大ヒットを記録した映画『国宝』の原作者である吉田修一による短編集「逃亡小説集」内に収められている「逃げろお嬢さん」が映画化、10月2日(金)に公開された。
一億総推し時代と言われている今、自分の人生を支えてくれた推しを信じ抜くことで守ろうとした、ある男の小さな奇跡の一日の物語。監督は、『世界の中心で、愛をさけぶ』『今度は愛妻家』などの脚本家として活躍する一方、『ひとりぼっちじゃない』『サイド バイ サイド 隣にいる人』では脚本・監督を務める伊藤ちひろ。
主人公の康太を演じるのは、映画主演2作目となる井口理(King Gnu)。音楽、俳優として活躍の場を広げる井口が、大勘違いの中、推しのために一生懸命奮闘する男を演じる。伊藤ちひろとは、主演と監督としては2度目のタッグになる。そして、康太が長年推している元アイドル・鮎川舞子を、話題作への出演が続く深川麻衣が繊細に表現する。井口理と深川麻衣、二人に本作について語ってもらった。

撮影/久保田 司
スタイリスト/Shohei Kashima(W)【井口】
       原 未来【深川】
ヘアメイク/木村一真(skavati)【井口】
      村上 綾【深川】
インタビュー・文/辻 幸多郎

元アイドルを演じるということに対しては、少し勇気が要りました

──脚本を読まれた感想と、共演をされた互いの印象をお聞かせください。

井口「読んだ感想は、吉田修一さん原作の「逃げろお嬢さん」とは少し改編されている部分があって。原作よりも康太と舞子の、人と人との会話というものが増えているなという印象だったので、これをどうやって映像化されるのかなっていうのはすごく興味がありました。深川さんとは、初めましてだったので、舞子をどういう感じで演じてくるのかなと思っていたんですけど、康太がどこか信じきれるというか、信じたくなるようなお芝居をされていて。役についての話とか、このシーンをこうしようみたいな話は現場ではしていなかったんです。でも、最後のシーンに向けて、この人だったら信じられるなっていう役作りをされていたのが、とても素敵でした」

──深川さんご本人の印象は?

井口「現場にインする前に、昔の深川さんを追っておこうと思って……」

深川「うわー、やめてほしいです(笑)」

井口「大体そういう時って、見ていた映像と現場で会った本人にギャップがあるのは当たり前だとは思うんですけど、そのギャップがいい意味でないというか、すごく自然体な方なんだな、というのはご一緒して思いましたし、原作では舞子がなんでこうなったかという経緯を回想で追っていく描写があるんですけど、それをあえて映画では排除しているんです。でも、深川さんが醸し出す空気で、描写されていなくても舞子が生きてきた複雑な人生を伝えている。それがすごく素敵だなと思いました。本当に現場ではニュートラルな方だなっていう印象が強くて」

深川「同じです。井口さんは本当にニュートラルな方だなって。それに井口さんは撮影前のセットアップの段階から参加されていましたし、撮影が始まってからも、伊藤監督とワンシーンワンシーン、丁寧にすり合わせてお芝居をされている姿が本当に印象的で。最初は一方的に、King Gnuで活動されている井口さんのイメージがあったので、どういう方なんだろうって思っていたんです。でも、初めてお会いした時に、(ロケ地の)長野でお祓いをしたんですよ。その時に立っていた井口さんが康太そのものな感じで。長野の土地にすごく馴染んで、しっくりきていたんです。その後にご出身が長野だと聞いて、すごく腑に落ちた部分もありましたし、長野の山奥で別荘を営んでてっていう設定にもものすごく説得力があって、本当にガラッと印象が変わりました」

──脚本を読まれた感想は?

深川「舞子はちょっと何を考えているかわからない部分もあるんですけど、すごく責任感が強い人なんだろうなって思いました。アイドルからタレントに転向して、その時間も自分のためというよりかは、誰かのために、期待に応えるためにずっと走ってきた人なんだろうなっていう印象を受けて。だからこそ、最後のほうでポツって康太に弱音を吐いた言葉が私はすごく印象的で。あの状況だからっていうのもあるんですけど、舞子の地に足がついてなさっていうのと、どっしりとそこで生活をしていて地に根を張っている康太との対比、言葉のやりとりのちょっとずれているところが、読んでいてすごく面白かったです」

──ちなみにお二人は、現場ではどういうコミュニケーションを取られていました?

