「木枯らし紋次郎」や「まむしの兄弟」シリーズなど、50 年以上に渡り数々の娯楽大作を世に送り出してきた中島貞夫監督が20年ぶりとなる長編時代劇『多十郎殉愛記』を完成させた。今作で主演を務めた高良健吾に、中島監督の現場で感じたことや時代劇の面白さ、更に最近のオススメ映画などを聞いた。

【ストーリー】

幕末の京都。親の残した借金から逃げるように脱藩して上洛した長州脱藩浪人・清川多十郎(高良健吾)。大義も夢もなく日々を無為に過ごす多十郎は好意を寄せるおとよ(多部未華子)の想いに気づかない。新撰組による取り締まりが強まる中、腹違いの弟・数馬(木村了)も脱藩し、兄の元へとやってくる。その頃、町方からの注進で多十郎の存在を知った京都見廻組は、新撰組に先んじて手柄を立てようと多十郎の捕縛に動き出す。すべてを捨てた男、そんな男を愛した女、慕っていた兄を追う弟、それぞれの想いを胸に、見廻組との死闘が繰り広げられる。果たして3人の運命は―。

画像: 【ストーリー】

多十郎は無意味に人を斬らない

ーー“殺陣の魅力を存分に見てもらうこと”をコンセプトに制作された今作ですが、どのような殺陣の稽古をされたのでしょうか?

「刀の振り方や足さばき、人が斬りかかってきたときのパターンなど、基本的なことだけを稽古で教えて頂いて練習していきました。なぜ基本的なことだけかというと、今作の殺陣は決まった手の事前練習がなくて、現場で何十手もつけてもらって、それを覚えて本番に挑むというスタイルだったからです。完全に覚える前に本番が始まるので、途中で“次はどっちから斬ってくるんだっけ?”とわからなくなってしまう。でもその緊張感こそが“命のやりとり”にリアリティをもたらすというか。ただ、基本ができてないと応用がきかないので、稽古でしっかりと基本を教えて頂いて撮影に挑みました」

ーー本格的な時代劇に挑戦されている高良さんが新鮮でした。時代劇に対してどのようなイメージを持っていましたか?

「日本で一番最初に撮られた映画は時代劇と言われているので、今作のような本格的な時代劇を京都・太秦で撮影できたことは本当に嬉しかったです。今まで役者という仕事に携わってきた者としては、ただただラッキーだなと。30代を迎えて最初の主演作が『多十郎殉愛記』というのは光栄ですし、とにかく“自分はラッキーだったな”という一言に尽きます」

画像1: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

ーー50年以上も映画を撮り続けている中島貞夫監督の現場はいかがでしたか?

「殺陣に関する監督の演出がとてもわかりやすかったです。殺陣というのは人と人が斬り合うシーンを成立させるためのお芝居だと思うんですけど、多十郎に関して言えば、自分が走る道をあけるために人を散らすとか、大切な人を守るために時間稼ぎをするためのひと振りだったりするんです。だからもの凄い数の敵に囲まれても無意味に人を斬らない。あと、敵に追われているときは走って逃げ続けるので、ちゃんと休憩できる場所を確保するとか、竹林の中ではとにかく進行方向を気にしていればいいとか、それぞれの動きや場所にちゃんと意味があって、それは中島監督が長年こだわって作品作りをされてきた証なのかなと思いました。“ひと太刀ひと太刀にドラマがあるべきだ”という監督の言葉にもとても重みを感じました」

ーー多十郎を演じたことで何か発見できたことはありますか?

「多十郎というよりは、やはり中島監督とご一緒できたことが自分にとっては大きくて、監督は84歳までこの世界で生きてこられて、そこまで映画というものに情熱を注げる人生というのは男として羨ましいなと。これまで色んな苦労や大変なことを経験されていると思いますけど、それでも今も現役で映画を作り続けていることは紛れもない事実なんですよね。多十郎を演じてみてというよりは、監督と一緒にお仕事ができたことが貴重な経験でしたし、感謝しかないです」

ーー高良さんもこれからずっと映画に人生を注いでいきたいと改めて思われたのでは?

