“ミゼラブル(悲惨)”な世界の現状を反映した今こそ観るべき問題作
世界各地で暴動やデモが頻発している昨今、もはや日本も他人事ではいられない時代を迎えている。“引き金”となるのは、抑圧された人々の中に生まれる社会や政治に対する鬱屈した感情。そんな現代が抱える闇をリアルに描き、まさに「世界の縮図」ともいえる衝撃作が誕生した。
舞台となるのは、ヴィクトル・ユーゴーの傑作「レ・ミゼラブル」で知られているパリ郊外のモンフェルメイユ。様々なバックグラウンドを持つ人々が暮らし、現在は犯罪多発地区の一部となっており、我々が思い描く“花の都”パリのイメージはそこには存在しない。
犯罪防止班に新しく加わることとなった警官のステファンは、仲間と共にパトロールをするうちに、複数のグループ同士が緊張関係にあることを察知する。そんなある日、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事が大きな騒動へと発展。事件解決へと奮闘するステファンたちだが、事態は取り返しのつかない方向へと進み始めることに……。
犯罪防止班に配属された新人警官のステファンと同僚たちが、ある少年の引き起こした些細な事件をきっかけに、やがて取り返しのつかない事態へと陥っていく様を、緊張感あふれる描写で描いた本作は、第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞に見事に輝いた。
タランティーノ、アルモドバル、ダルデンヌ兄弟など例年にも増して大物監督の新作が並ぶ中、現地ではポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』と並んでパルムドールを競い「コンペ最大のショック!」と称賛を受けたほどセンセーションを巻き起こした。
その後、各国の映画祭でも数々の賞を獲得し、第92回アカデミー賞国際長編映画賞(旧名称:外国語映画賞)ではフランス代表にも選出されている。
監督・脚本を務めたのは、モンフェルメイユで生まれ育ち、現在もその地に暮らす、新鋭ラジ・リ監督。長年Webドキュメンタリーを手掛け、2006年には世界的ストリート・アーティストのJRと共同でプロジェクトを発表するなど活躍の幅は広く、本作が初長編監督作品ながら自身がこの街で体験してきた出来事を、圧倒的な緊迫感とスタイリッシュな映像で見事に描き切っている。本作を絶賛しているスパイク・リー監督もその才能を認め、アメリカにおけるプロモーションのサポートを買って出るほど。
11月20日に本国フランスでの公開を迎えた本作は、初日動員数7万人を超え、週末ランキングは『アナと雪の女王2』に次ぐ、第2位となる大ヒットスタートとなった。
また、フランスのマクロン大統領も、本作を鑑賞、自国が抱える問題をリアルに描いた本作に反応し、政府に「映画の舞台となった地域の生活条件を改善するためのアイデアを直ちに見つけて行動を起こす」よう求めたという。
権力者によって抑圧されている弱者と社会で居場所を失った人々―。まさに、“ミゼラブル(悲惨)”な世界の現状を反映した今こそ観るべき問題作が、ついに日本公開!ラスト10分の緊迫感。そして衝撃のラストシーンは、私たちに何を問いかけるのか!?
レ・ミゼラブル
2020.2.28(金)新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
©RECTANGLE PRODUCTIONS