現在WOWOWにて放送・配信中の「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 −新米保護司・阿川佳代−」。原作は香川まさひとによる、罪を犯した「前科者」達の更生・社会復帰を目指し、彼らと向き合い奮闘していく保護司の姿を描いた社会派ヒューマンドラマだ。2022年1月28日には映画版の『前科者』(日活、WOWOWの共同配給)の全国公開が控えている。
罪を犯した者の更生を助ける保護司というボランティアに就く主人公・阿川佳代を演じるのは有村架純。有村演じる新人保護司が向き合い、その更生のために奮闘する“前科者”の1人でもある斉藤みどりを石橋静河が演じる。初共演となる二人にお互いの印象や役づくり、本作から感じたことを語ってもらった。
撮影/加藤 岳

――まずお互いの印象をお願いいたします。

有村「石橋さんは、凛とされているイメージです。私が一方的に石橋さんの出演作を観て一ファンだったので、石橋さんがみどり役と聞いた時に“やったー!” と、うれしく思いました。画面越しで観ていた 石橋さんは美しくて、可憐で、凛としている印象なのですが、自由さもある、そういったものを感じていました。撮影現場で実際にお会いしたら、静かに自分自身と向き合われている女優さんだなと思いました。 いい意味で普通といったら失礼かもしれませんが、まとっている空気が、“大丈夫だよ”という空気感で、 石橋さんにしかない空気感なんです。素敵だなと思いましたし、人に対するリスペクトがものすごく強い方だなと思いました」

画像1: 有村架純×石橋静河 『前科者』インタビュー

石橋「お会いする前はあらゆる場面で戦ってきているんだろうなと想像していました。いろんな人の思いに応えてこられて、懐が深い方なんだろうと、出演作を観て感じていました。それが滲み出ている感じがしていたので、共演させていただくとなった時にまったく心配がなくて、きっとドシっと構えてくださるから、ぶつかっていけばいいと思っていました。こんなにカワイイ方なのに、“さあこい!”、 という感じで! “行きます!”という気持ちにさせてくださるとてもカッコいい方でした」

――お互いが感じた俳優としての魅力をお願いいたします。

有村「気持ちで向かってくださるので、それに自分も同じように返したいなと思いますし、信頼してくれているんだなということを感じていましたので、相手の心をよくうかがったりとか芝居どうこうというよりも石橋さんの人間性にとても魅力を感じまして、それが役に投影されたりしているのかなと感じました。芯の強さとか。そこがとても魅力的です」

石橋「最初の共演シーンは、映画版の佳代(演:有村)とみどり(演:石橋)が少し衝突する場面でした。出会ってから3年経っている設定で、それまでの関係性を見せるにはどうしたらいいんだろうと撮影現場に入ったのですが、有村さんが、信頼しているからこその怒り、悲しみという感情をまっすぐポンッとぶつけてくださった気がして。そこからは大丈夫だと思えましたし、安心してみどりとして暴れることができました。有村さんが現場に入ると男女かかわらずスタッフの皆さんがポッと1℃くらいあがる感じがあって、共演者として、そういう方が作品の主演として真ん中に立っているというのは贅沢な経験をさせてもらっているのだなと思いました」

画像2: 有村架純×石橋静河 『前科者』インタビュー

――役づくりのためにこだわったことや意識したことを教えていただけますか?

有村「まずは原作を読ませていただいて、原作をリスペクトしながら私なりにインスピレーションを受けた新鮮なまま、近づきたいなと思いました。保護司に関わる資料などを読んで実際に罪を犯した人たちがどういった環境で育ってきたかや、その人たちのパーソナルな部分を資料で読みながら知っていくと、元々は被害者、それがちょっとしたことで加害者になってしまったという、誰もが被害者であり、加害者であるということを感じてどうしようもない気持ちになって、“佳代もきっとこんな気持ちなんだろうな”という気持ちになればなるほど佳代とすり合わせていくことができたので、資料を読んだり、調べたりすることが、自分も経験したような気持ちにさせてもらっていました。ちょうど撮影前に、刑務所にいる人たちが更生に向かうドキュメンタリー映画が上映されていたので、その映画も観ました。その作品に出ていた方たちも本作の登場人物同様に、人に愛されなかったり、親から虐待を受けていたり、過ごしてきた環境に問題を抱えていることも知れて、切なく悔しいそういった気持ちを抱えながら
撮影に臨みました」

