「search/サーチ」
2018年10月26日公開
監督/アニーシュ・チャガンティー
出演/ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー
全編がPC画面上で展開するという斬新な映像手法を用い、新人監督の初長編作品ながら2018年度サンダンス映画祭で観客賞を受賞した新感覚サスペンス。謎の失踪を遂げた娘の行方を探すため、その父親が彼女のPCからSNSにアクセスし、娘の知られざる一面と事件の真相に迫っていく。主演は「スター・トレック」シリーズのジョン・チョー。監督はGoogle社でCM製作などに携わった27歳の新鋭アニーシュ・チャガンティー。
あらすじはこちらをご覧ください!
編集部レビュー
アイディアもいいけどストーリーの面白さに感心
ご存知のように推理ドラマというのは、犯人あるいは証拠はちゃんと“登場”していなければならないというのが鉄則。いきなり見たこともない人を連れて来て“この人が犯人で〜す”とやってはいけないのだ。ところがこの“登場”を、わざとらしくなく見せるのが難しい。その点、パソコン上で話が進むということは、動画やらプロフィール画面やらアルバム機能やら膨大な情報がごく自然に飛び交うわけで、これは上手いなあ。
と思ってたら、隣の座席の人が“あっ!”と声を上げた。なにか気がついたみたい。この顔、どっかのシーンに出てきたよね。あれ?どこだっけ…と、頭をひねりながら謎解きが楽しめるというのは、脚本がとてもよくできている証拠。やはりまずは話の出来ありき。そこ褒めたいです。付け加えると、決してエグくないので、ちょっと怖がりの人も大丈夫というのも。◎
レビュワー:近藤邦彦
編集長。LiLiCoさんと飲んだ時、この話を。『さすがにもう、と思ったのに粘るね〜』と。やっぱコメント上手いなあ。粘りをお楽しみに。
これは新たな映画言語の発見といえるかも
『PC画面だけで映画が成立するのか』という当初の懸念は冒頭5分できれいに消えた。主人公一家の過去が携帯画像などのモンタージュで語られ、物語への導入と独特な映像の解説が同時になされる。「カールじいさんの空飛ぶ家」を思わせる見事な幕開けだ。
PC画面を通して描かれるのは、行方不明の娘を探す父親の苦闘。驚くのはPC画面を見ているだけで主人公の感情が手に取るようにわかることだ。娘の別の顔を知った父の衝撃、真相にたどりつけない焦りが、マウスの動き、タイピングの仕方だけで伝わってくる。これは新たな映画言語の発見といえるかもしれない。
この超現代的な画面に感覚がなじむ頃には、絶妙な伏線回収や家族愛が絡む展開に唸らされる。ある意味この映像でできることはやりつくされている気がする。本作が“原点にして頂点”となるはずだ。
レビュワー:疋田周平
副編集長。本作の主演を最初「ハングオーバー!」の人と勘違いしていた私…。あちらはケン・チョン、こちらはジョン・チョーです。
地味にかっこいいジョン・チョーの姿に胸キュン
「スター・トレック」のスールー役でおなじみ、大きな耳がキュートな塩顔男子ジョン・チョー。飄々とした顔でジョークを飛ばす姿が面白くて昔から好きでした。
彼が演じるのは消えた娘の行方を追う父親。ちょっと「96時間」的幕開けですが、探し方がとにかく現代的で、SNSやメールから手がかりを探るうちに、全く知らない我が子の姿が明らかになるという展開がスリリングで面白い。
全編PC画面という大胆な手法で、父娘の微妙な関係性を文字の羅列やカーソルの点滅だけで見事に表現しているのもすごい!PC上のやりとりは、今や実際に交わす言葉以上にものを言うのかも。そんなことを感じさせる監督の演出力に、とにかく驚きでした!
リーアム・ニーソンみたいな派手さはないけど、最高にかっこいい父親っぷりを見せてくれたジョン・チョーに恋心再燃なのでした。
レビュワー:阿部知佐子
ジョン・チョー好きと言っておきながら実は見ていない作品がたくさん…。今からひとつひとつ彼の足跡をたどっていこうと思います。
地味と侮るなかれ
本作のストーリーの大半はパソコン画面、すなわち操作する父デビッドを通して語られます。そのため、与えられる情報もデビッド自身と同じ。マーゴットは果たして誘拐なのか、家出なのか、それとも…と見る側も想像を膨らませながら主人公と謎解きをすることになります。見える範囲が限られているので、物語がどういう方向に展開するのか全く読めず、最後までスクリーンに釘付けでした。
さらに驚きなのは、ちゃんと伏「スター・トレック」のスールー線が張られキッチリ回収される、という点。(当たり前なんだけどそれができていなくて、え〜っていう作品もたまにありますよね…)そう、私たちもしっかり手がかりを見ていたんです。もう、分かったときは目から鱗。
キャストなど地味目な作品なのでスルーされがちかもしれませんが、とても面白く、思わぬ掘り出し物感のある作品でした。
レビュワー:中久喜涼子
FB、インスタ、Tumblr等諸々のSNS、Youtubeに隠しカメラなども登場。こんなに“目”があることにも改めてビックリです。
もはや感動すら覚える“何が起きても画面越し!”
“娘が行方不明”というパーソナルな出来事が、警察やマスコミを巻き込んでのパブリックな事件に発展し……。全編がPC画面上で展開するといっても、終始部屋の中でPCと向き合っているわけではない。娘を探す父親という立場上、外出もするし移動もする(やたらと行動力がある)。それでも“意地でも画面越し”の姿勢を崩さないのが、この映画の新しくて面白いところだ。PC画面上に現れるカーソルも本作では重要なツール。点滅が心拍数とシンクロしているかのようで、不安や緊張感をあおるのに一役買っている。
映画の中で娘は現実とかけ離れた自分をSNSで発信しているが、全世界で24億8千万人いるといわれるSNSユーザーの中に真実はどれくらいあるのか。知ってほしいのは本当の自分?それとも偽りの自分?SNSの存在意義についても考えさせられた。
レビュワー:鈴木涼子
ふだん何気なく使っている“(笑)”がアメリカでは“haha”と表すことを、劇中のジョン・チョー親子のメールで学びました。haha
低予算でも知恵を絞った作り手の姿勢に好感
『映画全編がPC画面上で展開する』といわれると、同じシチュエーションのホラー映画「アンフレンデッド」(16)を思い出してしまい、ちょっと気が引けたが、今度は成功例。低予算でも知恵を絞って面白くしようとする作り手の姿勢が格段に違う。
よくよく考えると都合のいい展開を見せるところもあるのだが、娘の成長記録から始まり、主人公家族の構成がどう変化していったかもわからせる滑り出しで、観客を物語に入り込ませる語り口がナイス。そこから一気にサスペンスの核心になだれ込み、あとはクライマックスまでどんでん返しを含みながらぐいぐい進行していく脚本を基に、PC画面上でそれをどう的確に表現するか、演出を練りに練っているところに好感が持てる。ただお父さん(この人は若い方だけど)がPCやSNSに疎い世代だったら、物語が成立しない?
レビュワー:米崎明宏
監督はインド系米国人。「クレイジー・リッチ!」といい、ここでも非白人パワーがハリウッドを変えていく。