本作で山本五十六を演じた豊川悦司のインタビューをお届けする。
ただ職務や任務を全うするためにはどうすればいいのかという考えのもとで、それを俳優達が懸命に体現しているような、そんな感じが僕は好きでした
ーー昨年10月に行われたハワイでのプレミアイベントでエメリッヒ監督が「初めて試写をした時に何度も耳にしたのは、日本人俳優たちを絶賛するアメリカ人・イギリス人俳優たちの声だった」とおっしゃっていましたが、逆に豊川さんにとって外国人俳優の皆さんのお芝居で印象に残ったことがあればお聞かせ頂けますか。
「これまで外国映画を観ていて、“なんでこんなにも俳優のお芝居がナチュラルなのか”とずっと思っていたんです。もしかしたら台詞が英語だからナチュラルに聞こえるだけなのかもしれないとかね(笑)。それで今回現場で実際にご一緒してみてわかったのは、彼らは本当にとてもナチュラルにお芝居をするということ。どんなに大げさなシーンであっても過剰なことはせず、あくまでもリアルに動くんです。そこがもしかしたら日本のお芝居のあり方とは少し違うのかなと。
振り返ってみると、日本の歴史の中でお芝居(演劇)というのは祭事と深く結びついていて、多少デフォルメされた芝居が日本人の好みでもあると思うんです。でも、アメリカのアクティングシステムというのは、とてもドライでウェットじゃない感じがするというか。そこが僕は好きだなと本作の現場で改めて感じました」
ーー過剰なお芝居で観客の感情を誘導しないということでしょうか?
「チャールズ・ディケンズの小説で登場人物の感情を読者が読み取るような芝居というか、俳優が役の感情を盛ることはあまりないのではないかなと今回思いました。本作を観ても、どの登場人物も“日本人が憎い”とか“アメリカ人が憎い”といった感情を押し出すお芝居は誰一人していなくて、ただ職務や任務を全うするためにはどうすればいいのかという考えのもとで、それを俳優達が懸命に体現しているような、そんな感じが僕は好きでしたね」
ーーハワイのプレミアイベントの話に戻りますが、共演シーンがなかった俳優の皆さんと交流されてみていかがでしたか?
「僕がこの仕事を始める前からウディ・ハレルソンさんやデニス・クエイドさんは活躍されていたので、そういった方々と肩を並べることができて光栄でした。皆さんオーラが凄かったですし、デニスさんを見た瞬間に“カッコイイ!”と思わず心の中で言ってしまうぐらい素敵で(笑)。プレミアイベント後のパーティーではこの日が初対面の方々とも交流できて楽しかったですし、ご褒美のような素敵な時間を過ごすことができました」
ーーその時に印象に残ったエピソードがあれば教えて頂けますか。
「エド・スクラインさんは座長として周りに凄く気を遣っていて、パーティーや取材の時に率先して“こうやって写真撮ろう”とまとめてくれていました。ウディ・ハレルソンさんからは“日本の原子力政策はどうなんだ?”と質問されて、大汗かいて四苦八苦しながら答えた記憶があります(笑)。彼は環境保護運動や反戦活動をされているからそういうことを聞いてきたのではないかと。あとは皆さん“とても良い芝居だった”と日本人俳優のお芝居に関して感想を言ってくれたことが強く印象に残っています」
ーーウディ・ハレルソンさんと言えば、Netflixのオリジナル映画『Kate(原題)』の撮影現場で國村隼さんが“君は『アベンジャーズ』をどう思う?”とウディさんに聞かれたとおっしゃっていたので、豊川さんへの質問とのギャップが凄いなと…(笑)。
「面白い方ですよね(笑)。僕はウディさんと同世代なんですけど、『ノーカントリー』の彼の役柄がとてもハマっていましたし大好きな俳優さんです。彼と原子力問題について語り合ったあと、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を見直したりしました」
ーー最後の質問になりますが、豊川さんは普段ジャンル関係なく幅広い作品をご覧になりますか?
「割とそうですね。ただ、最近は子供が小さいのでディズニー映画ばかり観ています(笑)。新作がすぐに配信されたりNetflixがオリジナル作品を作っていたりと、昔に比べて今は映画が凄く身近になっているように思います。ただ、『ミッドウェイ』のような映画は映画館で鑑賞するのをオススメしたいですね。家のテレビで観るのと映画館で観るのとでは全然印象が違ってくると思うので、是非劇場の大きなスクリーンで体感して頂けたら嬉しいです」
(インタビュアー・文/奥村百恵)
<STORY>
1941年12月7日(日本時間12月8日)ハワイ諸島、真珠湾(パールハーバー)に停泊していたアメリカ海軍の艦隊が、日本軍の艦上機部隊によって急襲された。大将山本五十六(豊川悦司)の命により、南雲忠一中将(國村隼)や山口多聞少将(浅野忠信)らの空母機動部隊が、奇襲攻撃を仕掛けたのだった。ハルゼー提督(デニス・クエイド)率いる空母エンタープライズが報せを受け、パイロットたちが日本艦隊を追うが、既にその姿はなかった。カリスマパイロットとして一目置かれているディック・ベスト(エド・スクライン)らは真珠湾に帰港し、その惨状を目の当たりにして愕然とする。兵力とプライドに大打撃を受けたアメリカ軍は、士気を取り戻し、日本に反撃するため、太平洋戦域の新たな総司令官に、ニミッツ大将(ヴディ・ハレルソン)を任命する。ニミッツは着任早々、情報将校のレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)に、「山本大将の考えを読み、彼の次の動きを教えろ」と命じるのだった。
『ミッドウェイ』
9/11 (金) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
監督・製作:ローランド・エメリッヒ 脚本:ウェス・トゥーク 製作:ハラルド・クローサー
キャスト:エド・スクライン、パトリック・ウィルソン、ルーク・エヴァンス、アーロン・エッカート、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、マンディ・ムーア、デニス・クエイド、ウディ・ハレルソン
2019年/アメリカ/カラー/上映時間:2時間18分/配給: キノフィルムズ 提供:木下グルー
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