石橋「私はビジュアルも普段の自分とはかけ離れていますし、歩き方、食べ方などちょっとした動作で境遇が見えてくるだろうなと思っていたので、まずはそこをどうするかということを考えました。ですが何よりも、前科者というレッテルを私が貼ってはいけない、それは社会が与えたもので、その人を演じるにはなんでそうなってしまったのか、この人の心に何があって、それがなんで罪を犯すということになってしまったのかを考えることが一番大事だと思っていました。その人の心の中にある穴、みどりの場合ならお母さんから愛されなかったということ、それがずっと残っていて、それは罪を犯そうが犯さまいが、みんなあることだと思うんです。子どもの頃の記憶として例えば親にすごく怒られたとか、ほかの兄弟よりも愛されていないとか、そういうものがある種自分の心の中では時が止まったままだから、解決しないまま歪みのような、大人になっても何か欠けている気持ちにつながっていってしまうんだなということに納得がいく瞬間があり、そこからは迷いがなくなり確信を得ました。それを踏まえた上で、動き方やしゃべり方などお芝居を意識するようにしました」

――岸監督の演出で、印象に残っていることを教えてください。

有村「役者のことを信頼しているんだろうなということを感じました。自分も信頼していただけているんだなと強く思いましたし、同じ目線で同じように考えて、一緒に苦しんでくださっていたからそう感じたんだと思います。本作では、テストせずに段取りだけして、もう本番でというスタイルでした。常に未完成さみたいなものを楽しんで撮っていらっしゃったので、自分も影響を受けて、とても楽しく過ごすことができました。佳代のことを撮影する度に、今の佳代は“可愛かったね”、“今の佳代は綺麗でした、美しかったです”と、カワイイと綺麗を使い分けて表現してくださったのですが、美しい、綺麗と言ってくださるのは、佳代の人間的な陰の部分が出た時に、“とても美しかったです”と言ってくださっていて、それが妙に照れ臭かったです(笑)。そういった表現をしてくださるのは岸監督だけだったので、とても印象に残っています」

画像3: 有村架純×石橋静河 『前科者』インタビュー

石橋「テストをしないで本番撮影をしていくということは事前に聞いていたので、緊張していましたが、役者を信頼していて、ここに居ていいんだと居場所をまず与えられるうれしさと、そこまで信頼されているから私には何ができるだろうというある種恐れにも代わるものが湧きました。そこまでの気持ちを持って託してくださることが単純にうれしかったですし、岸監督のOKが出るよう、思い切り演じました。どこか岸監督は不思議な雰囲気を持っている方だなと思いました。本作は、もちろんフィクションですし、書かれた脚本・台本をみんなで“ああしよう、こうしよう”と工夫して1つの世界を創り上げていくものですが、岸監督には到達するべき真実が見えているんだろうなと感じます。そこに向かって、全員が全力を注いでいくという、座組み全体が1つのうねりのようになって、作品に描かれるものを伝えるんだという意志が感じられました。そういう意味で楽しい現場でした」

画像4: 有村架純×石橋静河 『前科者』インタビュー

――本作の主人公・佳代が、新米保護司ということにちなんでご自身の新米時代に何か言葉をかけるとしましたら、どんな言葉をかけますか?

有村「結局自分自身と向き合うことをやめたら終わりだなと思っています。だから、自分自身と向き合うことは苦しいけれど、その分、気付きがあるから、ずっと向き合うことは続けて欲しいなと言いたいです」

石橋「新米の頃には恐れでいっぱいいっぱいになっていました。どういう風に見られるんだろう、何を言われるんだろうということで萎縮して硬くなっていたのですが、でもそれは始まりでしかなくて、そんなことを忘れてしまうくらい面白い人たちに出会えて、“あなたはどういう人なの?”と自分を見つめてそれを作品にしようとしてくださる方々がいることを知り、もっと信頼していいんだと思えるようになっていきました。“その先にものすごく広い世界が待っているよ。だからそんなに緊張しなくていいよ”と言ってあげたいです」