深川「役者さんによって、距離の取り方っていろいろじゃないですか。私は結構合わせられるタイプなんですけど、この作品では距離感的にそんなにワイワイしすぎないほうがお芝居もやりやすいのかもと思って。ミュージックビデオの話とか、井口さんが聴いている音楽の話とか、そういうことをポツポツ話した記憶が残っています」

井口「ポツリポツリ話した感じでしたね。なんか、ウグイスが鳴いていたりしたらね」

深川「“鳴いてますね”って(笑)」

井口「平和な会話しかしてない(笑)」

──その距離感が、いい意味で映像とリンクしていたんですね。

井口「そうですね。二人がちゃんと会話するシーンも少なかったですし。でも、それがある意味すごく特別になっている。その少ない会話のシーンがこの作品ではとても大事なので。僕が話しかけづらい空気を出していたのかもしれないけど(笑)」

──深川さんは、伊藤監督とはどういうお話をされましたか?

深川「撮影前に“これをしてほしい”とか細かくは言われなかったと思います。アイドル時代の舞子との対比の部分だけ。エンディングで使われるアイドル時代の歌番組の映像は、“この映画の中で、舞子にとって人生の中で一番輝いていた瞬間を表してるシーンです”と言われたので、そこは本当に気合い入れなきゃと思ったんですけど。あとは撮影しながらリアルタイムでちょっとずつトーンとかを演出してくださって。伊藤さんはすごく丁寧にお芝居を見てくださるので、今のはちょっとあれだったかなって心の中で思う瞬間とかも、監督がOKだったらOKって。でも、そういう自分が納得いかなかったなっていう時、絶対に伊藤さんもNGを出すんですよ。“もう1回お願いします”って言ってくださるから、すごい信頼していました」

──井口さんは、伊藤監督作品は3作目となりますが、本作ではどういう想いで臨まれましたか?

井口「僕も伊藤さんも1作目、2作目とやり切ったっていうのはあったんですけど、わかりづらい内容ではあったので、“伝わらないメタファーは、メタファーじゃないよね”みたいな話はしていたんです。少しわかりやすいものを撮ろうっていうのが今回根底にあったテーマではあったので、見せ方だったり、お芝居だったり、画もそうですけど、“ちゃんと伝わる表現というのを意識しよう”っていう話はしていました」

──康太と舞子、それぞれの役について、演じる時に意識されたことはありましたか?

井口「僕はそもそもエゴがあまりないタイプなので、あの素敵な舞子が来てくれた、ただそれだけで演じていました。たぶん、深川さんもそうだと思ってたんですけど」

深川「そうですね。エゴはあまりあるタイプではないかもしれない」

井口「現場で一緒にやっていて、なんとなくお互い似てるのかなっていうのは思っていました」

──元アイドルという部分で、舞子にシンパシーを感じることはありませんでした?

深川「私自身、アイドルだったからこそ、元アイドルを演じるということに対しては、少し勇気が要りました。卒業してからもうかなり経っていますし、アイドル時代から応援してくれている方もきっとこの映画を観てくれるってなった時に、そこで夢を壊したくないとか、当時と比較してちょっと変わっちゃったなとか思われちゃうんじゃないかっていう、個人的な想いが片隅にあったので。監督の歌詞で、アイナちゃん(アイナ・ジ・エンド)が振り付けっていう、すごく素敵な曲が出来上がってきた時に、“これは本当に頑張らないと!”と思って気合も入りました」

──二人で向き合うシーンが多いですけど、お互いの演技を見ていて刺激を受けたことがあれば教えてください。

深川「井口さんって、本当に嘘がないんです。全部のシーンでちゃんと腑に落ちるところまで理解して、整理して、落とし込んでセリフを発する。それって、本当に思っていないと言えないことだから、実直だし、理想的な姿だなと思って。時間に追われる現場だったりすると大変な時もあるけど、(役を演じるというのは)やっぱりそうあるべきだなっていうのは本当に思いました」

井口「僕は今回、深川さんにだいぶ頼った部分があって。それは最後のほうのシーンで、舞子が独白して、康太がその言葉を受けて言葉を発するんですが、このシーンで僕は結構難航したんです。(舞子の)セリフを全部受けないと言えないみたいな。そこで5分ぐらいの長ゼリフを深川さんが何回も何回も言ってくれて、そのおかげで撮れたシーンだったんです」

深川「それで言うと、最後の警察官とのシーンも、舞子が見ている時って、こっち(康太たち)はカメラには映らないのにお芝居にお付き合いしてくださって、長い距離を走ってくださったんです。あそこで涙を流すっていうのは、想像だけだと結構キツいものがあったので、汗を流しながらずっと走ってくださって、私はとても助かりました。本当にありがとうございました」

