今作のプロモーションで来日したディーン・デュボア監督のインタビューをお届けする。
世界的ベストセラーの児童文学を映画化した『ヒックとドラゴン』シリーズ最新作『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は、19年2月に全米公開され、世界54カ国でランキング1位を奪取&全世界興行収入は5億ドルを突破し特大ヒットを記録した。
かつては敵同士だった人間とドラゴンが共存する世界で、弱虫なバイキングの少年から若きリーダーへと成長した“ヒック”と、ドラゴンの王となった伝説のナイト・フューリー“トゥース”を中心に、史上最凶のドラゴン・ハンターに立ち向かいながら新天地をめざして旅をする『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』。
前2作に引き続き監督を務めたディーン・デュボアがSCREEN ONLINEのインタビューに応じ、今作の制作秘話を語ってくれた。
観客が面白いと思ってくれそうなものだけをセレクトして
トゥースの求愛シーンに反映させました
ーー今作のためにムーンレイという革命的なCG技術を開発されたそうですが、どのような成果を得られましたか?
「ドラゴンの幻の聖地への道のりや聖地の内部でのライティングは素晴らしいものになったと言えます。例えば、自ら発光するものやクリスタルの光など光源はありとあらゆるものがありますが、ひとつの場面に何十億という光線を照射して、現実世界の光と影をできるかぎり表現する事ができました。また、ドラゴンも1作目ではひとつのショットに8匹しか登場しませんでしたが、今作では最高で65000匹以上のドラゴンを登場させることができました。これこそがムーンレイという新しいテクノロジーの見事な成果だと言えますし、自分達が描きたかったヴィジョンを100%に形にすることができました」
ーー実写の映画を見ているのではないかと錯覚してしまうほどクオリティの高い映像に驚かされましたが、ロケーションに関してはどのような場所を参考にされたのでしょうか?
「『ヒックとドラゴン2』の時は撮影監督のロジャー・ディーキンスと企画開発のエグゼクティブの人間と僕の3人で北極圏にあるスヴァールバル諸島というところに行きました。人口2000人ほどの島なのですが、なんとホッキョクグマは5000頭もいるんです! ホッキョクグマは動くものを何でも食べるので非常に危険なんですよ(笑)。でも、雪と氷、そして色彩が大変素晴らしい場所でした。今作に関しては、聖地の入り口にカルデラがありますが、あれは僕が夢で見た風景なんです。海の中に大きな穴が空いていて、360度ナイアガラの滝みたいになっているという風景を夢で見た時に、プロダクションデザイナーにそのまま伝えたら、それをアニメーションとして映像化してくれました」
ーートゥースの動きや表情などはどんな動物を参考にして描かれているのでしょうか?
「デザイン面ではブラックパンサーのエレガンスさが出るようにしました。質感的には少し爬虫類っぽさを出したかったのでサラマンダー(大トカゲ)を参考にしています。ただ、トゥースは他のドラゴン達に比べると動きや仕草なんかはほ乳類に近いかもしれません。というのも、1作目の制作時期にスーパーバイジング・アニメーターがたまたま猫を飼い始めたんですね。それで、毎日のように猫の遊び方やグルーミングの仕方、背中の伸ばし方を見ていたらそれが自然とトゥースの動きや仕草に影響したらしいのです(笑)。僕はフレンチブルドックを3頭飼っているので(と、愛犬の可愛いお写真を見せてくださいました)、“この動きはどうかな?”と愛犬の動きを参考にしてもらった部分も多々ありますが……猫の要素のほうが圧倒的に多いかもしれません(笑)」
ーートゥースがライト・フューリーに求愛をするシーンがキュートでしたが、こちらも猫や犬の動きを参考にされたのでしょうか?
「鳥やトカゲ、蜘蛛といった色んな生き物が求愛している時の映像を見て研究して、その中から観客が面白いと思ってくれそうなものだけをセレクトして求愛シーンに反映させました」
ーー蜘蛛も参考にされたのですね(笑)。
「トゥースが体をホッピングをさせるシーンがありますが、あれは実は蜘蛛が実際にやる動きなんですよ(笑)。トゥースの面白いところは、ドラゴン達からは尊敬されているリーダーですが、恋愛に関しては完全にアマチュアというか(笑)。しかも人間であるヒックのアドバイスに従ったりしますしね。一方でライト・ヒューリーは謎に包まれたメスのドラゴンで、人間に対して強い警戒心を抱いています。そんな彼女にトゥースが必死にアプローチする姿はコミカルで凄く面白いですよね」
ーー声優陣も豪華ですが、「ゲーム・オブ・スローンズ」で人気が出たキット・ハリントンもエレット役で参加しています。彼とドラゴンについてお話されることもあったのでしょうか?
「ありました(笑)。そうそう、キットが「ゲーム・オブ・スローンズ」のオーディションを受けた時の様子を再現している動画があるんですけど、トゥースがキットにイタズラしているという今作のプロモーション用に作ったものなので是非観てください(笑)。ちょうど2作目を製作しようとしていた時に「ゲーム・オブ・スローンズ」を見始めたのですが、キット演じるジョン・スノウが持つイノセンスな部分と時おり見せる自信家なところに惹かれました。それでキットにエレット役で声をかけたのですが、凄くジェントルマンで努力家なので、彼との仕事は最高でした。そういえば、最終章でジョンがドラゴンの頭に触れるシーンがありましたが、それを見た瞬間に思わず“あのアイデアは一体どこから?(笑)”と冗談でキットにメールしたのを覚えています(笑)。そんな風に二つの世界観で共有し合えることは素敵だなと思います」
ーー今後、実写映画を撮る予定はございますか?
「5本ほど映画の企画を進めているのですが、いままさに脚本執筆中なのが、日本のおもちゃ「ミクロマン」を実写化した作品なんです。実現できたらいいですよね」
(インタビュアー・文/奥村百恵)
【ストーリー】
かつてドラゴンは人間の敵だった。弱虫のバイキングの少年“ヒック”と、傷ついたドラゴン“トゥース”の活躍で彼らは共存する道を選び、バーク島で平和に暮らしていた。だが、ドラゴンが増え続けたバーク島は定員オーバー!
亡き父の跡を継ぎ、若きリーダーに成長したヒックは、島を旅立ち、みんなと新天地を探し求める決断をする。
目指すはヒックがかつて父から聞いた地図に載らない“幻の聖地”。この場所さえ探し出せれば、きっと平和に暮らせるはずだ。
しかし、大移動の旅の途中、最凶のドラゴンハンター、グリメルに命を狙われ、“トゥース”の前には謎の白いメスドラゴン“ライト・フューリー”が姿を現す。
そして彼らが辿り着いたのは、人間は住めないドラゴンたちだけの<隠された王国>だった―! “ヒック”と“トゥース”は別れる運命なのか?今、人間とドラゴンの友情が試されるー。
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』
12月20日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督・脚本: ディーン・デュボア
声の出演:ジェイ・バルシェル、アメリカ・フェレーラ、ケイト・ブランシェット、ジェラルド・バトラー、ジョナ・ヒル、ほか
配給:東宝東和、ギャガ
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