――さて、有村さん、本作では佳代が、さまざまな罪を犯した前科者と向き合い彼・彼女らの更生のために奮闘する姿が描かれていますが、共演されたキャストの方との中で印象に残っていることがありましたらお願いいたします。

有村「別の作品でも撮影で3カ月くらい、覚醒剤取締法違反で執行猶予となった田村多実子を演じた(古川)琴音ちゃんとご一緒させていただいたのですが、琴音ちゃんは芯がぶれなくて、チャーミングで可愛らしい女性なのですが
、自分自身と常に戦っている女優さんだなと
いう印象を受けて、とてもカッコよくて、尊敬の眼差しでした。その琴音ちゃんが、本作が今までで一番辛い役だと言っていたのが印象的で、その苦しみの中でもしっかり現場で演じられていた姿は素晴らしいなと思っていました」

――劇中には、佳代が保護観察対象者を向かい入れる際にお決まりのメニューでおもてなしをするシーンがありますが、ご自身がおもてなしされたら元気になれる食べものは何ですか?

有村「お寿司です」

――どんなネタがお好きですか?

有村「ウニや、赤身が好きです(笑)」

――石橋さんはいかがですか?

石橋「お米です、何杯でも(笑)」

――さらに劇中には、好きな食べものを先に食べるか、最後に食べるかというくだりが登場しますが、お二人はどちら派ですか?

有村「昔は後でしたけど、今は全然気にせず食べています。好きなタイミングで食べています」

石橋「難しいですね(笑)。最後にとっておきたいのですが、最後だとお腹がいっぱいになってしまう可能性もあるので、最初ではない、中盤くらいです」

――ありがとうございます。では、最後にメッセージをお願いいたします。

有村「本作は、希望と再生のお話なので、登場人物のそれぞれの成長を見守っていただきたいなと思います。私は保護司という役柄を演じた立場として、みんなを見守ってきた役どころで
すが、苦しみを共有することで救われることもあると、一人ひとりが抱えている悩みからどうか目を逸らさずに向き合っていただけたらうれしいです」

画像5: 有村架純×石橋静河 『前科者』インタビュー

石橋「今回、本作に関わることで犯罪者、前科者というレッテルを貼られてしまうことの葛藤や苦しみ、環境について、大いに考えることがありました。社会の中で生きていて、ニュースから得られる情報だけだと埋もれてしまうこと、想像の及ばないことなど、いろんな状況があるからこそ、生きていくことがより困難になってしまう方たちがたくさんいると知りました。本作ではそれぞれ間違いを犯した登場人物たちに、ただただ悪いというレッテルを貼ってしまうのではなく、それぞれがどういう人間なのかを見つめてもらえたらいいなと思います」

画像6: 有村架純×石橋静河 『前科者』インタビュー

PROFILE

有村架純 ARIMURA KASUMI
1993年2月13日生まれ、兵庫県出身。

石橋静河 ISHIBASHI SHIZUKA
1994年7月8日生まれ、東京都出身。

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 −新米保護司・阿川佳代−」

毎週土曜日夜10時30分 WOWOWプライムにて放送中
WOWOWオンデマンドにて放送同時配信
各話放送後、WOWOWオンデマンド、Amazon Prime Videoで見逃し配信

原作:香川まさひと・月島冬二「前科者」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載)
監督・編集:岸善幸 岡下慶仁
脚本:港岳彦
音楽:岩代太郎
出演:有村架純
   石橋静河 大東駿介 古川琴音
   柄本時生 大西信満 富田健太郎 橋本さとし
   徳永えり 秋山菜津子/宇野祥平 北村有起哉

©香川まさひと・月島冬二/小学館
©2021「WOWOW オリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」製作委員会

連続ドラマ版サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/zenkamono_drama/

映画『前科者』

出演:有村架純 磯村勇斗 若葉竜也 マキタスポーツ 石橋静河 北村有起哉 宇野祥平
リリー・フランキー 木村多江 /森田剛

監督・脚本・編集:岸善幸

2022年1月28日(金) 全国ロードショー

配給:日活・WOWOW

©2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

映画版サイト:https://zenkamono-movie.jp/

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