「とんび」や「流星ワゴン」など大切なものを失った家族の再生を描き続けてきた作家・重松清の小説を映画化した『ステップ』。
今作で主人公・健一の義父役を演じた國村隼のインタビューをお届けする。

妻に先立たれた男性がシングルファザーとして奮闘する姿や娘との絆、成長を描いた本作。主人公の健一を演じるのは山田孝之、健一と娘の美紀を温かく見守る登場人物を國村隼、余 貴美子、広末涼子、伊藤沙莉、川栄李奈など豪華俳優陣が演じている。
自身も娘を失った悲しみを抱えながら、まるで実の息子のように健一と接する義父の明を演じた國村隼が、撮影秘話や今作を通して感じたことや役について、更に好きな映画やハマった海外ドラマについて語ってくれた。

画像: 大切なものを失った人たちの10年間を描く
映画『ステップ』國村隼インタビュー

自分の人生は一度きりでも、
俳優としてはフィクションの中で色んな人生が体験できる

ーー原作や台本を読まれた時に、主人公の義父である明に対してどのような印象を持ちましたか?

「僕は新しく作品に入る時にいつも考えるのは、例えば絵を描くときに全体のバランスや色合い、構図などを考えると思いますが、それと同じように作品全体の中の役のキャラクターをイメージしてみます。本作の明は意外にも子供っぽい部分を残した大人をイメージしてみました。実はそういう部分は僕自身とかぶるところがあって(笑)。ただ、チャイルディッシュなだけではなく、片や自分の守るべきものや愛情を注ぐ対象には惜しみなく全てを捧げることのできる人でもあるんですよね。そんなイメージを持ってアプローチしていきました」

ーー現役時代の明は職場で厳しかったようですが、引退して家族と接している時の明はとてもチャーミングな印象を受けました。

「まぁ、立派な大人ではないですけどね(笑)。奥さんがよくできた人なんだと思います。きっと子供っぽい部分は仕事で発散させていたんじゃないかなと。子供と同じ、内弁慶なのかもしれないですね。後半は明にとって辛いことが起こりますが、変わらずチャイルディッシュな人で演じようと思いました」

ーー主人公の健一を山田孝之さんが演じていますが、本作でご一緒されてみていかがでしたか?

「山田くんとは何度かご一緒していますが、共演する前から彼に対して“頭で考えたような理屈っぽいお芝居をする方ではないだろう”と感じていたんです。実際にご一緒してみると、その想像は当たっていました。山田くんはお腹の中からごろんと別人になるタイプ。エキセントリックなキャラクターも数多く演じてらっしゃいますが、本作の健一はとても普通の男なんですね。俳優にとって普通の人を演じるのは凄く難しいと思っているのですが、山田くんはサラッと演じてらっしゃいました」

画像1: 自分の人生は一度きりでも、 俳優としてはフィクションの中で色んな人生が体験できる

ーー健一と明は義理の親子でありながらも、お互いに思いやりを持って接している素敵な関係性でした。撮影中お2人はどのようにコミュニケーションをとってらっしゃったのでしょうか?

「山田くんも僕も理屈で考えて演じるタイプではないので、やはり役以外で、ある程度コミュニケーションをとるのは大事でした。お芝居が予定調和にならないようにするためにもそれは必要なことで、キャメラが回っていないところで僕らがどのようなコミュニケーションをとっていたかというのは画面にも映るはずなんです。作品の空気を作ることが俳優の仕事でもありますが、山田くんとのお芝居は、彼から何が出てくるかわからないですし、フッと興味をそそられて引っ張られることもあったりして非常に楽しかったです」

画像2: 自分の人生は一度きりでも、 俳優としてはフィクションの中で色んな人生が体験できる

ーー明を演じたことで気付いたことや意識が変わったことがあれば教えて頂けますか。

「本作に関わる前までは例え孫ができても“目の中に入れても痛くない”なんてことは思わないかもしれないと、そんな風に感じていたんです(笑)。ところが明を演じたことで、僕も孫ができたら彼と同じような気持ちになるのかもしれないと、ちょっと思ったりしています」

ーー俳優というお仕事はお芝居を通して色んなことを発見したり、自分ではない人生を疑似体験できるというのがモチベーションのひとつになっているのではないかなと思いました。

「そうですね。俳優という仕事をするうえで、それは間違いなく僕の楽しみのひとつであり、モチベーションになっていると思います。自分の人生は一度きりですけど、俳優としてはフィクションの中で色んな人生が体験できますから、それは面白いし得がたい体験なんじゃないでしょうか」

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