今私たちの日常は、ついこの間までとまったく別のものになってしまいました。新型コロナウィルスの猛威は瞬く間に世界中に広がり、大国アメリカも歴史的な危機に陥っています。そしてハリウッドもしかり。次々と映画の公開延期、製作が中止となっている現状を現地からレポートします。(文・LA在住 荻原順子/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:ハリウッドの名所チャイニーズ・シアター前/Photos by Getty Images

製作延期に追い込まれる新作

映画・テレビ関係者たちの間で感染が広がれば、彼らの仕事場である映画・テレビドラマ製作も当然、停止せざるを得なくなる。

既に撮影が開始されていたものの、コロナウイルス禍のために撮影休止になっている作品には、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟監督作品でデンゼル・ワシントンがマクベス、フランシス・マクドーマンドがマクベス夫人を演じる「マクベス」、「アバター」の続編、リドリー・スコット監督、マット・デイモン、アダム・ドライバー主演の「ラスト・デュエル」、「ミッション・インポッシブル」シリーズ最新作、「ジュラシック・ワールド」シリーズ最新作、「マトリックス」4作目、そしてロバート・パティンソンがバットマン役を演じる「バットマン」シリーズ最新作と、大作、期待作も多い。

テレビ界でも、ドラマやシットコム、トークショーなどは、ほとんど収録休止状態になっている。映画・テレビ番組製作が中断されてしまうことによって、最も大きな打撃を受けているのは、映画・テレビ番組の製作スタッフたちだろう。

彼らは、作品が製作される時のみ雇用される人材であるゆえ、製作が停止してしまえば仕事は無くなり、収入も無くなってしまう。俳優たちも、名が広く知られているようなスターでない限り、製作スタッフ同様、コンスタントに働き続けなければ生活していけない人たちがほとんどである。

自粛する市民を励まそうとするスターたち

仕事が休止中で自宅待機が求められているなら、終わりの見えないコロナウイルスとの闘いに助力しようと動き出した映画人たちも居る。

例えば、マット・デイモン、ケイト・ウィンスレット、ローレンス・フィッシュバーンら、前述した「コンテイジョン」のキャストたちは、コロンビア大学の公衆衛生大学院が製作した動画に出演。自宅待機やソーシャル・ディスタンシング(他者と一定の距離を置くこと)、手洗い励行などの重要性を呼びかけている。

画像: ロバート・デニーロらがニューヨークの市民に向かって自宅待機を呼びかけ

ロバート・デニーロらがニューヨークの市民に向かって自宅待機を呼びかけ

他にも、ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモの要請でニューヨーク在住のロバート・デニーロ、ダニー・デヴィート、ベン・スティラーが、ニューヨーカーたちに自宅待機を呼びかける動画に出演したり、ネットワーク局のCBSが「NCIS:LA〜極秘潜入捜査班」や「S.W.A.T.」といった自局ドラマのキャストたちによる公共広告を発信するなどして、コロナウイルス禍の深刻性のアピールに努めている。

一方、自宅謹慎を強いられている国民たちのために、ソーシャルメディアを使ったミニ・エンターテイメントを提供しているスターたちも出てきた。

例えば、ジャック・ブラックは、上半身裸でカウボーイハットにカウボーイブーツ姿で「クアランティン(隔離)ダンス」と称するコミカルな踊りを動画サイトTikTokにポスト。見事な太鼓腹ながら敏捷な動きを見せて笑わせてくれる。

画像: 投稿サイトで笑えるダンスを披露したジャック・ブラック

投稿サイトで笑えるダンスを披露したジャック・ブラック

知られざる音楽の才能を披露するのは、スティーヴ・マーティン。ツイッター動画でプロ並みのバンジョー演奏を聴かせてくれる。同じく、コートニー・コックスも自身のピアノ伴奏に合わせて歌う娘のココのインスタグラム動画を公開。自宅からの発信は、セレブも私たち同様、自宅謹慎を守っているのだと仲間意識を持たせてくれる。

そんな中、ワンダーウーマンことガル・ガドットが、ナタリー・ポートマン、マーク・ラファロ、エイミー・アダムス、ジェームズ・マースデンらのスターを募って、ジョン・レノンの「イマジン」をリレーして歌うインスタグラム動画を公開したところ、「こんな時にセレブたちの自己満足な歌など聞きたくない」、「調子外れの歌など歌ってないで医療機関に金を寄付してやれ」などと批判の声が集中した。

ガル・ガドットたちの“歌リレー”は不評を買ってしまった

コロナウイルス禍で苛立つ気持ちも解るが、このような非常事態だからこそ、他者の至らなさには寛容に接して善意の意図を評価するよう努めたいものだと、自戒の意味も込めて考えさせられたニュースだった。

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