旅行記のモードを一時中止して、一昨日に会ったばかりのクリスチャン・ベールのお話に切り替えましょう。
新作「ザ・プロミス」(2017)は1915年、オットマン帝国時代のトルコ人のアルメニア人大虐殺を背景に3人の美男美女が繰り広げる大ロマンス時代劇です。今までハリウッドのメジャー映画はこのトルコの「ホロコースト」を全面的に描いたことがなかったそうで、その意味でも歴史的映画だと言われています。クリスチャンはアメリカの通信社の記者でパリに駐在、トルコで発生した事件を取材しにやってきます。

オスカー・アイザック扮するアルメニア人の医学生はトルコにやってきた、パリに住む美しいシャルロット・ルボンに恋心を抱きますが、実はシャルロットはクリスチャンの元恋人、そのうちトルコ軍がアルメニア人を滅ぼしにかかり、家族が住む村を襲ってきて、戦場を取材に来た記者のクリスが加わり、シャルロットと組んで避難民を助けるというのが、あらまし、です。

この日のクリスチャンは殊の外機嫌がよく、自分がいかにトルコあたりの歴史に無知だったか、山のように送られてきた資料はほとんど読まなかった、などと告白して、さすがのベテランスターの余裕を見せてました。

整った顔におひげもアクセントを添えて、スリムな体も健康的で、一時の「バットマン」オブセッションのような難しい態度も全く影を失せ、陽気で、気楽な面をしっかり見せてます。

英国人のジャーナリストたちがいつも不思議がるクリスチャンのアクセントについて聞いてみると
「ウェールズに生まれたけれどそれから英国に住み、長いことアメリカで暮らしているうちに自分の訛りが何なのか混乱してね。役を演じる時はしっかりとアメリカ人なり、英国人のアクセントを踏まえるけれど、プライベートでしゃべるときはその日の天気や気分によるんだ。英国時代劇で貴族など演じたことがないから、正式な英語には縁がないしね」とケラケラ笑いながら答えてましたが、後で英国人に聞くと「わざとロウアークラスのロンドンの若い人々のアクセントを使っているみたいだけれど、実際はエリートの学校に通って、アッパーなアクセントを話すはず」とアクセントで当人はおろか、両親の出身地まで判明してしまうという英国の根強いアクセント議論になったのでした。

1974年1月30日、英国はウェールズ生まれ、10歳から演劇を学び、「太陽の帝国」(1987)の主役に4000人の中から選ばれたのは知られています。

スターぶらないというより、スターとして周囲が反応することにもう慣れきってしまって、それが自然の環境のように対応する、という域に達したクリスチャンには、男っぽいエネルギーが溢れていて、年輪の渋みも少し加わって、とびきり魅力が増してきました。

今回はその時のスナップ写真を鬱陶しいほどたくさん載せてみました。彼のご機嫌の良さが覗けると思います。

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