01:「真夜中のパーティー」
ハリウッドが初めて真正面からゲイを描いた問題作
ゲイ仲間の誕生日パーティーの最中、ストレートの男が闖入したことから思わぬ彼らの本音が表面化していく緊迫感ある密室劇。もともとオフブロードウェイの舞台劇で、映画にも同じキャストが出演、ほとんどが実際にゲイだった。ハリウッド映画史上、初めてゲイを真正面から取り上げたパイオニア的作品であり、60年代後半という時代背景も重要な要素になっている。
The Boys in the Band(1970)
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:ケネス・ネルソン、ピーター・ホワイト
02:「ベニスに死す」
彫刻のような美しい少年に心を奪われる老教授
ふと見かけた美少年タジオに心奪われた作曲家アッシェンバッハが、疫病が迫るベニスの街でタジオを想いながら静かに死にゆく様を綴った不朽の名作。アッシェンバッハはタジオに声をかけることもなく、自らの想いに苦悩しつつも恍惚しながら果てるという文芸的で耽美的な作風は今もファンが多い。タジオ役のビョルン・アンドレセンの美しさはもはや伝説級。
Death in Venice(1971)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン
03:「ピンク・フラミンゴ」
悪趣味が持ち味の70年代カルト映画の代表作
“変態紳士”ジョン・ウォーターズ監督と巨漢のドラァグクィーン、ディヴァインのコンビによるカルトムービー。強烈な登場人物たちが「世界一下品なのは誰か」を競うという内容は、獣姦3Pやのぞき行為、食糞など、とことんお下劣&悪趣味。能天気な雰囲気で進んでいくものの、すべてガチなのがカルトな所以。ディヴァインはウォーターズ作品に5本出演。
Pink Flamingos( 1972)
監督:ジョン・ウォーターズ
出演:ディヴァイン、デーヴィッド・ロカリー
03:「ロッキー・ホラー・ショー」
観客が一緒に歌って踊ったカルト・ミュージカル
怪しげな古城に迷い込んだ新婚カップルのジャネット&ブラッド。そこではフランク・フルター博士や美しき人造人間ロッキーらが奇々怪々なパーティーの真っ最中。フランク・フルター博士はバイセクシャルでジャネットとブラッドのふたりとセックスして……。エロティックで毒々しい世界観がクセになるミュージカルで、現在も定期的に上映され、舞台化もされている人気作。
The Rocky Horror Picture Show( 1975)
監督:ジム・シャーマン
出演:ティム・カリー、スーザン・サランドン
04:「Mr.レディMr.マダム」
熟年ゲイ夫婦が繰り広げる大爆笑のお家騒動
中年ゲイカップルのひとり息子がお固い保守系党の政治家の娘と結婚することに。必死に“普通の”夫婦を演じようとするゲイカップルの姿が笑える仏=伊合作のコメディ。ゲイクラブの仲間たちや黒人のメイドなど個性的だけど気のいい人物ばかりで、“普通”と呼ばれる人たちと何が違うのかと考えさせられる面も。ロビン・ウィリアムズ主演の「バードケージ」はリメイク。
La cage aux folles( 1978)
監督:エドゥアール・モリナロ
出演:ウーゴ・トニャッツィ、ミシェル・セロ
1970年代その他のチェック作
これより以前の米映画界は表現規制が厳しく同性愛的描写も暗喩的に描かれ、『いま言われてみれば…』というものがほとんど(95年のドキュメンタリー「セルロイド・クローゼット」に詳しい)。
70年代にはニュージャーマン・シネマの旗手、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が「自由の代償」ほかでゲイを描き賞賛されたことが先駆的。またルキノ・ヴィスコンティ、ピエル・パオロ・パゾリーニら、ヨーロッパの巨匠たちが“芸術的”に同性愛を描くことで高い評価を得た。