2018年の東京フィルメックス映画祭で学生審査員賞に輝き、若い世代を大いに湧かしたことが記憶に新しい、『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』。すでに、2018年のカンヌ国際映画祭ある視点部門でプレミア上映を果たし、トロント国際映画祭、サンセバスチャン国際映画祭、ニューヨーク映画祭など、世界の名だたる映画祭への出品で、世界を席巻。中華圏映画のアカデミー賞とされる金馬奨で撮影・音楽・音響の3部門を受賞し、本国では1日で41億円の大ヒット、全米でもロングランを記録。この快挙をものにしたのが、まさに、「小さな巨人」のビー・ガン監督。この現代中国第8世代を代表するアーティストにインタビューを試みました。(※トップ写真 ビー・ガン監督/撮影:安井 進)

人が難解と感じても、自分にとっては難解ではない

画像: 人が難解と感じても、自分にとっては難解ではない

──こういった芸術性の高い作品だから、理解を示したのでしょうか。

「まあ、政治色などない個人的な話ですし。が、そういった観念からいって、すべて規制をしないかは、中国を代表して私が言えることでもないですけれどね。中国の審査というのは、地域によって審査部門や機関が違うので、たまたま自分が審査に出したところが、対話の余裕があったということでしょうし、その担当者の検閲についての判断においては、私の作品に共通認識を持てたということはあるかもしれないですね」

──作品が素晴らしく、圧倒的だったからだと思います。

「まあ、もしかしたら審査の人も、多くの観客たちと同じように、観ても良く分からなかったから修正とか無しで通ったのかもしれませんよ(笑)」

──それ、いいですね(笑)、ご謙遜でしょうけど、それは凄く面白いお考え。

「そうですね。場合によっては、難解な作品なら通りやすいということにもなるのかな(笑)」

──では、では、すでに次回作にとりかかっているそうなので、次回作も難解なものになさいますか?(笑)

「まあ、いずれにしても、他人にとっては難解なものになるのかもしれませんが、僕にとっては、いつもちっとも難解ではありませんよ。そして、次回は今回とは大きく違いますし」

観客には、観て、考える余地を持たせたい

画像: 観客には、観て、考える余地を持たせたい

──いつもは監督に内容のディテールについて伺うことは少ないんですが、謎を多く残す作品ですから、ここで監督に伺いたくなってしまったことが一点あります。主人公には男の子供が出来るが堕胎されてしまいます。最後の方のシーンでお母さんと巡り会うと、お母さんは男が自分の子供だって分からなかった。堕胎された子供こそ、主人公自身のメタファーだったのでは?と読み取ったのですが、いかがなものでしょう? そういう着想やアイデアが素晴らしいです。

「そのように読み取っていただいて、凄く感動的ですね。でも、多くの観客に違う解釈を、いろいろな感じ方を期待したいのです。そういう考える余地を持たせたいのが監督ですから。自由な解釈をしていただきたいです」

いたずらっ子のような眼をして、そう応えるガン監督。

そう来なくっちゃ、それが映画というものなのだから、と我が意を得た、納得のインタビューとなりました。

ちなみに、『凱里ブルース』も2020年4月18日(土)からシアター・イメージフォーラムにて公開が決定していて、2作品を観たらビーガン監督の世界に、より近づけそうです。

画像: 映画の途中で2Dから3Dへ!前代未聞の映像体験!! 『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』 WEB限定版予告編公開!!! youtu.be

映画の途中で2Dから3Dへ!前代未聞の映像体験!! 『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』 WEB限定版予告編公開!!!

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『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』

2020年2月28日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国縦断ロードショー
監督・脚本/ビー・ガン
出演/タン・ウェイ、ホアン・ジエ/シルビア・チャンほか
2018年/中国・フランス/138分/カラーパート3D/DCP
配給/リアリーライクフィルムズ+ドリームキッド

©2018 Dangmai Films Co., LTD, Zhejiang Huace Film & TV Co., LTD -Wild Bunch / ReallyLikeFilms

前回の連載はこちら: 永遠不滅のフランス映画の第3弾『男と女 人生最良の日々』、奇跡を起こしたC・ルルーシュ監督からのメッセージ

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