“世界最悪の人道危機”が続く中東イエメンの映画がメインプログラム
今回は、昨年12月にようやく停戦合意が交わされながらも、2015年より激化した内戦の影響で“世界最悪の人道危機”が続く、中東“イエメン”の映画がメインプログラムとして取り上げられる。
内戦にまつわる2本のドキュメンタリー映画と、途上国だけが抱える問題ではなければ宗教や因習が原因とも限らない“児童婚”がテーマの劇映画を上映し、かつて「幸福のアラビア」と呼ばれたイエメンの光と影を見つめる。
イエメンは、映画が製作されること自体が極めて少なく、今回の上映は大変貴重な機会となる。また、トルコや南インド・ケーララ州から届いた新作映画のほか、本映画祭初のアメリカ映画も上映される予定だ。
開催概要と上映作品は以下の通り。
【開催概要】
【東 京】
会期 : 2019年3月16日(土)~3月22日(金)
会場 : 渋谷ユーロスペース
【名古屋】
会期 : 2019年3月30日(土)~4月5日(金)
会場 : 名古屋シネマテーク
【神 戸】
会期 : 2019年4月27日(土)~5月3日(金)
会場 : 神戸・元町映画館
主催 : イスラーム映画祭
【上映作品】
◆日本初公開◆
『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』(イエメン)
幼くして結婚したヌジュームは、ある朝家を飛び出して裁判所へ駆け込み、離婚したいと訴える。驚く判事を前に彼女は、歳のかけ離れた夫の暴力に耐える日々と、自分が嫁に出されるまでの経緯を語り始めるのだった…。
◇劇場初公開◇
『イエメン:子どもたちと戦争』(イエメン)
11歳のアフメド、8歳のリマ、9歳のユースフは、内戦下のイエメンに生きる人々の声を集め始める。彼らは負傷したり、親を失った子どもたちの他、画家やラッパー、SNSの人気モデルにもインタビューしてゆく…。
『気乗りのしない革命家』(イエメン)
アラブの春”を取材すべくイエメンに入った作者は、現地の観光ガイド、カイスと出会う。ビジネスに支障をきたし、反政府デモに懐疑的なカイスだったが、デモ隊に発砲する政府の姿や死傷者を見て考えを変えてゆく…。
◆日本初公開◆
『その手を離さないで』(トルコ)
シリアからトルコに逃れたものの、最愛の母も失い、シャンルウルファの孤児施設に引き取られたイーサ。彼はそこで同じ境遇のアフマドとモアタズに出会う。3人は各自の目的のため、街でティッシュ配りを始めるが…。
◆日本初公開◆
『ナイジェリアのスーダンさん』(インド)
地元サッカーチームのマネジャーを務めるマジード。ナイジェリアから招聘した選手サミュエルの活躍で彼のチームは快勝するが、ある日サミュエルは怪我を負ってしまい、マジードは自宅で彼の世話をすることになる…。
◆日本初公開◆
『イクロ2 わたしの宇宙(そら)』(インドネシア)
イクロ”とは、アラビア語起源の“読め”という命令形の動詞で、インドネシアではアラビア語でクルアーンを朗誦する練習方法を指す。祖父のもとでクルアーンを学んだアキラは、イスラームの誇りを胸に欧州へ旅立つ…。
◇劇場初公開◇
『乳牛たちのインティファーダ』(パレスチナ)
パレスチナのある町の人々が、それまでイスラエルから買うしかなかった牛乳を独自に生産しようと、18頭の乳牛を“合法的”に手に入れる。しかし、イスラエル当局は牛を“国家の脅威”と見なし、その摘発に乗り出す…。
『西ベイルート』(レバノン)
1975年。西ベイルート(ムスリム地区)に住むターレクは、東ベイルート(キリスト教徒地区)のフランス学校に通っていた。しかし内戦が始まり、両地区が遮断される。初めは戦争に昂揚感を覚えるターレクだったが…
『判決、ふたつの希望』(レバノン)※2017年大ヒット作
ある日パレスチナ人のヤーセルとレバノン人のトニーが、住宅の補修をめぐって諍いを起こす。トニーの放った“侮蔑”は2人の対立を決定的にし、法廷に持ち込まれた決着はやがて国を巻き込む大騒乱へと発展してゆく…。
『僕たちのキックオフ』(クルディスタン=イラク)
イラク北部の都市キルクーク。家を失ったクルド人たちは、スタジアムの中で暮らしていた。ヒリンに淡い恋心を抱くクルド人青年のアスーは、地雷で片足を失った弟のため、民族対抗の少年サッカー大会を計画するが…。
『二番目の妻』(オーストリア)
トルコから欧州に移り住んで半世紀。クルド人一家の女主ファトマは、故郷の伝統を守りながら、夫や子どもたちとともにウィーンで暮らしていた。そんな彼女の息子のもとへ、東トルコの村からアイシェが嫁いでくる…。
『幸せのアレンジ』(アメリカ)
N.Y.のブルックリン。同じ学校の新任教師として出会った、ユダヤ教徒のラヘルとムスリマのナシーラは、ある授業をきっかけに友人関係になる。そして2人には、“お見合い結婚”を控えているという共通点があった…。