「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」とは?
モダンホラーの帝王と称されるスティーヴン・キングのベストセラー小説を映画化し、ホラー映画として全米歴代1位の興行収入を記録した2017年の「IT/イット“それ”が見えたら、終わり。」の続編にして完結編。前作から27年後を舞台に、“IT=それ”から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちの再会と新たなる恐怖を描く。
27年後の主人公ビル役を「X-MEN」シリーズのジェームズ・マカヴォイ、ベバリー役を「インターステラー」のジェシカ・チャステーンが演じ、前作の子役たちも回想シーンで登場。IT=ペニーワイズ役でビル・スカルスガルドが続投。監督は前作に続きアンディ・ムスキエティが務める。アメリカを含む世界64か国で初登場1位のヒットを記録。
\「IT」ここがスゴイ/
- “ホラー”の枠組みに収まらない
ホラー映画ではあるものの、同じスティーヴン・キング原作の「スタンド・バイ・ミー」を思わせる少年少女の青春映画としての魅力もあり、その物語は切なく胸を締め付ける。 - トラウマ的ドッキリシーンが満載
相手に応じて自在に姿を変える神出鬼没の“IT(ペニーワイズ)”の恐怖はまさにトラウマもの。合間にはホッコリさせる笑いも織り込まれ、ギャップによって怖さも倍増! - キャストが個性を絶妙に表現
個性豊かなルーザーズ・クラブの7人には、それぞれに絶妙な“はまり役”の俳優をキャスティング。この多様性が誰もがどこかで自分の現在、および思い出と重ねる“共感”を生む。
オープニングから予想の先を行く展開へ
ホラー映画は苦手な人も多く、一部のファンのもの。そんな「常識」を覆して、2年前、予想外のヒットを記録したのが、「IT/イット〝それ〞が見えたら、終わり。」だった。スティーヴン・キング原作というメジャー感はあるものの、大スターが出演しているわけではない。
それでもアメリカだけでなく、日本でも多くの観客を集めたのは、殺人ピエロ、ペニーワイズの強烈なキャラクターはもちろん、少年・少女の友情ストーリーとして、切なく、ほろ苦く胸を締めつけたから。同じスティーヴン・キング原作の「スタンド・バイ・ミー」の世界がよみがえった人も多かった。たしかにホラー映画らしい衝撃&絶叫シーンは満載だったけれど、ジャンルを超えて幅広い観客層にアピールする作品になっていた。
その「IT」の続編が満を持して完成。すでに公開されたアメリカでは、2週連続でボックスオフィスの1位をキープ。前作に劣らないほど熱いリアクションが起こっている。日本公開のタイトルに「ジ・エンド」とあるように、これは2部構成の完結編。長大な原作は、主人公たちの子供時代と大人時代が交錯しながら進んでいくのだが、映画版では前作が子供時代、そしてこの続編は大人時代とくっきり分けられた。
前作の子供たちが成長して、再びペニーワイズに立ち向かうという、わかりやすい展開になったこともヒットの要因かもしれない。とはいえ、この続編は大人の時代をベースにしつつ、子供時代にさかのぼるシーンが何度もあるので、より原作の魅力に近くなっている。
1989年のアメリカ、メイン州の小さな町デリーで、ペニーワイズと向き合った「ルーザーズ(負け犬たち)」の7人は、再びペニーワイズが現れたら集合するという約束を交わしていた。27年後、ついにその時がやって来る。7人の中でただ一人、デリーに残っていたマイクが、かつての親友たちに連絡するのだが、みなアラフォー世代。自分なりの道を歩みつつ、どこか苦悩を抱えて生きている。
演じるキャストたち、ジェームズ・マカヴォイやジェシカ・チャステーンの切実な名演に引き込まれるし、大人になった7人それぞれの変化に共感させるのも、この続編の魅力だ。映画の脚本家、ファッション業界での活躍、コメディアン、建築家、保険会社の社員などで忙しい彼らは、再びデリーで再会するのか?全員が集まるかどうかも含め、オープニングから予想の先を行く展開へとなだれ込んでいく。