彗星の如く現れた中国の若き鬼才ビー・ガン監督作品
本作は2018年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で初上映された後、トロント国際映画祭、サンセバスチャン国際映画祭、ニューヨーク映画祭など、世界の名だたる映画祭で絶賛され、中華圏映画のアカデミー賞とされる金馬奨でも撮影・音楽・音響の3部門を受賞。中国本土での興行では、近年のアート系映画の成功例と言われたジャ・ジャンクー監督の『帰れない二人』の10億円を遥かに凌ぐ41億円の大ヒットを記録。さらにアメリカでも、現在まで20週を超えて続映されており、今年公
開の中国映画としては異例のロングランヒットとなっている話題作だ。
物語は、主人公ルオ・ホンウが、何年もの間距離を置いてきた故郷・凱里(かいり)へ、父の死を機に帰還するところから始まる。そこでは幼馴染・白猫の死を思い起こすと同時に、彼の心をずっと捉えて離れることのなかった、ある女のイメージが付き纏った。彼女は自分の名前を、香港の有名女優と同じワン・チーウェンだと言った。ルオはその女の面影を追って、現実と記憶と夢が交錯するミステリアスな旅に出る……
本作の見どころは、何と言っても後半部分に仕掛けられた、映画史上初とも言える「上映の途中から展開される3Dのワンシークエンスショット」という演出だ。物語の中盤で劇中の主人公が映画館に入り、現実と記憶と夢が交錯する世界に入ると同時に、観客も3Dメガネを装着しそれを追体験できる。それはビー・ガン監督独自の詩的で美しい映像表現と深く結びつき、これまでの3D映画でも決して味わえなかった、未知の映像体験と世界観が広がっている。
中華圏を代表する豪華なキャスティングも見のがせない。自分の過去を辿り迷宮の世界を彷徨う男を演じるのは、『長恨歌』のファン・ジエ。主人公を翻弄する運命の女を演じるのは『ラスト、コーション/ 色・戒』のタン・ウェイ。また、キーパーソンとなる二人の女性をシルヴィア・チャンが演じている。
なお本作に合わせ、これまで未公開だったビー・ガン監督の長編デビュー作『凱里ブルース』も、2020年4月にシアター・イメージフォーラム他での公開が決定している。新旧2作品の公開を記念して、“Begun, Bi Gan”と題したキャンペーン動画も公開されている。
ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ
2020年2月28日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
配給:リアリーライクフィルムズ
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