゲリン 撮影:アリシア・アルミニャーナ
原題:HISTORIAS DEL BUEN VALLE(英題:Good Valley Stories)
スペイン、フランス/122分/カラー/ヨーロピアンビスタ
提供:マーメイドフィルム 配給:コピアポア・フィルム 宣伝:マーメイドフィルム、VALERIA
後援:スペイン大使館、インスティトゥト・セルバンテス東京 協力:山形国際ドキュメンタリー映画祭、カタルーニャ政府観光局
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