ロマの少年の本当の生活や関係性に基づいたリアルなストーリー
本作は南イタリアのカラブリアを舞台に、ロマの少年がたくましく生き抜く姿を生々しく描く超ドキュメンタリスティックなドラマ。
イタリアのラブリア州レッジョ・カラブリア県に位置するジョイア・タウロと呼ばれるコムーネ(=共同体)。そこにあるスラムと化したひとつの通り、チャンブラには大昔から差別を受け続けているロマという民族の一部の人たちが住んでいる。
ロマは元々、旅をしながら暮らす流浪の民だったが、異教徒と揶揄されるようになり、移動や行商の制限を受け、さらには生活、福祉、教育、仕事、医療といった生活に関わるあらゆることの迫害を受けたため、劣悪な環境にも関わらずチャンブラに定住せざるを得ない状況にある。まともな職に就けないロマたちの生活手段は、他人の物を盗み、それを売ることである。術はそれしかないのだ。
『チャンブラにて』を監督したジョナス・カルピニャーノも2011年、ジョイア・タウロに訪れた際、ロマから撮影機材一式が積まれた車を盗まれた。その捜索をしている折、カルピニャーノ監督は『チャンブラにて』で見事に主人公を務め上げた14歳のロマの少年、ピオ・アマートと彼の家族に出会い、ロマの非情な生活、ピオの逞しさを知り、愛情と称賛の念を抱くようになる。そして彼らの本当の生活、関係性に基づいたストーリーを描くことを決めた。
主に描かれているのはピオと家族、ロマの暮らしぶり。ピオよりも明らかに年下の少年ですらタバコを吸い、酒を飲み、車を運転し、博打をし、ダンスミュージックが流れるクラブで踊り、大人に混ざって高笑いをする。しかし、盗みをして、早く家族の役に立ちたいと大人ぶるピオに対し、祖父は見守り、父は厳しい目を向け、母は嘆き、兄は止め、叱る。そういった状況にもがくピオの様子がドキュメンタリスティックに捉えられていく。
演者のほぼ全員がチャンブラの生活者、つまり演技に関してはプロではない人たち。その自然な振る舞いに観る者は驚きと感動を覚えるはずだ。
チャンブラにて
2019年1月26日(土)より 新宿武蔵野館にてロードショー
配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
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