昨年のヴェネツィア国際映画祭において、『ジョーカー』と並んで話題を集めた問題作『異端の鳥』。新型コロナウイルスの感染拡大による影響で公開延期となっていた本作が、新たに10/9(金)より全国ロードショーとなることが決定。あわせて日本版予告編も解禁された。

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悪魔と呼ばれた少年はたった1人で人間の悪意に立ち向かう

第二次大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるために、たった一人で田舎に疎開した少年が差別と迫害に抗いながら強く生き抜く姿と、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”を赤裸々に描いた本作は、ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映されると、少年の置かれた過酷な状況が賛否を呼び、途中退場者が続出。

しかし、同時に10分間のスタンディングオベーションを受けユニセフ賞を受賞し、同映画祭屈指の話題作となった。その後も多くの批評家から絶賛を浴び、本年度アカデミー賞国際長編映画賞のチェコ代表に選出、本年度のチェコ・アカデミー賞(チェコ・ライオン)では最多の8部門を受賞した。

原作は、ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した「ペインティッド・バード」。ポーランドでは発禁書となり、作家自身も後に謎の自殺を遂げた“いわくつきの傑作”を、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督が実に11年もの歳月をかけて執念ともいえる映像化を果たした。

このたび主人公の幼い少年を襲う容赦ない迫害や人間が持つ悪意を捉え、3時間に及ぶ驚異の映画体験を予感させる壮大な日本版予告編も解禁。映像は、主人公の少年が大切そうにか弱いフェレットを抱え、息を切らしながら懸命に何者かから逃げようとする映画のオープニングシーンで幕を開ける。

そして、次の瞬間、体当たりしてきたのは、彼と背丈の変わらない幼い少年だった――。家族とはぐれた少年は、瞳や髪、肌の色が違うために行く先々で“よそ者”“異端”扱いされ、差別され、「この子は悪魔の使いだ。我らに死を招く」という言葉まで向けられる。

人々の憎悪と暴力の矛先は、少年だけに留まらない。戦争という狂気のうねりの中で多くの人命が虫けらのように扱われ、自己正義や嫉妬といった大義名分のもと人間が持つ凄まじい残虐性があぶりだされていく。幼気な少年は「家に帰る」という強い願いを胸に人間の悪意にたった一人で立ち向かい、圧倒されるような大自然の中をさまよいながら、逞しく生き抜いていく。

マルホウル監督は、本作製作にあたって「『異端の鳥』は悪についての探求、そして善と共感、愛についての物語です。本作の中に善と愛を発見する時、我々はその本質に感謝し、より多く求めます。これは人間が善を求めているという映画のポジティブなメッセージです。主人公の少年が“家に帰りたい”と泣いたとき、観客の皆さんも愛のある安全な場所に、家に帰りたいと思うでしょう。そして、私は『異端の鳥』が提起する質問に悩まされています。“人間は罰を受けることがなければ、悪に向かう”と言う心理学者は正しいのでしょうか? はたして悪は人生の闘いの中で、避けられないものなのでしょうか? 私はまだこれらの答えを探し続けています。そして、特に今の時代における答えを知りたいと思っています」と語る。

本作では、『コーリャ 愛のプラハ』などオスカー受賞作品も手掛けた、チェコ映画界きっての巨匠ウラジミール・スムットニーが撮影監督を担当。全編モノクローム35mmフィルムで撮影された映像は、残酷でありながらも自然にあふれた田舎の雄大な景観と見事に調和し、一コマ一コマがまるで名画のように美しく、非常に強い余韻を残す映像となっている。映像のラストで描かれる、その小さな手から鳥が放たれる場面の息をのむような美しさも印象的だ。

異端の鳥
2020年10/9(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
配給:トランスフォーマー
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