シャーリーズ・セロンやグサヴィエ・ドランも大絶賛!18世紀の仏ブルターニュを舞台に、結ばれるはずのない運命のもとで惹かれ合う女性二人の愛を描く「燃ゆる女の肖像」。2020年12月4日(金)に公開される本作のあらすじと、セリーヌ・シアマ監督へのインタビュー、映画ライター よしひろまさみちさんのレビューを併せてご紹介します。

肖像画を描くという作業を通してお互いを理解し合う二人の女性

監督兼脚本は長編デビュー作「水の中のつぼみ」(2007)からその才能を高く評価されてきたセリーヌ・シアマ。本作でカンヌ国際映画祭の脚本賞と女性初のクィア・パルムを受賞した。

肖像画のモデルとなるエロイーズ役には、「水の中のつぼみ」でも組んだアデル・エネル。監督は私生活でもパートナーだった彼女を念頭に置いて脚本を執筆したという。エロイーズと恋に落ちるマリアンヌ役には「英雄は嘘がお好き」のノエミ・メルランを抜擢、「スクールズ・アウト」の新星ルアナ・バイラミ、「リーピング・ラスベガス」のヴァレリア・ゴリノが色を添える。

画像: 肖像画を描くという作業を通してお互いを理解し合う二人の女性

伯爵夫人(ヴァレリア)から娘のエロイーズ(アデル)の見合いのための肖像画を依頼され、ブルターニュの孤島にある館を訪れた画家マリアンヌ(ノエミ)。しかしエロイーズは結婚を拒んでいたため、マリアンヌは身分を隠して彼女に近づき絵筆を走らせる。

だが、ようやく完成させた肖像画は素性を知ったエロイーズに酷評されてしまう。夫人から館を追放されそうになったマリアンヌに対し、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。製作期間は5日間、島を散策し音楽や映画について語り合ううち、二人は恋に落ちる。

登場人物

画像1: 「燃ゆる女の肖像」名画のような映像美で描く儚くも美しい愛の物語
画像2: 「燃ゆる女の肖像」名画のような映像美で描く儚くも美しい愛の物語

エロイーズ(アデル・エネル)
望まぬ結婚を控えた貴族の娘。肖像画を描くために雇われたマリアンヌと惹かれ合う

マリアンヌ(ノエミ・メルラン)
エロイーズの母である伯爵夫人から依頼を受け、孤島の館へやって来た画家

セリーヌ・シアマ監督へQ&A

画像4: 「燃ゆる女の肖像」名画のような映像美で描く儚くも美しい愛の物語

PROFILE
1978年11月12日、フランス生まれ。長編デビュー作「水の中のつぼみ」(2007)がいきなりカンヌ“ ある視点部門” に選出、続く「トムボーイ」(2011)、『ガールフッド』(原題/未)、脚本で参加した「ぼくの名前はズッキーニ」(2016)と作品を発表するごとに評価を高めている今最も注目される監督の一人。本作は長編4作目となる。

── Q.今作はキャスト・スタッフがほぼ女性ですね。

A. すべてにおいて対等な関係を描くため、意図的にそうしました。障害や抑圧ではなく、女性が秘めている可能性、喜び、親密性を描きたかったのです。

── Q. 女性同士の愛をテーマにした理由を教えてください。

A. 女性同士の愛を描いたのには、先入観を打ち破りたいという意味もありました。また、実は同性が好きかもしれないと悩む現代の女性に、過去にも女性同士で愛し合った者たちがいたと知らせることで勇気づけられればという思いもあります。

── Q. なぜ画家とモデルという設定にしたのですか。

A. 画家とモデルは互いに視線を送り合いますよね。肖像画を描くことで見つめ合う二人と互いに愛する相手を見つめるという、二重構造にしたかったのです。

── Q. 参考にした作品はありますか。

A.『ピアノ・レッスン』と『バリー・リンドン』は時代物ながら型にはまらない新しさを感じていたので意識しました。他に参考にした作品は特になく、新しさを追求しました。

── Q. 次回作について聞かせてください。

A.1週間後に撮影に入るのでまだ秘密ですが、大人と子供が一緒に見られる作品です。

「燃ゆる女の肖像」レビュー By 映画ライター よしひろまさみち

ひとくくりに「LGBTQ+」といっても、それは性の多様性の象徴。レズビアン、ゲイ、トランスジェンダー、クィア……、さまざまな性のあり方をざっくりまとめているだけ。『燃ゆる女の肖像』のことを「LGBTQ+映画」なんて言ってる人がいたら、注意してあげて。これは、まぎれもなくレズビアン映画の傑作なんだから!

ある貴婦人から、娘のエロイーズの肖像画を依頼された画家のマリアンヌ。これはワケあり案件で、じつはエロイーズが望んでいないお見合い用の肖像画。なので、マリアンヌは孤島にある屋敷にいるエロイーズに、画家であることを隠して生活を共にすることに。

画像: 「燃ゆる女の肖像」レビュー By 映画ライター よしひろまさみち

次第に打ち解けた2人の間には、特別な感情が……というお話。18世紀が舞台なので、女性の人生のゴール=結婚というのも納得だし、叶わぬ恋になるのもミエミエ。だけど、これがもう……静かなる『キャロル』ともいうべき大傑作!

でもキャロラーの方々や『アデル、ブルーは熱い色』などのファンに刺さらないかも、と心配するのが、その2作ほどエキセントリックな事件や出来事はおきないこと。結果的にはメロドラマ(それは冒頭のマリアンヌの表情だけでわかります)で、いろんなことがバレるかバレないかのスリルも満点なんだけど、なんせ淡々としているのね。

山あり谷ありのハリウッド映画ではない、ってことを念頭において観ることで、マリアンヌとエロイーズの2人の視線、動作ひとつひとつが、チクチクと心に刺さるはず。

そしてなにより、女性しか出てこないのがいいのよね。男性性こそが社会の中心だった時代、女性同士の共同生活は女性の心を解放する場だったことを描いているの。そこに過剰なエロスとタナトスは必要がないのよ。

だから、この作品に「性的描写が足りない」なんて言ってる人はアカン子。抑圧された女性の立場に立てば、この作品の描写は大正解。だからこそ、大ラスで「ふぁっ……⁉」となることうけあい。

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