新型コロナウイルスが広がり始めてから連続でお届けしている“ハリウッド現地レポート”第三弾は、ようやく活動再開が見えてきたハリウッドの“今後”を調査。映画館への入場方法から製作現場の状況、プレミア開催のあり方まで多くの変化が見られそうです。(文・LA在住 荻原 順子/デジタル編集・スクリーン編集部)

新作撮影再開のニュースもちらほら聞こえてきたが……

映画の製作現場でもコロナウイルス感染が懸念され、2月から3月にかけて次々と新作の撮影が中止になっていたが、例えば、6月初めには「アバター」続編の撮影を再開するためにジェームズ・キャメロンがニュージーランド入りしたなどのニュースが少しずつ入ってきている。ただ、撮影再開にあたっては、様々な改革が必要になることが予想される。

「アバター」続編をニュージーランドで撮影開始するジェームズ・キャメロン監督

ハリウッドの大作の場合、撮影現場で仕事する人数は300人ほどになるが、ウイルス感染を防ぐためにはその1/4の75人ぐらいに減らすのが理想的だと考えられている。その点からは、低予算映画やTV番組などが大作映画に先がけて製作が再開されることになるだろうが、大作の製作にあたっても、製作現場で働く人数を削減したり、撮影時間を短くする方策がとられることになろう。

具体的には、例えば監督が撮影監督を務めたり、プロダクション・デザイナーがセット・デコレイターも務めたりといった兼任の推進を図ったり、俳優を現場に召集するコールタイムを見直したりすることによって現場に居るスタッフやキャストの人数を最小限にすることや、テイクの数をなるべく抑えて効率良い撮影を進めるなどといった努力が要求されるのではないかと思われる。

6月12日以降一定の条件を満たせば映画・ドラマの製作を認めるとカリフォーニア州知事が発言したが…

撮影現場では、さらに、コロナウイルス感染予防に特化したスタッフの配置も必要になってくるだろう。映画やTVの撮影現場には、元々、メディックと呼ばれる医療スタッフが常駐しているが、演劇・映画・TV界で働くスタッフの組合である国際演劇雇用者同盟は、コロナウイルスの集団感染を予防するためのトレーニング・プログラムを作成。

これに従い、現場には検温係やコロナウイルス検査係など、これまでには無かった役割を果たすスタッフが加わることになりそう。このような措置は、現場で働くスタッフだけでなく、出演者たちにも安心感を持って仕事してもらうために重要だと考えられている。

新作のプレミアやイベントがバーチャルで開催される?

多くの業界人が集まり、報道陣なども交えながら試写会場やパーティ会場で社交を繰り広げるプレミアは、映画館や撮影現場よりも密閉・密集・密接の機会が多く、世界中にコロナウイルス感染が広がった2020年3月以降は、軒並みキャンセルされてきた。

そこで考案されたのがヴァーチャル・プレミア。オンライン会議などで広く使われているアプリケーション、ZOOMを使用してキャストやスタッフによる作品紹介がライブで流され、指定した時間にオンライン試写を行うといったやり方で、話題作のネット配信開始のプロモーションとして、人気を集めつつある。

ヴァーチャル・プレミアにさらなる工夫を加える会社もある。アマゾン・スタジオは、ジーン・セバーグの死にまつわる状況を描く「セバーグ」が5月15日にネット配信開始となるのを機してヴァーチャル・プレミアを催したが、ネット配信の試写にとどまらず、地元の店からのディナーやワインを招待客の自宅に送り届けた。

画像: バーチャル・プレミアが催されたクリステン・スチュアート主演『セバーグ』

バーチャル・プレミアが催されたクリステン・スチュアート主演『セバーグ』

アナ・ケンドリック主演のオムニバス形式のロマコメ・ドラマ「Love Life」を製作・放映するHBOMaxは、“after party”というオンライン・イベントを企画。同ドラマのエグゼクティブ・プロデューサー、ポール・フェイグがバーテンダーを務めるバー、セレブDJが自宅からライブで音楽を提供するリビングルーム、プロのマッチメイカーが恋愛アドバイスをする部屋、そして同ドラマで使われるサントラを歌えるカラオケルームと、4つの“部屋”をヴァーチャルで訪ねられるという趣向で招待客たちを楽しませた。

画像: ポール・フェイグの特別イベント“after party”がネット上で行われた

ポール・フェイグの特別イベント“after party”がネット上で行われた

このヴァーチャル・プレミアでも、ニューヨークとロサンゼルスの招待客には、地元のレストランから2人分のドリンク付きディナーと、番組にちなんだ記念品が送り届けられた。

他の業種と同様、もしかしたら他の業種以上にコロナウイルス禍の影響を受けているハリウッドだが、様々なテクノロジーを導入しながら創意工夫を凝らしたショーマンシップを発揮して、“コロナの時代の新しいハリウッド”を築き上げていってほしいものである。

Photos by Getty Images

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