原作は2021年に第42回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の同名小説。「響け!ユーフォニアム」シリーズでお馴染みの書き手による、新時代の青春ストーリーが、注目の若手監督・井樫彩の手で映画化。
毒親のもとで生まれ育ち、人生を奪われてきた女子大生・宮田(南沙良)と江永(馬場ふみか)。ふたりがバイトするコンビニの同僚・堀口を演じる基が、優しく寄り添うような存在感を放つ。

撮影/久保田司
取材・文/佐久間裕子
スタイリスト/山本 隆司
ヘアメイク/大森創太

画像1: 毒親のもとで生まれ育ち、人生を奪われてきた3人の女子大学生を描く映画『愛されなくても別に』。三者三様の「不幸」の中で優しさが光るコンビニ店員を基俊介(IMP.)が好演!【インタビュー】

――今作への出演が決まったときの率直な心境はいかがでしたか?

とにかくびっくりして、「僕ですか!?」と思いました。僕を選んでくださったわけですから、「どこで何を見出してくださったのでしょうか?」と聞きたくなりました(笑)。そして僕はお芝居することが好きなので、短い間ではありましたが、同世代の活躍している方々とご一緒できる作品に参加できてすごくうれしかったです。

――原作も読まれたそうですね。

お話をいただいてすぐに原作を読んで、「これはとんでもない作品に出会ってしまったな」と思いました。「僕はこれからこの作品に参加するのか、どうなるのかな」と。そして脚本を読んだときに、映画として完成しているなと感じました。

――主人公・宮田陽彩と同じコンビニでバイトをしている堀口役です。どんな人物だと思って演じましたか?

矛盾しますが、自分とは似ていないはずなのに、似ているところがあるというか。堀口には掴めそうで掴めないところがあると僕は思いました。僕もファンの方に、「意外と自分の情報を出さないよね」と言われるんです。でもミステリアスな感じが表立って出ているわけではなくて。グループで何かやるときには、MCをすることが多いのですが、人に話を振る立場に回るので、自分のことを全然話さないんですよ。堀口も劇中では話を回す立ち位置だと思うんですね。そして自分から「オレって、こうなんだよね」という話をしない。そういう意味では、わかる部分もあるなって思いました。

――映画から得られる情報として、堀口は普通の大学生なのかなと。女子3人の境遇が強烈なので、堀口が出てくるとホッとできる存在だなと感じました。

そう言ってもらえてうれしいです。話の軸として、女性3人の三者三様しんどい家庭環境と境遇が描かれていくので、映画を観ると確かに堀口はよくいる大学生に見えますよね。コンビニでバイトをしている、陽キャの大学生なのかなって。でも原作を読み進めると、彼自身も葛藤を抱えているのがわかるんです。3人と違うのは、それをあまり表に出さないところで。普段は明るくおちゃらけているけれど、もしかしたら彼自身もひとりになったときに、襲いかかってくる不安みたいなものがあるのかなと思いました。そこが彼の悲しくも強い部分というか。堀口も悩みが全くないわけではない。だけどその部分を堀口自身はそこまでネガティブに捉えていない。僕もあまりネガティブな性格ではないので、そういうところも似ているなって思いました。

画像2: 毒親のもとで生まれ育ち、人生を奪われてきた3人の女子大学生を描く映画『愛されなくても別に』。三者三様の「不幸」の中で優しさが光るコンビニ店員を基俊介(IMP.)が好演!【インタビュー】
画像3: 毒親のもとで生まれ育ち、人生を奪われてきた3人の女子大学生を描く映画『愛されなくても別に』。三者三様の「不幸」の中で優しさが光るコンビニ店員を基俊介(IMP.)が好演!【インタビュー】

――原作と映画では違う印象になる人物なのかもですね。

原作を読んだ方からすると、堀口のその部分は映画では見えてこない部分だからこそ、鮮明に映る方もいるんじゃないかと思いました。そして映画で初めてこの作品に触れた方には明るくて、ちょっとアホで可愛らしいウザキャラに見えると思うんです。その上で原作を読んでみたら、「あいつ、こんな闇を抱えていたんだ……」って思うかも知れない。そんないろんな楽しみ方ができる不思議な登場人物だと思います。

――撮影中は原作に描かれている堀口の葛藤を意識しましたか?

「堀口はこういう人間だ」と思いつつ、抱えているものを出さないようにしました。むしろ出さない方がいいんじゃないかと思ったので。キャラクターとしては、映画をご覧になった方の第一印象で全然いいと。だから店員さんが待機しているロッカールームみたいなところで空気が読めないことをしたり、「だりー」みたいなことを言いながらダラダラ喋ったりする。そういうのは日常のよくあるワンシーンだし、「こういうヤツいるよな」って思われてもいいと思ったので、変に考え過ぎることなく演じました。それで自分の中にある堀口という人物を感じ取ってもらえるんじゃないかと。自分では堀口に求められている彼らしさみたいなものが出せたんじゃないかと思っています。

――井樫彩監督からはこういう風に演じて欲しいといったリクエストみたいなものはありましたか?

一切ありませんでした。本当に怖いぐらい何も言われずに撮影が終わりました。で、初号試写会にひとりで観に行って、終了後に監督に「その説はお世話になりました」とご挨拶しました。そのときにお話しして、「どうでしたか?」って聞いたら「良かったです」と言われました。撮影中も「どうですか?」「はい」みたいな感じだったので、もう信じるしかないと思って演じました。後でプロデューサーの方に、「実際どうだったんですか?」と聞いたら、「この間、監督と喋ったけど、求めていたものを出していただいて、本当にありがとうございますみたいなことをおっしゃっていた」と。にわかには信じられないんですけど(笑)、今は頑張ったと、「オレはこれで良かったんだ!」って思っています。

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