毎月公開される新作映画は、洋画に限っても平均40本以上!限られた時間の中でどれを見ようか迷ってしまうことが多いかも。そんなときはぜひこのコーナーを参考に。スクリーン編集部が〝最高品質〞の映画を厳選し、今見るべき一本をオススメします。今月の映画は冤罪の黒人死刑囚のために立ち上がった実在の弁護士の姿を通して〝真の正義〞とは何かを問う感動作「黒い司法 0%からの奇跡」です。

編集部レビュー(続き)

差別の根強さを痛感させられる

舞台は1980年代のアラバマ州。弁護士ブライアンが死刑囚ウォルターに会いに行った刑務所には、同じような境遇の黒人が他にもたくさん収容されていました。

そもそも無実なのにちゃんと捜査もされず逮捕、死刑判決を受けたウォルター。さらにはブライアンまでもがまるで犯罪者かのような屈辱的な身体検査を求められるわ、証拠を集めても鶴の一声で覆るわ...目に余る理不尽のオンパレードに、一つの結論が出ても本当に信用していいのかな?と最後まで全く安心できませんでした。

そんな理不尽な扱いが日常茶飯事だったアラバマ州ってどんな場所かというと、「グローリー/明日への行進」の舞台であり、「グリーンブック」のドン&トニーの最終公演の地。時代を変えても同じテーマの作品が色んな角度から製作できるという事実に、差別の根強さを痛感させられました。

レビュワー:中久喜涼子
鍵を握る重要証人ラルフが怖かった...。コイツ絶対まともな証言しないだろ感が半端なく、演じたT・B・ネルソンは本人の映像を見て研究したそう。

人種差別vs新人弁護士の粘り強い正義

マイケル・B・ジョーダン。彼ほど“正義(ジャスティス)”という言葉が似合う者はいるだろうか。ヴィランとしてボクサーとして目の前の相手と闘ってきた男が次に選んだのは人種差別。この目に見えない難敵に、己の信念と正義を武器に挑む。

黒人3分の1が刑務所経験アリという米国で新人弁護士ブライアン(ジョーダン)が指針とするのは“助けを必要とする人の弁護”。肌の色で冤罪に泣く人々を救うため南部へ向かうが、殺人の罪を着せられた囚人は“黒人は生まれながら有罪”と諦めムードだ。

物語が走り出すのはここから。結末はタイトルが示す通りだが、ブライアンの粘っこい正義と不当な司法システムのイタチごっこはそれを忘れさせるほど起伏に富む。意識が変わった囚人たちが監房の柵をコップで叩き奏でるのは、エールにも抗議にもなれる希望の音。実際のブライアンは今日も闘っている。

レビュワー:鈴木涼子
ジョーダンの出世作は白人警官に射殺された青年を演じた「フルートベール駅で」(2013)。こちらも実話で、対で見ると考えさせられます。

画像: 人種差別vs新人弁護士の粘り強い正義

名作「アラバマ物語」を思い起こさせる

訴訟大国アメリカは裁判映画の傑作が余りに多いので、よほど上手く作らないと記憶に残らず消えてしまうものもある。本作が印象的なのはアラバマが舞台の黒人冤罪事件という点。これを聞くだけですぐ名作「アラバマ物語」が頭をよぎるが、映画の中でもこのタイトルが幾度も登場する。

どうもこの州の白人は(1980年代が舞台ですが)、あの“アメリカの良心”の物語を我がことのように誇りながら、中味は以前と余り変わっていない妙な“正義漢”が多いみたい。そこに北部から来た黒人弁護士が南部の矛盾を突く。弁護士じゃなくて刑事だけどここは「夜の大捜査線」チック。

でも“真実”を並べるだけでは冤罪はなかなか解決しないというのがさすが実話ならではの重みで、さて容疑をかけられた男の運命はどうなってしまうのか。勘のいい人はもう大体分かってしまいますね?

レビュワー:米崎明宏
編集長。こちらはキルモンガーが主人公だけど、「マーシャル 法廷を変えた男」(未見)では米最高裁初の黒人判事を陛下が演じています。

月イチ恒例!今月の編集部イチオシ映画
前回はこちら

圧倒的な没入感!今月のイチオシ「1917 命をかけた伝令」

This article is a sponsored article by
''.