織り込まれる『男と女』の名シーン。バランス絶妙で涙が止まらない
『男と女』の忘れかけていたシーンの数々が織り込まれ、音楽も挿入されて、その絶妙なバランスに心打たれ、最初から最後まで涙をとめることが出来なかったのは、筆者だけでしょうか。
2019年、第72回カンヌ映画祭での特別上映作品となり、フランス映画がもたらした奇跡として拍手喝采が沸いたといいます。昨年の横浜フランス映画祭では日本でのプレミア上映が行われ、来日して若々しい気骨を見せたクロード・ルルーシュ監督自ら、この映画を奇跡の映画だと言っています。
「今回の映画はまさに奇跡なんです。奇跡と言う以外説明がつきません。この『男と女』に携わった技術者たちは全員亡くなっていて、そして、この映画の音楽の作曲をした直後にフランシス・レイも我々の元を去ってしまいました。が、しかし、ジャン=ルイもまだ生きている。アヌーク・エーメも生きている。私もまだ生きている。それ自体がまさに大きな奇跡なのです。66年版の『男と女』の50周年を記念してリマスター版が作られた時に、二人が上映を観に来てくれまして、その二人の様子を見ながら、この映画のアイディアを思いついたのです。2、3年前のことです」
奇跡を起こしたのは、まさにルルーシュ監督自身だったのですね。このお話を知って、すかさず私は監督に伺いました。
映画づくりはルルーシュ監督にとって、ヴァカンス!
──3人が揃って力を合わせて、伝説的フランス映画となった『男と女』の、その後を映画化出来るということは稀なことです。奇跡ですね、まさに。だからこそ、この映画はこれほど観る者を感動させるのだと思います。感動の涙が止まりませんでした。世間的には、年齢的に考えてこのような映画が作れることはあり得ないことだと思われたりもします。ですので、完成までは大変なご苦労もあったと思います。しかし、監督や主演男優・女優をここまで突き動かす力とは、映画の持つ力なんだと思うしかないのですが、そうなんでしょうか?
「愛を持って何かをするとき、その何かはとても簡単に出来るものなんですよ。幸運なことに82年間、私は映画に恋をし、人生に恋をし、この二つを愛し続けてきました。この二重のラブストーリーのおかげで、私の50本の映画は出来たんだと思います。私は映画を作るとき努力をした、という感じが全くしていません。ただただ喜びがあるだけです。それは休暇にいるのと同じなんです。生涯ずっとヴァカンスの時を過ごしてきました。これからもそうしてヴァカンスの中で、私は亡くなると思います」
予想以上の素晴らしいお答えに、筆者は思わず拍手と涙。上映の場も拍手喝采となり、賛同のエールが贈られました。
「退屈が私を死なせてしまうでしょう。でも、愛は永遠です」との名言も残してくださったルルーシュ監督。永遠に錆びない監督が生んだ映画。多くの方々に、この久々のフランス映画らしい大人の映画に酔いしれていただきたいものです。
『男と女 人生最良の日々』
2020年1月31日よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー
監督・脚本 クロード・ルルーシュ
音楽 フランシス・レイ、カロ・ジェロ
出演 ジャン=ルイ・トランティニャン、アヌーク・エーメ、スアド・アミドゥ、アントワーヌ・シレ、モニカ・ベルッチ
2019年/フランス/90分/カラー・モノクロ
配給 ツイン
© 2019 Les Films 13-Davis Films -France 2 cinéma