1980年、オーストリアで実際に起きた殺人鬼ヴェルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を映画化した実録スリラー映画『ANGST』が『アングスト/不安』の邦題で2020年7月3日(金)より日本劇場初公開されることが決定した。

ショッキングすぎる凄まじい内容により世界各国で上映禁止に

あまりにも「異常」かつ、あまりにも「危険」な映画が1983年、それまでジャンル映画が存在しなかったオーストリアで突然変異のように誕生。それが『アングスト/不安』だ。

本作は、刑務所出所後の殺人鬼=狂人が感じる不安やプレッシャーによる異様な行動と心理状態を凶暴かつ冷酷非情なタッチと斬新なカメラワークを用いて表現。狂人自身のモノローグで綴る構造や全編に徹底された陰鬱なトーンなど、作品自体が”異常“であり、他に類を見ない芸術性を発揮した衝撃的作品。

アメリカの映画サイト「Taste of Cinema」が選ぶ「史上最もダークなシリアルキラー映画」では、『ヘンリー』(1986)、『セブン』(1995)、『ハウス・ジャック・ビルト』(2018)などを抑え、堂々の1位を獲得。広義で“おそろしい映画”としては、『悪魔のいけにえ』(1974)が放つ存在感と同次元で語られ、世界的に唯一無二の傑作として捉えられている。

しかし、1983年公開当時はそのショッキングすぎる凄まじい内容により本国オーストリアでは1週間で上映打ち切り、他ヨーロッパでも上映禁止、イギリスとドイツではビデオの発売も禁止。アメリカではXXX指定を受けて配給会社が逃げたという。

日本でも劇場公開されず『鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜』というタイトルで1988年にレンタル用VHSが発売されたが、世の中に出回った数は極少、ほぼ誰にも観られることなく地下に埋もれ、以降観たくても観れない作品となり現在に至る。

この早すぎた傑作にてメガホンをとったのは、殺人鬼の心理を探るという崇高な野心のもと全額自費で本作を製作したジェラルド・カーグル。本作はその唯一の監督作品である。観る者を冷徹な世界へ誘う、不穏なエレクトロサウンドを手掛けたのは、元タンジェリン・ドリーム、アシュ・ラ・テンペルの作曲家クラウス・シュルツ。

また、狂人が内に秘めた”不安“をアーティスティックなカメラワークで映し出したのは、アカデミー賞最優秀短編アニメ賞を獲得した『タンゴ』(1981)やジョン・レノン、ミック・ジャガーらのMVで知られる世界的な映像作家ズビグニェフ・リプチンスキ。

『CLIMAX クライマックス』(2018)、『カルネ』(1994)のギャスパー・ノエ監督は自身の作品にて本作のオマージュを捧げ、『ファニーゲーム』(1997)他ミヒャエル・ハネケ監督の初期作品とも類似性が高いと語られる本作。近年増えてきつつあるシリアルキラー映画の大本命とも言っても過言ではない。

今回、解禁となったチラシビジュアルは、『U・ボート』(1981)、『アンダーワールド』(2003)の俳優アーウィン・レダー扮する殺人鬼K.が眼も口も大きく広げ、暗闇で何かを叫ぶ顔を紙面いっぱいのアップで捉えている。その異様な表情から、本作の凄まじさを伝えるこの日本オリジナルのビジュアルをジェラルド・カーグル監督もたいそう気に入り、特に色合いを絶賛、「素晴らしい。見事だ」と表現した。

ビジュアルには『本物の《異常》がいま、放たれる。後悔してももう遅い』という文字が躍る。また本作公開にあたっては、以下のような注意・警告文も出されている。

※本作は、1980年にオーストリアで実際に起こった事件を描いております。当時の司法制度では裁ききれなかった為に発生した事象であり、本映画をきっかけとして以降大きく制度が変わりました。劇中、倫理的に許容しがたい設定、描写が含まれておりますが、すべて事実に基づいたものであります。本作は娯楽を趣旨としたホラー映画ではありません。特殊な撮影手法と奇抜な演出は観る者に取り返しのつかない心的外傷をおよぼす危険性があるため、この手の作品を好まない方、心臓の弱い方はご遠慮下さいますようお願い致します。またご鑑賞の際には自己責任において覚悟して劇場にご来場下さい。

アングスト/不安
2020年7月3日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
配給:アンプラグド
©1983 Gerald Kargl Ges.m.b.H. Filmproduktion

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