LA在住の映画ジャーナリストとして活躍中の筆者が、“SCREEN”のインタビューなどで毎月たくさんのスターに会っている時に、彼らの思わぬ素顔を垣間見ることがあります。誰もが知りたい人気者たちの意外な面を毎月一人ずつお教えする興味シンシンのコーナーです。今回は2019年のオスカー主演女優賞をダークホースで受賞したオリヴィア・コールマンをピックアップ。

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて38年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

主役を食ってしまう脇役が得意ということで知られていた英国実力派女優

今年のオスカー主演女優賞をダークホースで受賞したオリヴィア・コールマン、壇上では全く予期してなかったとあたふたとした反応を見せて新鮮だったが、実際誰も7回目候補のグレン・クローズを破るとは考えもしなかったはず。

庶民的なおばさんの雰囲気を漂わせるオリヴィアはもともと喜劇出身で日本でおなじみのサイモン・ペグ主演の「ホット・ファズ」(2007)にドリス・サッチャーという名前の警官役で顔を出している。名門ケンブリッジ大の演劇科出身故に諸々の舞台劇を経て、テレビの喜劇もので評判となり、メリル・ストリープが英国首相のサッチャーを演じてオスカー主演賞を受賞した「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」(2011)では彼女の娘のキャロルを演じているし、人気テレビシリーズ「ブロードチャーチ」(2013〜2017)では身なりを構わないおばさん刑事を好演、「ロブスター」(2015)の不思議な組織の女ボス役から、「オリエント急行殺人事件」(2017)ではジュディ・デンチ扮する貴族のコンパニオン役、TV「ナイト・マネジャー」(2016)では英国諜報組織のエージェント役と今まではほとんどが脇役に徹して、主役を食うことで知られた女優だったのである。

そして「ロブスター」の監督、ヨルゴス・ランティモスから「女王陛下のお気に入り」の主役を演じて欲しいという依頼が飛び込んで来たと言う。

ロンドンの会見でのオリヴィアはよく笑い、正直で、気さくな人柄を見せ、着ている黒のドレスがとてもシックだと言うと「あーら、嬉しい。借り物だけれど、もらっちゃおうかしらん。黒が大好きだし」などと全く飾らない態度が心地よかった。

レイチェルやエマとのラブシーンはくすくす笑いっぱなしだったわ

画像: 「女王陛下のお気に入り」

「女王陛下のお気に入り」

ーーアン女王の存在を知っていましたか?

「ゼーンゼン!(笑)全く知らなかった。当人に聞くすべもないし(笑)歴史の時間に学ぶような女王ではなかったし、もっと勉強家の友人たちでさえ知らないと言っているぐらい。あんなに面白い性格を持って、ユニークな生き方をしたのにねえ。もし彼女のことを学校で教えたら生徒たちは異常な興味を持って聞いたでしょうに!

アンのレズビアン嗜好はしっかりと確証されているのですよ。残っているラブレターには、恥ずかしくなるぐらいストレートな表現でサラ・チャーチル(レイチェル・ワイズ)に恋をしている想いを吐露しているし、その上に、夫にも恋していたと告げる手紙もあって、女性も男性も構わずに、一緒に居て、仲良くしてくれる人に情を注いでしまう性格みたいね。史実でも彼女の宮廷での女性に対する特別な態度や特定の女性と異常に親しかったという行状が残っているそうだし。

おまけに17人も子供を産んで全員が死んでしまったという想像を絶する悲劇を経験したら、かたわらの女性に同情を求めるのは当然。特にレディ・サラに対して本気で恋していたのは事実なのですって」

ーーレイチェル・ワイズとエマ・ストーンとのベッドシーンはいかがでしたか。

「ふたりとも大変な美女でしょう。恥ずかしいったらなかったけれど、リハーサルの時にすごく親しくなったから本番の時はくすくす笑いっぱなし。レイチェルにキッスするなんて素晴らしいチャンスだったし(笑)リハーサルなしだったら固まってしまったでしょうね。はい、スカートの中に手を入れて、それから胸に顔を寄せて、なんて振り付けされて、かなりヤバイ撮影だったけれど映画の中では重要な場面だからチームワークでやり遂げましたよ」

目下人気テレビシリーズ「ザ・クラウン2」で、今度は現存のエリザベス女王の役を熱演中である。

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