人と人との対話の大事さが詰まった映画だと思っています

──本作は自分にとっての大切な存在について考えさせられる作品だと思います。そこで、お二人にとっての大切な存在だったり、これだけは大事にしていきたいと思っていることを教えていただけますか。

井口「さっき深川さんが僕のことを“嘘がない”と言ってくれたんですけど、僕自身、嘘がなく生きたいと思っていて。別に楽しくなかったら笑わなくていいし、怒りたかったら怒ればいいし。自分をなくさないような生き方、そこは自分にとって大事かもしれないです」

──変えたくない部分でもある。

井口「そうですね。無理して変な奇行に走ったんで……」

深川「無理したんですか?」

井口「(笑)いやいや、売れるためにちょっと頑張ろうみたいなことをしていた時期もあったので。今はなんていうか、素直に生きたいと思っています」

深川「私は楽しむということを大事にしたいなと思っています。どんな仕事でも、日常生活でも、なんかこう、ウウッてなることやクソッ!てなることがあっても、それを面白がっちゃえば乗り越えられるような気がしていて。あと、素敵な先輩を見ていると、皆さん本当に遊び心を忘れていなくて、仕事も趣味もすごく豊かな時間を過ごしている方が多いんです。だから、私も年齢を重ねていっても、面白いものにアンテナを張って、楽しむ気持ちに好奇心旺盛でいたいなって思います」

──では、ご自身の中で一番楽しんだでもいいですし、単純に好きでもいいので、そういうシーンを教えてください。

井口「いくつかありますけど、後半の回想でラジオを聴いているシーンがあるんです。あそこで、最初のほうに出ていた大学の待合室で舞子と康太がすれ違う。そこからの後半で、対話を積み重ねた上で、タイムスリップじゃないけど二人があの空間に一緒にいて、ラジオのアンサーをするみたいな、あのシーンがすごく好きで。すごく映画的な撮り方というか、もちろん原作にもないですし。ちょっとロマンチックで、美しくも描かれてるし、好きなシーンですね」

深川「私もいくつかあるんですけど、お茶のシーンが好きです。後半は結構緊迫した状況が続くんですけど、あそこはなんかホッとできる、やっと二人で笑えた感じがあるシーンだったので」

井口「すごくいいシーンですよね。初めて名前を覚えるシーンじゃないですか。舞子が一人のファンとして扱っていた男の名前を。そこはすごく心が通った瞬間だなって思うので、僕も好きだな」

──作品名にちなんだ質問も。“これは逃げなかった”という出来事があればお聞かせください。

井口「僕は、歯医者ですかね。ここ数年ずっと通っているんです。それで、フロスを勧められて使ってなかったんですけど、1年ぐらいフロスを毎日頑張ってやったら、素晴らしい。フロスは最高だなっていうことに、逃げないことによって気づきました」

深川「私は(作品が)完成した後の最初の試写会。すっごく苦手なんです。冷静に観られなくて、自分の粗探しをしちゃうし、関係者の方もたくさん来ているし。だから、歯を食いしばって観るんですけど、自分のシーンが近づいてくると本当にバクバクして……。それでも試写会に行ける時は逃げずに行って、バクバクと戦っています(笑)」

──最後に、公開を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。

井口「綺麗な長野で撮影をして、すごく綺麗な画が撮れましたし、深川さん、監督、チーム、キャストの方、皆さん素晴らしくて、お芝居もみんな自然な感じで風景に合っているし、内容も宣伝では「ファンと推し」みたいな形で打ち出してはいますけど、人と人との対話の大事さが詰まった映画だと思っているので、皆さんにもそこを観て、考えてくれたらなっていう気持ちです」

深川「まず、ユーモアが詰まった、大好きだなって思える作品に参加できたことが本当に嬉しいです。二人のこの逃亡劇はすごく喜劇ですが、最後に向けて、二人の間に生まれていたものって絶対あると思っていて。なんて言葉にしていいかわからないけど、絆のような、信頼のようなものがあると思っているので、皆さんが観終わった後に、自分の大切な人とかものとかを思い浮かべてくださったらとても嬉しいです」

画像: 人と人との対話の大事さが詰まった映画だと思っています

PROFILE

画像: PROFILE

井口 理 SATORU IGUCHI
(King Gnu)

