映画史上に残る傑作アクション「ターミネーター2」は何がすごいのか!?(続き)
最強アクションと号泣ドラマが奇跡の融合を果たした二作目
しかし共感という点では、「ターミネーター2」が前作をしのぐのは多くのファンが認めるところだろう。舞台は前作から約10年後の世界。サラが生んだ息子ジョンは、精神病院に収監された母に代わる里親の元で、反抗期をこじらせていた。そこに未来からの刺客T‐1000が現われる。ミッションは言うまでもなく、サラとジョンの抹殺。ジョンが絶体絶命の危機に陥ったそのとき、彼を助けたのはT‐800!未来のジョンは過去の自分と母を守るため、スカイネットから奪ったこのメカのプログラムを書き換え、過去の自分と母を守るために現代に送りこんだのだ。
一作目はホラー風だったが、「ターミネーター2」はアクションのスケールを大きくしつつ、エモーショナルなドラマに重点を置く。父親を知らずに生まれ、収監された母サラから引き離され、その母に捨てられたと思い込み、愛情のない里親に育てられたジョンが不良に走るのは必然だった。そんな彼が命の危機に直面し、圧倒的な強さを誇るT‐800に救われる。さらにT‐800は彼の母に関する誤解を解き、精神病院からサラを救い出した。こんな頼れる存在を、ジョンが父親のように慕うようになるのがミソ。T‐800とサラ、ジョンの間には疑似親子というべき関係が成立し、その絆はT‐1000との戦いなどの危機を乗り越えて、どんどん強くなる。
しかし、T‐1000を倒してもハッピーエンドとはならない。T‐800もまた、この世界に存在していてはいけない未来のマシンだからだ。サラとジョンを救うというミッションを成し遂げた彼は母子に別れを告げて“死”を選ぶ。いうまでもなく、機械に心はない。が、この結末は世界中の観客を揺り動かした。結果、感動アクションとなった「ターミネーター2」は前作の7倍もの世界興収を上げた。
技術面でも「ターミネーター2」は大きな功績を残した。人間から液体金属へ、液体金属から人間へと変身するT‐1000をビジュアル化した視覚効果技術。今でこそコンピューターグラフィックは当たり前のように映画に用いられているが、本作の製作時は、まだ未開発の分野だった。VFXスーパーバイザーのデニス・ミューレンはこの技術を用いてT‐1000の変身をナチュラルにビジュアル化。その後、彼はこの技術を活かし、「ジュラシック・パーク」で観客の度肝を抜くことになる。CG合成技術の進歩の歴史をたどるとき、本作は決して無視できない作品なのだ。ちなみにミューレンは「ターミネーター2」でアカデミー視覚効果賞を受賞している。
新作「ターミネーター:ニュー・フェィト」は、この第2作の正当な続編であるとキャメロンは認めている。それは3~5作目で製作にノータッチだった彼が、今回はプロデュースのみならず脚本にも関わったことからも明らかだ。シリーズの生みの親がここまでやる気を見せてくれたことは、ファンとしては嬉しい限り。はたして彼はどんな未来世界を見せてくれるのか?
Photo by Aaron Rapoport/Corbis via Getty Images, Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images
「ターミネーター:ニュー・フェイト」
2019年11月8日(金)公開
原題:ターミネーター:暗黒の運命/アメリカ/2019年/2時間9分/配給:20世紀フォックス映画
監督:ティム・ミラー/出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、マッケンジー・デイヴィス、ナタリア・レイエス
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