コンビニの24時間営業問題も連想させる“働き方”がテーマ
2016年のカンヌ国際映画祭にて、最高賞パルムドールを受賞した『わたしは、ダニエル・ブレイク』を最後に映画界からの引退を表明していた、イギリスを代表する名匠ケン・ローチ監督。監督が引退宣言を撤回してまで、本作『Sorry We Missed You(原題)』で描きたかったのは、時代の波に翻弄される「現代の家族の姿」だ。
舞台はイギリス北東部のニューカッスル。父リッキーはマイホーム購入を夢みて、大手配送業者のフランチャイズの下請けドライバーとして働き出す。母アビーはホームヘルパーとして朝から晩まで働く毎日。家族で過ごす時間が減っていく中で、息子セブと娘ジェーンは寂しさを募らせてゆく…。
これまで労働者や社会的弱者に寄り添い、彼らを取り巻く現実とそれでも明日を懸命に生きようとする人々を描き続けてきたケン・ローチ監督。本作では理不尽なシステムによる過酷な労働の中で、社会の下層から這い上がれない家族を通し、現代社会への「怒り」を描いている。
「働き方」という点で、日本のコンビニエンスストアの24時間営業問題なども連想させ、私たち日本人にとっても他人事ではないテーマが描かれている。
第72回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門にノミネートされ、『麦の穂を揺らす風』、『わたしは、ダニエル・ブレイク』に続き、3度目の最高賞パルムドール受賞も囁かれている。
グローバル経済が加速する中で、変わっていく“人々の働き方”。社会派の巨匠ケン・ローチはそこに何を見ているのか?そして美しく力強い家族の絆を通して描く、現代社会へのメッセージとは?世界が注目する最新作が誕生した。
Sorry We Missed You(原題)
2019年12月13日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:ロングライド
photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019