例年この時期にお届けしているカンヌ国際映画祭レポートも今年は新型コロナウイルスのためお休み。世界最大の国際映画祭はこの後どうなってしまうのか、心配している映画ファンも多くいるはず。そこで今年のカンヌの新たな試みとその他の映画祭との連携に至るまでの〝静かなる闘い〞をお伝えしましょう。(文・まつかわゆま/デジタル編集・スクリーン編集部)
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最初は延期とアナウンスされていたが…

いつもの年ならば、カンヌ映画祭から帰国する時期である。筆者のカンヌ詣でも今年は20回目を迎えるはずであったのに、新型コロナウィルスのパンデミックでカンヌ映画祭は迷走中だ。

画像: 今年の審査員長になるはずだったスパイク・リー(中央/写真は2018年のカンヌ)

今年の審査員長になるはずだったスパイク・リー(中央/写真は2018年のカンヌ)

2020年第73回カンヌ映画祭の始まりは1月14日に審査員長がスパイク・リーに決まったというリリースだった。次にプレスの参加申請受付が2月3日に始まり、3月6日には今年の公式セレクションの発表は4月16日であるとリリースされ、いよいよだな、と思っていた。が、その間にもコロナウィルスはフランスを侵し、ヨーロッパを侵し、世界を侵し続けていたのである。

フランスで最初の感染者が出たのは1月25日。2月15日に最初の死者が出て3月17日、フランス大統領はフランス全土にロックダウンを宣言。EU各国の国境も封鎖された。3月4月に開催される各国の映画祭は次々と中止または延期になっていく。そんな中で3月20日、カンヌのプレスオフィスからメールが届く。「5月12日から23日の開催は中止します。6月の末から7月の初めに延期する予定で関係各所と協議中です」。

ここで、73回目にして初めてカンヌ映画祭は開催中止の憂き目を見ることになったのだ。いや、この時はまだ、中止ではない、延期であると言っていた。しかし、コロナウィルス感染の事態は好転するどころか悪くなるばかり。3月26日Q&A集が公式サイトに掲載された。それによれば、カンヌ映画祭の、文化・経済両面を含めた映画界における重要性を鑑みて、映画祭は中止されるべきではなく、可能な限り延期の道を探るべきだということになった。

作品の応募及び様々な登録については締め切りを1か月から1か月半延ばして選考は引き続き行われ、最終選考作品は開催の一月前に発表されるだろう。と、この時点では延期開催への意欲が示されていた。

カンヌのポリシーではデジタルはありえない

しかし、4月に入るとますますフランスの感染状況は悪化。禁止されるイベントの規模が拡大され、希望が消えた。4月13日マクロン大統領は、5月11日まで映画館などの封鎖を続けること、7月中旬までの大規模イベントの中止など、緊急事態宣言の継続・拡大を宣言し、カンヌ映画祭が希望していた6月末から7月初めへの映画祭延期の道は断たれた。

4月15日には批評家週間・監督週間・ACIDという並行週間が中止を発表。映画祭事務局も延期を断念するが、どうにかしてカンヌ2020を形にすべく検討を始めたと発表する。

そして翌16日。総代表ティエリー・フレモーがフィガロ誌のインタビューに答える形で新たな公式見解を発表。

それによると、物理的に第73回カンヌ映画祭を開催するのは難しいことを認め、しかし、選出した作品に関しては何らかの形でカンヌ2020レーベルのような形で発表したい。とはいえ、カンヌ映画祭のポリシーとして、デジタルでの開催はあり得ない。ただし、マルシェに関してはこの限りではなく、カンヌ2020のマルシェ・ド・フィルムとして6月22日から26日までオンラインで開催する、とのこと。

画像: 映画祭開催に向け奔走したティエリー・フレモー代表(左/写真は2019年のカンヌ)

映画祭開催に向け奔走したティエリー・フレモー代表(左/写真は2019年のカンヌ)

フレモーが主催するリュミエール映画祭を例に挙げ、映画をスクリーンで見たいという観客は必ずいる。新作ばかりではなく古典もスクリーンで見たいものなのだと、フレモーは説く。リュミエール兄弟の国フランスでは、「映画」はスクリーンで、暗闇の中、多くの観客と共に見る、ものなのだ。それをカンヌは主張し続けてきた。

米アカデミー賞にも異変が?

次回アカデミー賞にも変化が?( 写真は第88回のもの)

2021年2月末に開催される予定だった第93回アカデミー賞授賞式が、2ヶ月後の4月25日に延期されることが明らかとなった。これに伴い候補に挙がる作品の公開時期も、2020年内から2020年1月1日~2021年2月28日に期間が延長される。

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