「すっと続けていけたら最高ですけど、まだいまの僕にはそういったことは言えないです。口で言えるほど簡単なことじゃないと思うので、まずは目の前のことをしっかりとやっていかないとと思っています」

画像2: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

ーー今作を経て、時代劇の面白さをどんなところに感じましたか?

「日本人として一番しっくりくるのが時代劇の面白さなんじゃないかなと。日本で映画作りに携わっている人ならば一番守っていかなきゃいけないジャンルだと思うんです。子供って木の棒を持ったらチャンバラっぽいことをやり始めると思うんですけど(笑)、それはもしかしたら侍や武士の血を代々受け継いでいるのかもしれないですよね。だからこそ子供からお年寄りまで多くの方に『多十郎殉愛記』をご覧頂いて、殺陣のシーンを楽しんでもらえたらいいなと思います」

画像1: 多十郎は無意味に人を斬らない
画像3: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

ーーここからはSCREEN ONLINE読者のために高良さんの最近オススメの映画などをお聞きしていきたいのですが、まずは昔から大好きな映画を教えて頂けますか?

「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが大好きで、最近3作とも見直したんですけど改めて最高だなと思いました。お客さんを喜ばせようとか楽しませようという制作陣の想いがもの凄く伝わってきますし、真のエンターテイメント作品ですよね。1作目が公開されたのは1985年ですけど、当時は2015年にああいう世界になっていると思って作っていて、でも今は2019年で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の未来より先に来てしまったというのも感慨深いです」

ーー最近ご覧になった中でオススメの映画も教えて頂けますか。

「去年観た『ビューティフル・デイ』と『ウィンド・リバー』が良かったのでオススメです。どちらも人の心をえぐってくるような映画ですけど、ちゃんとメッセージがあって、何かを考えるきっかけをくれるところも好きです。『ビューティフル・デイ』はジョニー・グリーンウッドが手掛けた音楽がカッコイイうえに悲惨なシーンの描写も上手くて、幼い女の子が権力者に酷いことをされる場面でその子が数字を数えているんですけど、それだけで彼女の心が壊れてしまったことが伝わってくるんです。具体的に説明しなくても、ああいう見せ方で女の子の苦しみを表現できるというのは凄いなと思いました」

ーーでは最後に好きなハリウッドスターを教えて頂けますか。

「ホアキン・フェニックスが好きで、彼が出演している作品はほとんど観ています。5月公開のガス・ヴァン・サント監督の『ドント・ウォーリー』も楽しみですし、先ほどお話しした『ビューティフル・デイ』や『インヒアレント・ヴァイス』、『her/世界でひとつの彼女』が好きです。あと『容疑者、ホアキン・フェニックス』も面白かったです。『容疑者、ホアキン・フェニックス』は最初ヒップホップアーティストに転向すると嘘をついてこの映画を撮っていますからね。最高ですよ(笑)。

それに『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレックが監督というのも驚きでした。ふざけたことをやれちゃう人達なんだなと思って(笑)。ちなみに『マンチェスター・バイ・ザ・シー』もオススメです。他にはハビエル・バルデムやベニチオ・デル・トロも好きです。ハリウッド映画やスターの話をし出すと止まらなくなってしまうので、また次の機会にもっと色々な作品を紹介させてください(笑)」

画像4: Photo by Tsukasa Kubota

Photo by Tsukasa Kubota

(インタビュアー・文/奥村百恵)

画像2: 多十郎は無意味に人を斬らない

『多十郎殉愛記』
2019年4月12日(金)より全国ロードショー
監督:中島貞夫
脚本:中島貞夫 谷 慶子
監督補佐:熊切和嘉
出演:高良健吾 多部未華子木村了 寺島 進
配給:東映/よしもとクリエイティブ・エージェンシー
©「多十郎殉愛記」製作委員会

画像: 4月12日公開 映画『多十郎殉愛記』予告編 youtu.be

4月12日公開 映画『多十郎殉愛記』予告編

youtu.be
コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.