壮絶な麻薬戦争をリアルに描いたNetflixのオリジナル・シリーズ『ナルコス』の最新作『ナルコス:メキシコ編』で、DEA捜査官キキを演じるマイケル・ペーニャと、本作のクリエイター、エリック・ニューマンに直撃インタビュー。リアルな作品作りへの想いを聞いた。(文・幕田千宏)

麻薬組織のボス、ガジャルド役ディエゴ・ルナ
「麻薬戦争は様々な国や人間が関わるグローバルな問題なんだ」

DEA捜査官と麻薬密売組織の攻防を描く『ナルコス:メキシコ編』で、メキシコ麻薬組織のゴッドファーザーと呼ばれるグアダラハラ・カルテルのボス、ガジャルドを演じるディエゴ・ルナ。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の前日譚への主演が決まったその日に行われたインタビューで、喜びを爆発させつつ、『ナルコス:メキシコ編』について、真摯な想いを語ってくれた。

──実在する麻薬王を演じるにあたり、どのようなリサーチをしたのですか?

ディエゴ:
「ガジャルドについて書かれたものというのは本当にたくさんあるんだ。ちょうどこのドラマで描かれている10年というのはアメリカとメキシコの歴史においても重要な10年でもあって、いろんな事件が起こったし、ドキュメンタリーもある。

僕も当時はまだ子供だったけど、その頃のメキシコの雰囲気というのはよく覚えているし、参考にするものというのは有り余るほどあったんだ」

画像1: 麻薬組織のボス、ガジャルド役ディエゴ・ルナ 「麻薬戦争は様々な国や人間が関わるグローバルな問題なんだ」

──ガラルドを演じる上で難しかった事はありますか?

ディエゴ:
「ガジャルドはステレオタイプに当てはまる人物ではなかったところが、自分にとってはある種のチャレンジだった。

彼はもともと自分が属していない世界に帰属しようとしている人物で、多分目指していたのは政治家とビジネスマンの間くらいのものだったんじゃないかと思うんだけど、結果彼はメキシコの北部から大都市に出てきて、自分の帝国を築き上げていく。

その過程で彼は上流社会の人たちと交流をしていくんだけど、その時の写真を見ていると、彼らの一員であるかのように自分を作って振る舞っているのが見て取れるんだ。同時に彼は裏社会でお互いを殺し合おうとしていた人たちを一同に集めて、それぞれのテリトリーを繋げて単一の組織を作ろうと提案して説得に成功するわけだけど、それには彼自身に何かしら魅力がないと難しいよね。

僕は、ガジャルドは時代の先を行っていた人物だと思っているんだ。当時のメキシコは麻薬についてはそれぞれの生産者が独自にビジネスをしていたんだけど、それをまとめて中間業者である事をビジネスとして成立させたんだから。

そういうキレ者であると同時に背伸びをしているような彼の二面性を演じること、そしてシーズンを通して彼の物語にきちんと弧を描くような緩急をつけていく事を常に心がけて演じていたよ」

──警官から麻薬王へと上り詰めていく中で、ガジャルドも少しずつ変化していくと思うのですが、そうした変化をどう意識して演じたのでしょう?

ディエゴ:
「ガジャルドはいつも誰かのために働いているし、電話がかかってくれば必ず応えなくてはならない立場にあって、決して自分にとって最高の状態にあるわけではないんだ。彼の上にはいつも必ずボスがいるのは見ていても明らかで、だからこそ彼は決して満足をする瞬間がないし、常にトップを目指し、野心が止まる事もない。

状況を自分が掌握しているわけではないと理解している男で、コントロールできる立場を求めて続けている人物なんだと意識しながら演じていたよ」

──決してお手本になる好人物というわけではないですが、ガジャルドに共感する部分はありましたか?

ディエゴ:
「もちろん。演じる以上、どこかで共感できなきゃダメだからね。悪いヤツでも人間だから。演じる上で、白黒で判断するような二元的なアプローチをするのはすごく危険な事だし、例え演じるキャラクターが悪人であっても、僕自身が裁いてはいけないと思っているんだ。

彼らもまた一人の人間として、彼らなりの行動原理があるし、犯罪に手を染めてない人と同じようなものに心を動かされるものだから。

ただ彼らは僕や多くの人がきっと越えない一線を越えることができるという差なんだ。ガジャルドにしても、彼はたくさんの人の信頼を勝ち得る事に成功した人物で、その方法はいろいろあったと思うんだけど、その内のひとつは他人が彼に出会った時に信頼が持てる何か正直者のような側面があったんじゃないかと思っているんだ。

だって彼は知事の息子の子守り的な存在で、パパって呼ばれるくらいだったんだから。彼に何か資質がなければ、そんなふうに子供から信頼を得る事はできないよね」

──『ナルコス』シリーズは壮絶な麻薬戦争をリアルに描いていますが、ドラマの最大の魅力は何だと思いますか?

ディエゴ:
「この作品で描かれている麻薬戦争問題というのは、決してメキシコだけの問題じゃないと僕は思っているんだ。何かトラブルが起こった時、解決するためにはどうしてこういう事が起こったのかを考察しなければならないけど、この麻薬戦争については全てのレベルの権力、それもメキシコだけじゃなくアメリカも関わっていて、様々な人間が関わるグローバルなものなんだ。

今も続くメキシコの麻薬戦争には大きな暴力が絡んでいて、ここ12年で25万人以上も亡くなっているわけだけど、これがグローバルな問題だと気付いてもらった時に、世界の観客とこの作品が通じあえると思うんだ。

このシリーズが興味の引き金になるかもしれないし、Netflixのいいところは似たような作品がリコメンドされて、より興味を持ったテーマに深く入り込む事ができる。メキシコの問題だと思っていた事が実はグローバルな問題だと視点が変わるきっかけになればと思っているけど、それがこの作品の魅力にもなるんじゃないかな。

僕は『ナルコス』に限らず、自分が関わる作品はどのストーリーにおいても視点を変えるようなものであって欲しいと思っているんだ」

画像2: 麻薬組織のボス、ガジャルド役ディエゴ・ルナ 「麻薬戦争は様々な国や人間が関わるグローバルな問題なんだ」

「ナルコス:メキシコ編」
Netflixで独占配信中

コロンビアの麻薬戦争を描いたクライムサスペンス・シリーズ第2弾。今回は、1980年代のメキシコを舞台に、警官から転身しグアダラハラ・カルテルを築いたゴッドファーザー、ミゲル・ガジャルドと、彼を追うDEA捜査官キキ・カマレナを中心に、支配階級の腐敗や暴力の連鎖など、今なお続くメキシコの壮絶な麻薬戦争をリアルに描く。

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