あえて優しいタッチの寓話的なアニメで描き感動と評判の嵐
本作は、各国の映画祭で話題となり、レオナルド・ディカプリオも激賞したドキュメンタリー映画『happy - しあわせを探すあなたへ』(12)のプロデューサーを務めた清水ハン栄治の初監督作品。
在日コリアン4世であり、幼い頃から帰還事業で北朝鮮に渡航後に消息を絶った人たちの話を聞いていた監督が、実際に収容体験をもつ脱北者や元看守などにインタビューを行い10年もの歳月をかけて作り上げた。音楽監督はディズニー長編アニメ映画『ムーラン』(1998年)のマシュー・ワイルダーが担当。
強制収容所内の恐るべき実態を描きつつ、家族愛、仲間との絆・ユーモア、死にゆく者への慈しみの心情などが、実写ではなく、あえて優しいタッチの寓話的なアニメーションで描かれた本作は感動と評判を呼び、アニメ映画の世界最高峰を選ぶ権威あるアヌシー国際アニメーション映画祭「長編コントルシャン部門」にノミネート。
またワルシャワ国際映画祭・審査員特別賞、ナッシュビル映画祭・長編アニメ部門グランプリ、韓国のプチョン国際アニメーション映画祭長編部門の特別賞を受賞するなど海外の映画祭を席捲、昨年の第33回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス部門」では正式上映され話題となった。
「『トゥルーノース』というタイトルには2つの意味を込めました」
今回解禁となった新予告編は、「12年前、私は母国から亡命しました。これは私の家族の物語です」とカメラに向かって語りかける男性の言葉から始まる。
1995年北朝鮮・平壌、両親と幸せに暮らしていた主人公ヨハンは、突然父が政治犯の疑いで逮捕され、母と妹ミヒとともに悪名高き強制収容所に送還されてしまう。
「お母さん心配しないで。僕が母さんとミヒを守る」とヨハンは決意するが、飢えと極寒の中、「お前らは皆使い捨てなんだよ」と過酷な労働を強いられる。
そんな生存競争の中、ヨハンは次第に優しい心を失うが、家族を失ったことで本来の自分を取り戻していくー。
あわせて解禁されたポスタービジュアルには「それでも、生きていく。」というコピー、そして高い壁がそびえる場所に立ち、遥か遠くの空を自由に飛ぶ鳥を見つめる後ろ姿が配された。
清水ハン栄治監督は「『トゥルーノース』というタイトルには2つの意味を込めました。ひとつは英語の慣用句で“絶対的な羅針盤”の意。人間として進むべき方向や生きる真の目的を、究極の環境でも見失わない主人公たちの葛藤を描きたかった。ふたつめに“ニュースでは報道されない北朝鮮の現実”。それは今日でも12万人以上が収容されている政治犯強制収容所での人権蹂躙と、抑圧の中でも健気に生きる北朝鮮の人々のヒューマニティーを表現したかったのです」と本作に込めた思いを語る。
現在も続くこの事実が我々に問う”生きる“意味とは? 心揺さぶる衝撃の人間ドラマの誕生だ。
トゥルーノース
2021年6月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:東映ビデオ
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