『SHERLOCK/シャーロック』シーズン4の撮影真っ只中(インタビューは撮影の合間に行われた)だったので、役作りのためか、あまり馴染みのない無精髭を蓄え、ワイルドな雰囲気を醸し出してもいた。僕は習慣というか、個人的なルールとして、インタビューをする際はいつもインタビュアーに対して何らかの手土産を持って行くのだが、今回は日本で発売されているコミック『バイリンガル版 SHERLOCK 大いなるゲーム』を氏に手渡した。
丁寧に礼を述べてコミックを眺めた彼は「う〜ん、これを一番しっかり読まないといけないのは僕自身だね。役作りのために過去のことを勉強し直すためにね」と真面目に感想を述べてくれた。実は、同日マーティン・フリーマン氏にもインタビューをし、彼にも同じコミックをプレゼントしたのだが、彼の反応は「おぉ、ありがとう。他のインタビュアーの人達からは何がもらえるのか楽しみだな〜」と、持ち前の気の利いたジョークでその場を和ますものだった。この両者の対照的な反応はとても興味深く、カンバーバッチ氏のいい意味での生真面目さというか、仕事に対する真摯な姿勢が図らずも浮き彫りになったと思っている。
INTERVIEW
『SHERLOCK/シャーロック』におけるシャーロックとジョンの関係も、同じく対比が魅力なのだが、その辺りを氏に伺ってみた。
「凸凹コンビだよね。でも1つ共通項があるとすれば、それは“脅威を共有している”ということかな。つまり、犯人を追いかけるスリルや、尋常ではないエキサイティングな仕事を一緒にしている、ということだね。彼ら2人はリスクを負った人生を歩んでいる。そのリスクが裏目に出てしまうこともあるんだけど、それでも、彼らはチームを組んで一緒にその“脅威”に果敢に臨んでいるんだ」
シーズン4では役作りが特に難しかったという氏に見どころを聞くと、
「シーズン1が始まった時から、僕の関心はシャーロックがどのようにして今のシャーロックになったのかということだったんだ。だって、生まれつきあんな性質というのはなかなか考えにくいからね。それで、今回のシーズン4では、ついに彼の内面の軌跡が今までとは比べものにならないほど詳細に描かれることになる。そこが見どころだね」
ならば、シャーロックとジョンの関係がシャーロックの内面に及ぼす影響も描かれる?
「全シリーズを通して2人の関係はすごく綿密に考えられて組み立てられている。今シーズン、2人の関係がシャーロックの人間形成に与える影響というのは、もしかしたら(コナン・ドイルの)原作よりもしっかり描かれているかもしれないね。言い換えれば、彼らの特別な人間関係があるからこそ、このシリーズに欠かせないコメディ性や、2人の衝突シーン、そして人間ドラマが生まれるんだよね。そういう部分は、原作よりも優れていると思っているよ。もちろん、原作が素晴らしいことには変わりはないんだけど」
さて、氏は家族をとても大切にすることでも知られており、インタビューの際も、プライベートでの子供との時間がいかに大切かという言葉が何度となく聞かれた。
「家庭には仕事を持ち込まないように努力してるよ。僕にとって家庭は心から安らげる場所なんだ。家族に対しては一切手を抜かず接したいと思ってるからね。あと、幼児と接していると、人生の中で一番大切なことが何かに気付かされるし、責任感も湧いてくるんだ」
シーズン4では赤ちゃんが登場するが、それではシャーロックは赤ちゃんをどのように扱うのかを聞いてみた。
「実生活で僕自身が赤ちゃんを扱う感じとは随分違う。それしか言えないね(笑)」
シャーロックが(少なくとも目下の)彼の代表的キャラクターといっても過言ではないと思うが、今後演じてみたい役柄は?
「それは難しい質問だね。僕は“演じたい役柄リスト”みたいなものを特に持っているわけじゃない。仕事をオファーされたり、僕自身が偶然出会ったり、そういうサプライズが好きなんだよね。まあ、でも最近の考えとして、有名無名に関わらず、素晴らしい物語を発掘して、若手のクリエーター達と一緒に何かを作っていきたいという気持ちは強く持っているけどね」