新たな魅力が増えているから、すごく幸せなことだと思います
——2005年のTVシリーズより『ARIA』に参加されている広橋さんからお聞きします。これまでで一番の思い出は?
広橋「後輩3人で中華街のホテルに泊まった日、ちょうどアリスがプリマに昇格する話が雑誌に掲載されていて、えりーん(葉月絵理乃/水無灯里役)か千和ちゃん(斎藤千和/藍華・S・グランチェスタ役)が、“涼ちゃん、これ”とその雑誌を持って来てくれたんです。バスルームでそれを読んで号泣したことが、未だに忘れられません。その後、“歌のシーンがあるけど、誰が歌うんだろう?”と言ったことまで覚えてます(笑)。結局、私が歌うことになったのですが」
——キャスト陣の仲の良さが伺えますね。
広橋「そうなんです。収録が終わったあとも、そうやってキャストのみんなと遊びに行ったりしていたなぁと。温泉街に行った時は、とも子さん(川上とも子/アテナ・グローリィ役 ※当時)がカッコいい車でシャッとやってきたことが印象的です。とも子さんは本当にアテナさんみたいで、車に乗っている時はカッコいいんですけど、降りるとふにゃっとしていて。みんなで“とも子さんは、アテナさんまんまだね”と言っていたのも、忘れられません。アテナさんはとも子さん、英里さん(河井英里/歌唱担当)、そして今回は利奈ちゃんへと受け継がれて、どんどん新たな魅力が増えているから、すごく幸せなことだと思います」
ミラクルを起こしてくれる、他には代えられない特別な作品です
——2015年以来の『ARIA』シリーズの新作として、『ARIA The CREPUSCOLO』が3月5日より劇場上映されます。新作アニメーションが制作されると聞いた時の感想は?
広橋「『ARIA』で何かをするということは知っていたんです。“イベントなのかな? とりあえずはお客様に見せる何かなんだろうな”と。そういうふわっとした予想をしていたら、まさか新しくアニメーションを作り、しかも劇場で上映されるとは! 最初に聞いた時は、“本当にやるの!?”と変な声が出ました(笑)。『ARIA』はずっと私の中にあるものなので、久しぶりという意識はそんなにありませんが、また新しく動いている『ARIA』のキャラクターに会えるのは嬉しいです」
茅野「私は『ARIA』シリーズの一ファンとして、“また『ARIA』の世界に触れられるんだ!”という嬉しさがありました。まだ何も始まっていないのに、ワクワクが止まりませんでしたね。しかも私が演じるアーニャちゃんが所属する“オレンジぷらねっと”のお話と聞いたので、台本をいただくのを楽しみにしていました」
——茅野さんは『ARIA』のTVシリーズを観て声優を志したそうですが、改めて本作への想いを聞かせてください。
茅野「初めて出演できた6年前も飛び上がるほど嬉しかったんですけど、今回の上映情報が発表された2020年は、私自身も声優10周年という記念すべき年なんです。その年にこうしてまた『ARIA』のお仕事ができて、アーニャちゃんを演じられるとは夢にも思っていませんでした。目に見えないものを信じることはなかなか難しいのですが、『ARIA』はそういうミラクルを起こしてくれる、私の中で他には代えられない特別な作品です」
——そして、アーニャという存在は?
