名匠・黒澤明と、その多くの作品で主演を務めた三船敏郎が初めてタッグを組んだ映画「醉いどれ天使」。映画公開の約半年後に舞台作品として上演されたという。当時の台本は長い間眠っていたが、近年発見され、2021年に舞台化し大盛況のうちに幕を閉じた。そして今回、25年舞台版として『醉いどれ天使』が上演される。
三船が演じた闇市を支配する若いやくざ・松永に挑むのは6年ぶりの主演舞台となる北山宏光。松永を翻弄するダンサー・奈々江を阪口珠美が演じる。難役に悩みながらも楽しく稽古に励んでいる阪口に本作への想いを伺った。

撮影/久保田司
ヘアメイク/谷口里奈
取材・文/柳真樹子

画像1: “子どもの頃の夢はダンサー” 阪口珠美が舞台『醉いどれ天使』の艶やかなダンサー・奈々江役で新境地へ【インタビュー】

――舞台『醉いどれ天使』にご出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

本当にびっくりしました! 私で大丈夫なのかなという不安がすごく大きかったんですが、稽古の日程が近づくにつれて、豪華なキャストやスタッフのみなさんと一緒に舞台を作れることが楽しみになりました。不安と同じぐらい「頑張るぞ!」というやる気に満ち溢れています。

――元々は黒澤明監督の映画ですが、ご覧になりましたか?

このお話をいただいてからDVDを購入し、モノクロの映画を拝見しました。音声やモノクロの景色が、私からすると新鮮で、逆にファンタジーさを感じました。モノクロならではですが、血や汗が荒々しく感じ、興味深く見入ってしまいました。

――舞台のお話は少しアレンジされたそうですが、脚本を読まれた感想はいかがでしょう。

映画よりも女性にフィーチャーされていると感じました。

――確かに。時代もあるかもしれませんね。

映画では描かれていなかった奈々江の気持ちが表れているシーンも多くあり、より一層、「本当はこう思っていたのかな」と妄想しました。

――戦後の闇市が舞台ですが、時代背景について何か勉強をされましたか?

闇市の世界や戦後の雰囲気が分からなかったので、稽古場で(演出の)深作健太さんからいただいた時代背景をまとめたものをみんなで共有したり、闇市の資料もたくさん見ました。

――阪口さんは小さい頃からダンスを習われていましたよね。演じる奈々江はダンサーですが、改めてダンサーの役はいかがですか?

まさに踊ることがすごく好きで、小さい頃は、バックダンサーになるのが夢だったんです! ただ、奈々江のように魅せる踊りというか、誘惑するような踊りは、私にとっては新しくて難しかったです。でも、やっぱり、ダンスはワクワクしますね(笑)。

――久々にダンスの練習をされたりしたんですか?

今回、お話が決まってから、ジャズダンスの教室を探して通っています。女性らしくてカッコいい動きができればと改めて基礎を学び直しています。

――奈々江役は演技のほかにダンスもあり、見せ所が詰まっていますよね。

ダンスで身体的な表現をすることと、言葉や演技で表現するところの差が難しいですね。ダンスで表現ができても、言葉を読もうとすると悪女感が出なくなったり……。今、身体的表現と言葉での表現の差を埋めながら稽古をしています。

――少し昔の日本なので、言葉遣いも難しそうですね。意識したセリフはありますか?

松永に「この野郎!」と言うセリフがあるんですよ。

――え、阪口さんのイメージにない!

人生で初めて言いました(笑)。脚本を読んだ時は「こんなセリフ、私には言えない!」と悩んでいたんですけど、いざ稽古が始まると、奈々江としてはすぐに出てくる言葉だなと感じました。苦戦しましたけど、奈々江になれば意外と自然に出せる発言だったので、新しい一面になったと思います。ファンの方はびっくりしちゃうかもしれません(笑)。

――深作さんの演出で印象に残っていることはありますか?

深作さんには「アクションよりリアクションを」とお話いただきました。「書いてあるからやるのではなく、奈々江だったらこう動くから、ふとこの言葉が出た」ということをはじめ「セリフは読むものではなく生まれるものだよ」とも教えていただきました。深作さんの一つひとつの名言を取りこぼさないようにしています。私は不器用なので、言われたことをすぐには消化できないんですけど、いただいたアドバイスを心に留めて、今頑張っています。

――衣装も独特だと思いますが、カルチャーショックを受けたアイテムはありますか?

頭から足先まで全部です(笑)! ヒールも初めてですが、本格的なドレスも初めてでした。その恰好で演技して踊ってというのは初挑戦です。あと、タバコ自体も初めてでした。

――どうやって使っていいか分からないですよね。

初めて買ってみて、どう持つのが自然なのか練習しました。

――ほかの登場人物で気になる方はいらっしゃいますか?

奈々江と対照的なぎんですね。ぎんは杖を持っていてあまり動けなかったり、職業も居酒屋で働く子だったりとすべてが対照的です。真逆なぎんを見て、「もっと奈々江の演技はこうしよう」と日々考えています。

――奈々江は松永から岡田へと乗り換えたり、割と向上心がある女性かなと感じました。阪口さんは奈々江をどんな女性と解釈していますか?

簡単に言えば現実主義者。ぎんは夢や未来の希望を考えていますが、奈々江は今自分が上に行ければそれでいい、強い男の女でいられればそれでいいと、本当に悪くて、そして強い女です。でもそれが逆にかわいそうだなとも感じます。奈々江のただ冷たいだけではなく、その裏の感情までを考えるのが楽しいです。

画像1: ――奈々江は松永から岡田へと乗り換えたり、割と向上心がある女性かなと感じました。阪口さんは奈々江をどんな女性と解釈していますか?

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