人が難解と感じても、自分にとっては難解ではない
──こういった芸術性の高い作品だから、理解を示したのでしょうか。
「まあ、政治色などない個人的な話ですし。が、そういった観念からいって、すべて規制をしないかは、中国を代表して私が言えることでもないですけれどね。中国の審査というのは、地域によって審査部門や機関が違うので、たまたま自分が審査に出したところが、対話の余裕があったということでしょうし、その担当者の検閲についての判断においては、私の作品に共通認識を持てたということはあるかもしれないですね」
──作品が素晴らしく、圧倒的だったからだと思います。
「まあ、もしかしたら審査の人も、多くの観客たちと同じように、観ても良く分からなかったから修正とか無しで通ったのかもしれませんよ(笑)」
──それ、いいですね(笑)、ご謙遜でしょうけど、それは凄く面白いお考え。
「そうですね。場合によっては、難解な作品なら通りやすいということにもなるのかな(笑)」
──では、では、すでに次回作にとりかかっているそうなので、次回作も難解なものになさいますか?(笑)
「まあ、いずれにしても、他人にとっては難解なものになるのかもしれませんが、僕にとっては、いつもちっとも難解ではありませんよ。そして、次回は今回とは大きく違いますし」
観客には、観て、考える余地を持たせたい
──いつもは監督に内容のディテールについて伺うことは少ないんですが、謎を多く残す作品ですから、ここで監督に伺いたくなってしまったことが一点あります。主人公には男の子供が出来るが堕胎されてしまいます。最後の方のシーンでお母さんと巡り会うと、お母さんは男が自分の子供だって分からなかった。堕胎された子供こそ、主人公自身のメタファーだったのでは?と読み取ったのですが、いかがなものでしょう? そういう着想やアイデアが素晴らしいです。
「そのように読み取っていただいて、凄く感動的ですね。でも、多くの観客に違う解釈を、いろいろな感じ方を期待したいのです。そういう考える余地を持たせたいのが監督ですから。自由な解釈をしていただきたいです」
いたずらっ子のような眼をして、そう応えるガン監督。
そう来なくっちゃ、それが映画というものなのだから、と我が意を得た、納得のインタビューとなりました。
ちなみに、『凱里ブルース』も2020年4月18日(土)からシアター・イメージフォーラムにて公開が決定していて、2作品を観たらビーガン監督の世界に、より近づけそうです。
『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』
2020年2月28日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国縦断ロードショー
監督・脚本/ビー・ガン
出演/タン・ウェイ、ホアン・ジエ/シルビア・チャンほか
2018年/中国・フランス/138分/カラーパート3D/DCP
配給/リアリーライクフィルムズ+ドリームキッド
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