茅野「私がTVシリーズを観ていた頃は、アーニャちゃんはまだ生まれていない、もしくは生まれたてのキャラクターでした。『ARIA』はたくさんの先輩たちに囲まれている作品ですが、まだまだ未熟な私でもアーニャちゃんとなら寄り添って一緒に歩んでいける……、今の私にしっくり・ぴったりくる子だな、と感じています。大好きな天野こずえ先生が生み出したキャラクターを演じられるのは本当に特別なことなので、ずっと大事にしたいと思える存在です」
みんなに助けられて、アテナさんもいるんだな
——『ARIA』シリーズ初参加の佐藤さんは、どのような気持ちでアテナ役に臨んだのでしょうか。
佐藤「私は、とも子さん(川上とも子)が演じているアテナさんが登場してしゃべるので、引き継いでくれる人を探しているということでお声がけいただいたんです。お話自体はすごく嬉しかったのですが、やはり自信がなくて、“私ではなく、もっととも子さんらしさを持っている方のほうがよいのではないでしょうか”と一度お戻ししたのですね。すると佐藤(順一)総監督から直々に経緯の説明と、“僕は佐藤さんで大丈夫だと思うので、演じてもらえませんか”というお言葉をいただいたんです。監督がそうおっしゃってくれるのであれば、私の中にとも子さん演じるアテナさんと通じるものがあるのかもしれないと思って、“できる限り精一杯の気持ちで臨ませていただきます”とお返事して……、そこからアニメを一作品ずつじっくり追っていった結果、大変なことになっちゃったな、と思いました(笑)。嬉しい気持ちももちろんありますが、やはりプレッシャーのほうが大きかったです」
——では、どのような気持ちでアテナ役に臨んだのでしょうか。
佐藤「とも子さんと英里さんをそばに感じつつ、アフレコでアリスちゃんとアーニャちゃん(広橋・茅野)と掛け合いができるという状況だったので、とにかく私がやれることは、頑張るのみだなと思っていました。アフレコ当日の朝まで“あわわわわ”という感じだったんですけど(笑)、私がとも子さんと英里さんを大好きであるということと、アテナさん、そしてアリスちゃんとアーニャちゃんが大好きで、何よりも『ARIA』という作品が大好きであるという想いだけは、大事にして現場に持って行こうと。みんなが歩んできた作品に途中から合流することは、経験がないわけではありませんが、今回はその中でも一番大きいかなと思えて……」
——広橋さん、茅野さんと一緒にアフレコできたことは、大きなことだったのでは。
佐藤「そうですね、これがひとりぼっちだったらだいぶ……それでなくても迷子のアテナさんになっていたんですけど(笑)、おふたりと一緒にアフレコできてよかったな、と感じます。なんとなくですが、こういうのもアテナさんっぽいなと思えるようになってきました。みんなに助けられて、アテナさんもいるんだなと。私自身もみんなに助けてもらって、佐藤利奈として存在しているので、そんなところに思いを馳せました。これから徐々に『ARIA』ファミリーの中に溶け込んでいけたらいいな、と思っています」
本作を観ると、大事な人への気持ちを素直に行動に移したくなると思います
——現実ではまだなかなか旅に出られない状況ですが、本作を見るとまさにネオ・ヴェネツィアへ旅に出たような気持ちになれると思います。この作品からどんなものを感じ取ってもらいたいか、最後に広橋さんからお願いします。
広橋「『ARIA』の世界は、いつでも皆さんのことを待っています。作品と出会う時ってきっと、その人の人生に必要な時なんじゃないかと思うんですよね。本作を観ると、大事な人への気持ちを素直に行動に移したくなると思います。皆さんにとって一番いいタイミングで、『ARIA The CREPUSCOLO』に出会ってほしいです」
取材・文/篠崎美緒
(作品紹介)
ネオ・ヴェネツィアの街が、落ち葉の絨毯で彩られる秋。
オレンジぷらねっとで修業の日々を送るアーニャには、気がかりなことがあった。
お互いに多忙なこともあり、長い間会えていない先輩のアリスとアテナ。
そのせいで元気がないアテナに対し、アリスはなぜか会うのを避けている様子。
友達のアイとあずさにも協力してもらい、先輩たちが絶対に会える方法を探す中、アーニャは今の自分だからこそ見える“景色”があることに気づかされる……。
天野こずえが描いた未来形ヒーリングコミック『ARIA』。
2005年に『ARIA The ANIMATION』としてアニメ化され、2015年の『ARIA The AVVENIRE』まで、原作コミックの雰囲気そのままの優しい世界が数多くのファンを魅了してきた。
2020年、『ARIA The ANIMATION』放送から15年目を迎える年に、『ARIA』が帰ってくることが発表された。
完全新作アニメーション『ARIA The CREPUSCOLO』は、オレンジぷらねっとのメンバーを中心に描かれる物語。
『ARIA The CREPUSCOLO』
アリス・キャロル(CV:広橋 涼)
アテナ・グローリィ(CV:佐藤利奈)
アーニャ・ドストエフスカヤ(CV:茅野愛衣)
まぁ(CV:渡辺明乃)
水無灯里(CV:葉月絵理乃)
アリシア・フローレンス(CV:大原さやか)
愛野アイ(CV:水橋かおり)
アリア(CV:西村ちなみ)
藍華・S・グランチェスタ(CV:斎藤千和)
晃・E・フェラーリ(CV:皆川純子)
あずさ・B・マクラーレン(CV:中原麻衣)
アレッタ・パーチェ(CV:安野希世乃)
原作:天野こずえ「ARIA」(ブレイドコミックス/マッグガーデン刊)
総監督・脚本:佐藤順一
監督:名取孝浩
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東葉子
アニメーション制作:J.C.STAFF
配給:松竹ODS事業室
3月5日(金)公開
©2020 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー