2019年アカデミー賞®アイスランド代表作品に選出されるなど、現在も多くの映画祭を席巻中の『たちあがる女』が2019年3月9日(土)よりYEBISUGARDEN CINEMAほかにて全国順次公開中。このたびベネディクト・エルリングソン監督へのインタビューが実現した。
画像: 映画『たちあがる女』予告編・3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか公開 www.youtube.com

映画『たちあがる女』予告編・3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか公開

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画像1: アカデミー賞アイスランド代表作品『たちあがる女』監督が『2人の戦う女性からインスパイアを得た』物語を語る
画像2: アカデミー賞アイスランド代表作品『たちあがる女』監督が『2人の戦う女性からインスパイアを得た』物語を語る

『アメリカにこそ、今この映画が必要だと思います』

『たちあがる女』はコーラス講師と環境活動家、二つの顔を持つ女性ハットラが、新しい家族を迎え入れ、母親になる決意をしたことから巻き起こる騒動をユーモラスに描くヒューマンドラマ。北欧らしいとぼけた笑いもまじえながら、いまの人間社会において見逃してはいけない問題を皮肉たっぷりに浮かび上がらせていく。

本作は二度のオス力一に輝く、ジョディ・フォスター監督・主演でハリウッドリメイクされることも話題。ベネディクト・エルリングソン監督は、アキ・カウリスマキや口イ・アンダーソンの後に続く新たな北欧の才能と目されている。

——前作『馬馬と人間たち』と『たちあがる女』は共に、アイスランドの自然を舞台に、人間の根本的な愚かさや失敗を物語の源にして、それをコメディドラマ仕立てにしています。本作のテーマを教えてください。

『私にとって、“自然の権利”は“人権”と同じレベルで考えなくてはいけない問題で、それは二つの作品に共通するテーマです。もし私たちが、人間の利益のために汚れなき自然を傷めつけて利用したいならば、きちんとしたプロセスを踏むことが必要になるでしょう。この社会には「政府」という奇妙なパラドックスが存在しています。政府は民主主義の国々で民衆によって、民衆のために作られたはずですが、いとも簡単に操作されてしまいます。私たちが直面している環境問題や今起きている事態を鑑みれば、これは一点の曇りもない真実だと分かるでしょう。私の住む小さな国や私の映画がそうであるように、それはコメディーを生み出す良い土壌にもなりうると思いますが、多くの国々ではただの悲劇的な事態だといえるでしょう。本作は「長靴下のピッピ」やギリシャ神話の神など、たくさんの本から影響を受けていますが、実在する2人の戦う女性からもインスパイアされています。ホンジュラスのベルタ・カセレスとコロンビアのヨランダ・マトゥラーナです。2人とも環境活動家ですが、彼女たちが命がけで守ろうとした土地が生み出す利益に関わる闇の力によって殺されてしまいました。国によっては、国家権力が自然を破壊する勢力ために積極的に力を貸しているようにさえ思えます。そうなると、地球を守るために活動している環境主義者が、国家の敵になるという皮肉な状況に陥ってしまいます』

——主演女優のハルドラ・ゲイルハルズドッティルはどのようにキャスティングしたのですか?
『ハットラのキャスティングは長く険しい道のりでした。ハルドラは子どもの頃からの友人であり、仕事仲間です。職業的には、私たちは兄弟のように育ち、彼女は私の姉のような存在です。私たちが10歳か11歳の頃にナショナル・シアターの大きな舞台で一緒に活動し始めました。「たちあがる女」の創作過程のだいぶ早い段階で、私はハルドラがハットラを演じるというヴィジョンを少し持っていました。そしてまた、脚本にある双子のコンセプトのことも考慮せねばならず、そこは、確実に自然に感じられるよう描きたかった部分でした。俳優として、彼女は自然体であり、幅広い才能を彼女は持っています。アイスランドの劇場では私たちの世代にとって、彼女は本物の女優でした』

——ハットラはタフで力強い女性として描かれていますが、アイスランドでは普通ですか?

『周りの女性がみんなパワフルです。祖母、母、元彼女、妻、みんな強くて自立しているから、それが当たり前だと思います。アイスランドでは、ハットラのようなタイプの女性は普通。だから女性を主人公にするストーリーを描く上で、ハットラができあがったのは、ごく自然な流れでした』

——アメリカ版リメイクが制作されることについてはどう思いますか? どんな事を期待しますか?

『ワイオミングやウタなど、アメリカにも美しい自然がたくさんあるからそこは問題ないと思います。ジョディは素晴らしい女優で、彼女がこのミッションを引き継いでくれることを非常に嬉しく思います。アメリカにこそ、今この映画が必要だと思います』

——ジョディ・フォスターになにかリクエストしましたか?

『彼女が新しい制作者で、彼女がやりたいようにやる権利があると思います』

——前作で来日していますが、その時の日本の印象はどんなものでしたか。

『違う惑星のようだったよ、宇宙船にいるような感じ。そして人々はみんな礼儀正しかった』

——日本のような自然に囲まれていない国での生活は考えられますか?

『想像するのが難しいです。日本では小さな公園がたくさんあって、それがオアシスみたいで、また街にとっての肺みたいに感じました。ニューヨークでは、街の中心にあるセントラルパークが肺だけど、日本ではそれが小さく散らばってるような感じがします。自然が全然なかったら僕はおかしくなっちゃうと思います(笑)』

——日本ファンにメッセージを!

『とにかく楽しんでほしい。私たちが自然と環境を守ることができる最後の世代ですから』

たちあがる女
2019年3月9日(土)YEBISUGARDEN CINEMAほか全国順次公開
配給:トランスフォーマー
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