LA在住の映画ジャーナリストとして活躍中の筆者が、“SCREEN”のインタビューなどで毎月たくさんのスターに会っている時に、彼らの思わぬ素顔を垣間見ることがあります。誰もが知りたい人気者たちの意外な面を毎月一人ずつお教えする興味シンシンのコーナーです。今回は、第77回ゴールデングローブ賞にてアジア系女優初の主演女優賞という快挙を成し遂げたオークワフィナに話を伺いました。

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて38年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

聞きなれない芸名の由来は二つの言葉の組み合わせ?

「フェアウェル」(2019)で中国語もあまり話せないアメリカ生まれのオークワフィナは日夜、中国語を練習し、はじめてのドラマ作品に主演して晴れてゴールデングローブ主演女優賞(喜劇、ミュージカル部門)を受賞。その1年前まではハリウッドでは全く無名のアジア系タレントだっただけに嬉しさよりも、驚きのほうが大きかったようで舞台上の挨拶は彼女らしい自己否定のジョーク交じりのコミカルな内容だった。

その直後に今度はアクション映画「ジュマンジ/ネクスト・レベル」でドウェイン・ジョンソンやジャック・ブラックと互角でコミカルな場面を盛り上げている。

目下怖いものなしのように出世街道マーチングのオークワフィナに初めて会ったのは「オーシャンズ8」(2018)の時。奇天烈な服装を着るので知られているせいか、この日も極彩色のドレスに全く違う色のソックスにブーツという目がチカチカするようなスタイルで現れた。

『「オーシャンズ8」のプレミアで司会者がサンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイなどとスターの名前を呼び上げて私の番になったら「ええ、アーク…」なんて読めなくって笑っちゃったけれど、実は16歳の時ラップ歌手としてのステージネームとして思いついたの。これでも凄くシャイでぎこちなかったから「awkward」っていう言葉と、ボトル水の名がごちゃまぜになって「オークワフィナ」になったわけ』

と、げげげと変な声で笑って自己紹介。お茶目というのか、ニューヨーク風のドライな表現が彼女のトレードマークのようだ。これまで撮ったツーショットもすべて「お馬鹿な顔」で、オスマシしたりするのを死にそうに嫌っている様子が何とも微笑ましい。

「フェアウェル」の祖母と別れるシーンでは号泣また号泣しちゃった!

画像: 「フェアウェル」2020年10月2日公開

「フェアウェル」2020年10月2日公開

中国系アメリカ人の父親と韓国人の母の間にニューヨーク市に生まれて漢字名は「林家珍」(ラム・カーチャン)とあの林家三平の親戚みたいなのもおかしいが、4歳で母を亡くし、かなり父方の祖母の世話になったそうで「フェアウェル」の役は心底身につまされたそうだ。

『ガンで余命幾ばくもない祖母に事実を伝えないアジア流の優しさは凄くよく分かる。この話を祖母とエルサルバドル人の叔母に話したら祖母は黙ってうなずいていたけれどラテン女性の叔母は、バッカじゃないの!絶対に伝えるべきよ!と情熱的に抵抗していたわね。中国語はほとんど話せないから必死で勉強したけれど、箸を落とすと賭けで負ける、とか、家の中で傘を開くとバチが当たるってな慣習はこれでもかなり知っているのよ。

わたしの祖母は毎日陽気な顔で「死ぬのが待ち遠しい」なんて言うのだけれど、アジア人の死に対する姿勢は健康で良いと思うわ。中国でのロケで、クルーがどんな時でも老人たちに尊敬の心を持ってあたるのを目の当たりにして老人になったら中国に移ろうかと本気で思ったりしたのだから。

映画の中の祖母と別れる場面で本当に泣けるかどうかすごく心配だったけれどリハーサルから泣きっぱなしで本番ではもう、号泣に次ぐ号泣で呼吸困難になった程。ここまで役が乗り移ったのは初めてで、演技って深いものがあるのだなあと痛感してしまった』

「ジュマンジ…」の会見はメキシコで行われ、『私ね、田舎には絶対住めないの。スマホの店舗が近くにないと不安で駄目。最近歯を抜いたんだけれど、食べられないから体重がドンと落ちたのね。だから減量するには歯を悪くすることだなと悟ったりして』とまた、げげげと笑ったりしていた。さっぱりとして、才気に溢れた、我らがアジアの星、オークワフィナのハリウッド成功ストーリーは何とも頼もしいのである。

Photo by GettyImages

前回の連載はこちら!

This article is a sponsored article by
''.