例年この時期にお届けしているカンヌ国際映画祭レポートも今年は新型コロナウイルスのためお休み。世界最大の国際映画祭はこの後どうなってしまうのか、心配している映画ファンも多くいるはず。そこで今年のカンヌの新たな試みとその他の映画祭との連携に至るまでの〝静かなる闘い〞をお伝えしましょう。(文・まつかわゆま/デジタル編集・スクリーン編集部)
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選択された"カンヌ2020レーベル"とは?

そして本来の開幕日の前日5月11日、フレモーは業界誌「SCREEN Daily」のインタビューに答える。ここで初めて物理的な〝カンヌ国際映画祭2020〞の開催をあきらめると言及し、セレクションを進めている作品を6月初めに発表し、秋から何らかの形でカンヌ2020セレクト、ここではレーベルという言い方をしているが、として発表したいと明かした。

ただし、このレーベルは公式上映3部門、コンペティション・特別招待・ある視点のすべてを網羅するものではない。2020初夏から2021春までの間に劇場公開される予定の作品で、カンヌ2020レーベルであることが公開のサポートになることを意図して選択を行うという。コンペティションではないので審査員はなし。審査員長スパイク・リーには来年度の就任を依頼できれば、と考えている、といったものだった。

ここでフレモーはレーベル入り3本の候補作を上げている。ウェス・アンダーソン監督『ザ・フレンチ・ディスパッチ』、ナンニ・モレッティ監督『三つの物語』、ピート・ドクター監督『ソウルフル・ワールド』だ。この三人を含め、カンヌとは縁の深い監督たちは、たとえリュミエール劇場の大階段を登れなくとも、「カンヌ映画祭」と共にありたいと作品を寄せてくれているのだという。

ではその作品をお披露目する機会は何処にあるのかという質問には、秋以降に開催されるいくつもの国際映画祭が協力を申し出てくれていると明かす。フレモー曰く「壁の外のカンヌ映画祭」というパックを作り、9月のトロント・ドービル・サンセバスチャン・ニューヨーク、10月のプサン・リュミエール、そして来年1月のアングレームという映画祭を巡りたいと考えており、特にヴェネチア映画祭では共同して作品を発表したいと思っているそうだ。

東京国際映画祭が動き出す

一方、第33回東京国際映画祭は2020年10月31日から11月9日までの開催を現時点では予定通り行なうと発表。開催に向けて作品エントリーの準備を前向きに進めていくことを明かした。本映画祭は文中にもある「We Are One:A Global Film Festival」に参加する21の映画祭の内の一つでもある。

ただし映画祭開催の条件としては参加する関係者、観客、スタッフの安全が絶対とし、今後の感染状況の推移次第で延期や中止を含めた決定も今後ありうるとしている。

ベネチア映画祭は今のところ秋に開催予定

そのヴェネチア映画祭だが、開催が危ぶまれながらも、5月4日に映画祭に参加を希望しそうな映画業界の幹部たちにアンケートを送付。5月10日を締め切りに、もし日程通り9月2日から12日に映画祭が開催される場合参加したいかと聞いた。

その結果、ヴェネチア映画祭は予定通り開催されることになったと5月24日に発表。審査員長はケイト・ブランシェットである。イタリアは6月3日に旅行を許可、EU諸国からは検疫なしで入国できるようになった。

画像: ベネチアの審査員長を務めるのはケイト・ブランシェット

ベネチアの審査員長を務めるのはケイト・ブランシェット

しかし従来通りにはいかないことを見越して、オンラインでアクセスできるスクリーニングや記者会見も考えているという。カンヌ映画祭はカンヌ2020レーベルの作品はオンライン上映を考えていないというが、旧作に関してはオンライン上映も受け入れている。

画像: トライベッカ映画祭を主催するロバート・デニーロ

トライベッカ映画祭を主催するロバート・デニーロ

4月27日に発表された、トライベッカ映画祭とYouTubeが主催するオンライン映画祭「We Are One:A Global Film Festival」に、ベルリン・ヴェネチアなど21の国際映画祭の一つとして参加を表明、5月29日から6月7日にかけ昨年の短編やパネルディスカッションをオンラインで公開した。

画像: オンライン映画祭「We Are One: A Global Film Festival 」のロゴマーク

オンライン映画祭「We Are One: A Global Film Festival 」のロゴマーク

さらに5月12日から23日の本来の会期中には、カンヌ受賞短編をオンライン公開するなどの柔軟さも見せた。フレモーの言葉を借りれば、世界中で今ほど「映画」が必要とされているときはない。ただそのプラットフォームがテレビやパソコン、スマホであるだけ。だから、映画館が再開されたら「映画」を求めるままに映画館へ出かけてほしい。そしてその行為にふさわしい作品を作家たちには作ってほしいのだ、と。

映画賞と映画祭にとっての正念場は、今年映画製作現場がストップした影響が出る来年である。すでにアメリカ・アカデミーは候補条件を配信のみの作品にまで広げ、授賞式の数カ月先への延期も検討されているらしい。けれど、映画は死なない。何回も映画の死は語られたがきっと今度も生き残る。それを信じて、2021年の作品募集まで、カンヌ2020は走り続けるのである。

公式作品リスト発表

画像: 「本気のしるし」 © 星里もちる・小学館/メ~ テレ

「本気のしるし」

© 星里もちる・小学館/メ~ テレ

2020年6月3日パリ時間18:00に、カンヌ国際映画祭2020の公式選出作品、“オフィシャルセレクション2020”が発表された。21か国から56本、女性監督の作品が16本ある。東京国際映画祭など契約を交わした映画祭においてコンペ外で上映される。

今回、オフィシャルセレクションは7つの部門に分けられた。今までカンヌ映画祭で上映されたことのある監督の作品「The Faithful」(忠実な、信頼できる)14本、ニューカマー14本、初長編監督作品15本、コメディ5本、ドキュメンタリー3本、アニメ―ション4本、そしてオムニバスが1本である。

<The FAITHFUL部門の14作>

『ザ・フレンチ・ディスパッチ』(米/ウェス・アンダーソン監督)
『85年、夏』(仏/フランソワ・オゾン)
『朝が来る』(日/河瀨直美)
『LOVERSROCK』『MANGROVE』(英/スティーヴ・マックィーン)
『DRUK(AnotherRound)』(デンマーク/トーマス・ヴィンダーベア)
『ADN(DNA)』(仏=アルジェリア/マイウェン)
『LASTWORDS』(米/ジョナサン・ノシター)
『HEAVEN:TOTHELANDOFHAPPINESS』(韓国/イム・サンス)
『ELOLVIDOQUESEREMOS(Forgottenwe'llbe)』(スペイン/フェルナンド・トルエバ)
『半島』(韓国/ヨン・サンホ)『INTHEDUSK』(リトアニア/シャルナス・バルタス)
『DESHOMMES(HomeFront)』(ベルギー/リュカ・ヴェルヴォー)
『本気のしるし』(日/深田晃司)

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