米日の豪華キャストが贈る話題作「ミッドウェイ」の見どころを徹底解説! 監督を務めた“スペクタクル映画の巨匠”のインタビューで製作の裏側にも迫ります。(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)

レビュー:空前のアクション体験を確約してくれる一作

「インデペンデンス・デイ」など次々と特大ヒット作を送り出してきた、ローランド・エメリッヒ監督。その待望の新作は、第二次世界大戦で語り継がれる「ミッドウェイ海戦」を、超スペクタクル映像で描く戦争アクション大作だ。

1941年、日本軍によるハワイの真珠湾(パール・ハーバー)攻撃によって、日米が本格的に開戦。アメリカ側が報復として、日本本土への爆撃を開始する。さらにその後の戦況を大きく左右したのが、1942年、3日間におよぶハワイ、ミッドウェイ島の沖での戦いだった。

両国の攻防を、壮大なスケール感で再現し、「大和」や「赤城」といった、日本が誇る戦艦や航空母艦が登場。対する米軍は、若き兵士たちが乗り込んだ戦闘機による決死の任務や、潜水艦を駆使した作戦など、まさに陸・海・空でのスペクタクルが展開していく。ローランド・エメリッヒらしいダイナミックなバトルの演出と、最先端のVFXが見事に融合し、空前のアクション体験を確約してくれる一作だ。

ド派手バトルに興奮させながら、暗号解読など相手の裏をかく「情報戦」も進行。さらに真珠湾攻撃の後、アメリカ海軍の新たな指揮官についたニミッツ大将と、日本側の司令官、山本五十六の苦悩と決断のドラマも見どころになっている。

注目したいのは、この「ミッドウェイ」がハリウッド映画にもかかわらず、アメリカと日本、それぞれの立場をかなり客観的に描いている点。このあたりは、ドイツ出身のエメリッヒ監督ならではのアプローチ。

エメリッヒは、このミッドウェイ海戦の映画を20年間も構想していただけあって、綿密なリサーチを重ねて、歴史に残る戦いと、その裏で進行した人間ドラマを作り上げた。ウディ・ハレルソン、パトリック・ウィルソンなどアメリカ軍側のキャストにはシブい演技派スターがそろったが、日本側も、山本五十六役の豊川悦司のほか、浅野忠信、國村隼と実力派が集結。

彼らのシーンは、われわれ日本人が観ても共感度が高いのがポイントだ。ここ数年、ハリウッドが意識する「多様性」を、今作はパーフェクトに備えており、すでに公開されたアメリカでも予想以上のヒットと高い評価を得ている。

歴史を変えた戦争の陰で、司令官や兵士たちは何を思い、どんな犠牲をはらったのか? 観終わった後、熱い何かがこみ上げてくる「ミッドウェイ」。新型コロナウイルスの影響でハリウッド大作の公開が少ない2020年なので、久しぶりに大スクリーンで重量級の興奮と感動を味わえることだろう。

ローランド・エメリッヒ監督 インタビュー

去の映画で観たことのないシーンを入れるのが僕のポリシー

ローランド・エメリッヒ監督

画像: 米日豪華キャストが贈る話題作「ミッドウェイ」を徹底解説!【監督インタビューあり】

「インデペンデンス・デイ」シリーズなどで知られるスペクタクル映画の第一人者。ほかの主な監督作に「デイ・アフター・トゥモロー」「2012」などがあり、“破壊王”の異名も。

── 20年前に「ミッドウェイ」の映画化を思いついたそうですが、きっかけを教えてください。

「20年以上前、ミッドウェイに関するドキュメンタリーを観たこと。そして僕の叔父がドイツ軍の戦闘機パイロットだったことで、映画化を構想し始めた。叔父は急上昇と急降下による気圧の変化で疾患を抱え、戦争後すぐに亡くなってしまったんだ。さらに子供時代から第二次世界大戦の空中戦には興味があった。でもマイケル・ベイの『パール・ハーバー』が始動したりして、何度か企画は中断した。ようやく5年ほど前に、父親がネイビー(アメリカ海軍)という脚本家に出会って、製作が動き出したのさ」

──戦闘機のアクションは、あなたの映画らしいスペクタクル感です。

「現代の戦争では、人工衛星で射程を決めるロケット爆撃が主流だが、当時はパイロットの腕が頼りだった。上空5000mくらいから標的に向けて急降下する。翼に取り付けたカメラによる当時の記録映像を見て僕は驚き、ぜひとも再現したいと思った。過去の他の映画で観たことのないシーンを入れるのが僕のポリシー。今回はそれが、急降下爆撃シーンだよ」

──日本人キャストの起用と演出は、あなたにとっても新鮮だったのでは?

「(豊川)悦司は最初、山本五十六がアメリカ映画でどう描かれるのかナーバスになっていた。だから僕は日米のバランスをとって演出すると説得した。僕にとっての五十六のイメージは、知的な戦略家でエレガントな人物。そのエレガントの面で悦司以外に考えられなかった。日本人俳優との仕事は、セリフを理解できなくても、どのテイクが最高なのかはわかったので、僕にとって新たな発見だったね」

──ここ数年、ハリウッドは人種の「多様性」を意識していますよね。

「それはあまり関係なくて、戦争映画は両サイドの視点を描くというのが僕の信条だ。たとえばこれがメジャースタジオの作品だったら、『もっと日本のシーンを削れ』と言われただろう。それが嫌だったので、自分の権限が強くなるインディペンデントのスタジオで製作し、全体の40%くらいで日本側を描くことができた」

──次回作の「Moonfall」は地球に月が落ちてくる映画のようですが……。

「『インデペンデンス・デイ』や『2012』のようなディザスター映画でSFの一面もある。そこに少しだけ僕の哲学的テーマを盛り込む予定さ(笑)」

ミッドウェイ
2020年9月11日(金)公開

原題:ミッドウェイ
製作国:米=中=香港=カナダ
製作年:2019
時間:2時間18分 
配給:「キノフィルムズ」

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:エド・スクレーン、ウディ・ハレルソン、パトリック・ウィルソン、豊川悦司、浅野忠信、國村隼

Midway © 2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.

Produced by……………Roland Emmerich Harald Kloser
Directed by……………Roland Emmerich
Screenplay by…………………Wes Tooke
Director of photography…Robby Baumgartner
Music by…………………Thomas Wanker Harald Kloser
CAST
Dick Best…………………………Ed Skrein
Edwin Layton………………Patrick Wilson
Wade McClusky………………Luke Evans
Jimmy Doolittle……………Aaron Eckhart
Isoroku Yamamoto……Etsushi Toyokawa
Tamon Yamaguchi……Tadanobu Asano
Chuichi Nagumo……………Jun Kunimura
Chester W. Nimitz……Woody Harrelson

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