長編デビュー作『ヘレディタリー/継承 』が世界中の映画サイト、映画誌に絶賛され、日本でも話題となったアリ・アスター監督。
2月21日より公開された彼の最新作『ミッドサマー』のプロモーションで1月末に来日したアリ・アスター監督のトークイベントを完全レポート!

1月30日に行われた最新作『ミッドサマー』の特別先行上映会後のトークイベントに登壇したアリ・アスター監督は「暖かい歓迎をありがとうございます。日本映画が大好きで初来日なのでとてもワクワクしています」と満面な笑顔を見せて挨拶。

画像1: 本日公開『ミッドサマー』
アリ・アスター監督来日トークイベント完全レポート!!

映画の舞台であるスウェーデン出身のタレントLiLiCoが司会として登場し、「よくも私達スウェーデン人が誇る素晴らしい夏至祭をここまでとんでもないものにしましたね!(笑)」と会場の笑いを誘うとアリ監督は「ごめんなさい(笑)」といたずらっ子のように微笑んでみせた。

「どういう経緯で夏至祭を舞台に映画を作ることになったのでしょうか?」という質問には

「まだ『ヘレディタリー/継承 』の撮影が始まっていない頃、『ヘレディタリー/継承』の脚本を読んだスウェーデンのプロデューサーが僕にアプローチをしてきたんです。“夏至祭の期間中にアメリカ人が特別なコミューンを訪れる映画を作りたい”とおっしゃって。正直そのアイデアだけでは僕にあまり響かなかったんですけど、ちょうどその頃に付き合っていた彼女と別れたばかりで、そのアイデアとくっつけてしまえば面白い失恋ムービーが作れるんじゃないかなって思ったんです。そしたら急に夏至祭が凄く魅力的に思えてきて(笑)」

と自身の失恋がきっかけだったことを明かし、更にロケ場所についても

「何度かスウェーデンを訪れてリサーチしていきました。もちろん夏至祭の期間中も。スウェーデンの伝統的なものを調べると結構幅広くて、かなり膨大な量になりました。民間伝承や北欧の伝統、そしてドイツやイギリスにも夏至祭がありますから。それからスピリチュアルなムーブメントみたいなものなんかも調べました。その中の一部はロシアからきているものもありましたね。スウェーデンの北部にも行って農家や宗教的な建物もリサーチしました。それは今作の建築物に反映されています。ただ、リサーチして知ったことを一旦忘れるというか、“無”にすることも必要でした。とにかく膨大な量だったので(笑)。“これは聖なるものだから触っちゃいけない”とか“これは絶対に使わなければいけない”というのを一切考えずに、今作の物語に合う要素だけを取り入れるようにしたんです」

とハンガリーで撮影したことを告白。

「スウェーデンで撮影すると制作費が高額になってしまうので、ハンガリーの首都ブダペストから車で30分ほどの場所で撮影をおこないました。スウェーデンだったら家一軒ぐらいしか建てられませんし、撮影に関する労働基準法がとても厳しい。でも僕は撮影クルー達を酷使したかったんです(笑)。だからハンガリーの何もない平原に二ヶ月ほどかけて村を作り上げたんですよ」

とアリ監督らしいジョークを交えながら話す場面も。

この映画のジャンルについて問われると…

「僕はホラー映画だとは思っていません。どんなジャンルの映画を作っているのかなんて頭になくて、公開時に急に考え始めたりするんです。今作に関してはホラーやコメディ、民間伝承など色んな要素が含まれていますが、観客は主人公のダニーに気持ちを寄り添わせながら体験して頂けるんじゃないかと。ダニーの観点から言えばこの物語はフェアリーテール、つまりお伽噺なんです。それから先ほど言ったように失恋ムービーですよね(笑)。固い絆で結ばれたカップルがこの映画を観ても何の問題もないと思いますが、もし本当は一緒にいるべきではない2人が観る場合は観賞後に“この映画を観て別れた”というレガシーを世の中に残していって欲しいと考えています(笑)」

とコメントし、会場は笑いに包まれた。

画像3: 本日公開『ミッドサマー』
アリ・アスター監督来日トークイベント完全レポート!!

また、日本映画についても造詣が深い監督は

「僕は幼い頃から日本映画を観て育ちました。昔の名作だと溝口健二監督の『雨月物語』、新藤兼人監督の『藪の中の黒猫』と『鬼婆』、小林正樹監督の『怪談』、大島渚監督の『愛のコリーダ』とか。他にも色々観ていますよ。現代で活躍されてる方だと黒沢清監督、そして今回の来日で対談させてもらった園子温監督の作品も好きです。今作の話に戻りますが、プリプロ期間中は今村昌平監督の『楢山節考』と『神々の深き欲望』を観て参考にしました。僕は映画が持つムードや感触に興味を惹かれることが多いんですけど、まさに日本のホラー作品からはそういうものを感じます。儚さやミステリーのようなものも感じますしね。そういうのって日本以外のホラー映画は失ってしまっているんじゃないかなと思いますね」

と日本映画や巨匠への愛溢れる言葉を届けた。

LiLiCoからの「今作を“怖いから観に行くのをためらっている”という人にはどのようにオススメすればいいですか?」という質問に…

「この映画はホラーじゃないし怖くないですよ。決して怖がらせようと思って作った作品ではないんです。ファンタジー溢れる恋愛ドラマ、人間関係のドラマ、失恋ムービーだと思っているので、是非観に行ってと言ってあげてください」

と周りの友人や知人に今作をオススメするようにアピール。最後に

「ラストはカタルシスを感じるような、そして爽快感があって何かが浄化されるような気分になれると思うので、是非劇場で体感して頂けたら嬉しいです。あと、別れたほうがいいんじゃないかと思うカップルがいたら是非この映画をオススメしてください(笑)」

とアリ監督が締めくくると、客席からは笑いと共に温かい拍手が送られた。

画像5: 本日公開『ミッドサマー』
アリ・アスター監督来日トークイベント完全レポート!!
画像6: 本日公開『ミッドサマー』
アリ・アスター監督来日トークイベント完全レポート!!

『ミッドサマー』はTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開中。

(取材/奥村百恵)

画像7: 本日公開『ミッドサマー』
アリ・アスター監督来日トークイベント完全レポート!!

〈ストーリー〉
家族を不慮の事故で失ったダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人と5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖......それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

『ミッドサマー』
脚本・監督:アリ・アスター
出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ウィルヘルム・ブロングレ ン、アーチー・マデクウィ、エローラ・トルキア
製作:パトリック・アンディション、ラース・クヌードセン
撮影監督:パヴェウ・ポゴジェルスキ
プロダクション・デザイン:ヘンリック・スヴェンソン
編集:ルシアン・ジョンストン
衣裳デザイン:アンドレア・フレッシュ
音楽:ボビー・クルリック
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画像: 2020.2.21(金)公開『ミッドサマー』予告編 youtu.be

2020.2.21(金)公開『ミッドサマー』予告編

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