1993年10月5日生まれ、長野県出身。
“King Gnu”でボーカルとキーボードを担当。2026年2月から開催したバンド史上最多都市最多公演15都市29公演を巡るツアー「King Gnu CEN+RAL Tour 2026」を完走。さらに、バンド10周年イヤーに向けて東阪ドームにてKing Gnu 10th Anniversary Opening Live ”KICKOFF”の開催が決定している。
近年はバンドだけでなく映画『国宝』(25/監督:李相日)での主題歌歌唱などソロでの活動も精力的に行う。
また俳優“井口理”としても活動し、2023年3月公開映画『ひとりぼっちじゃない』(企画・プロデュース:行定勲/監督:伊藤ちひろ)では映画初主演。他にも映画『劇場』(20/監督:行定勲)、『佐々木、イン、マイマイン』(20/監督:内山拓也)、ドラマ「MIU404」(20)、ドラマ「LOST10」(26)などに出演。

………………………………………………………………………………………………………………

画像: 井口 理 SATORU IGUCHI (King Gnu)

深川麻衣 MAI FUKAGAWA

1991年3月29日生まれ、静岡県出身。
2016年に乃木坂46を卒業し、俳優活動を本格的に始動。2018年、初主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ」(18/監督:今泉力哉)で第10回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞する。近年の主な出演作は、映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(23/監督:穐山茉由)、『嗤う蟲』(25/監督:城定秀夫)、『ぶぶ漬けどうどす」(25/監督:冨永昌敬)、『架空の犬と嘘をつく猫』(26/監督:森ガキ侑大)、『終点のあの子』(26/監督:吉田浩太)、ドラマ「週末旅の極意3〜結婚ってしなきゃいけないもの?〜」(26)、「Tokyo middle 30」(26)など。公開待機作は、映画『すべて真夜中の恋人たち』(2026年11月13日公開/監督:岨手由貴子)、『17才のプルーフ』(2027年2月19日公開/監督:宝来忠昭)。

作品紹介

画像1: 井口 理(King Gnu)× 深川麻衣:
映画『逃げろお嬢さん』インタビュー
画像2: 井口 理(King Gnu)× 深川麻衣:
映画『逃げろお嬢さん』インタビュー
画像3: 井口 理(King Gnu)× 深川麻衣:
映画『逃げろお嬢さん』インタビュー

『逃げろお嬢さん』

親の仕事を継ぎ、つつましやかに温泉宿を営む康太(井口理)。
いつもの日常の中、ある小道で前を走る車の様子がおかしい。
心配した康太が車を止めると、運転していたのは、高校時代から康太が推している元アイドル・鮎川舞子(深川麻衣)だった。
しかし、テレビのニュース速報では、舞子の夫が薬物で逮捕され、舞子は行方不明とテレビで見たばかり。
混乱する康太だったが、知らないふりをして、これまで康太の人生を照らし続けてくれた推しである舞子に、今自分ができることを全うしようと心に決める。

出演:井口 理(King Gnu) 深川麻衣
   浅香航大 河井青葉 田中偉登
原作:吉田修一「逃げろお嬢さん」(「逃亡小説集」所収・角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督・脚本:伊藤ちひろ
配給:NAKACHIKA
10月2日(金)全国公開

©2026 吉田修一/KADOKAWA/In Her Room

PRESENT:サイン入り色紙1名様

@BIGONEGIRLSをフォロー&リポストで
井口理さん・深川麻衣さんのサイン入り色紙を抽選でプレゼント

《サイン入り色紙応募方法》

<X(旧Twitter)>よりご応募ください。
①BIG ONE GIRLS公式アカウント @BIGONEGIRLSをフォロー
②X(旧Twitter)の「(下記の)該当ポスト」をリポスト
「井口理さん・深川麻衣さんのサイン入り色紙」

応募にはX(旧Twitter)への登録が必要となります。
「該当ポスト」のリポスト、引用リポスト、リプライのご投稿をしていただいた方のみ当選権利がございます。
当選者の決定前にフォローを解除されると抽選、選考の対象外となります。
記載メンション、#タグ、URLの変更・削除は抽選、選考の対象外となります。
プログラム等による自動投稿は抽選、選考の対象外とさせていただく場合があります。
当選した権利を第三者に対し譲渡・転売することはできません。
当選者には、DM(ダイレクトメッセージ)にてご連絡いたします。
賞品のお届け先は、日本国内に限らせていただきます。

[応募締切]
2026年10月9日(金)23:59まで

This article is a sponsored article by
''.